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2002.12.25
 
 


職務発明対価判決文の注目点…

 2002年11月、東京地裁で職務発明の「相当の対価」に関する判決が下った。元社員が光ディスク装置の特許の対価を求めた訴訟である。この結果、被告側は、3500万円弱(年利5%換算額)を支払うことになる。訴訟費用は45%が原告負担である。

 この判決に対して、企業側は、高額すぎると主張している。 (http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/archive/200211/29/2.html)

 このため、妥当な対価論争が始まった。マスコミは大喜びだが、プロトタイプ化した意見が目立つ。当然、専門家以外はすぐに興味を失うことになる。判決も早晩忘れ去られるだろう。

 しかし、この判決速報は、一見の価値がある。(http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/c617a99bb925a29449256795007fb7d1/3bcefd47b8fcf5a249256c8000204046?OpenDocument)

 といっても、発明者の貢献度算定方法が記載されただけのシンプルな判決文である。
 法律関係者の議論だから、単純計算による決着結果をまとめたものにすぎない。社外からのライセンス収入を対象として、発明者と会社の分け前比率を決め、発明者が複数の場合は、寄与度按分したのである。
 この判決が確定すれば、研究者やエンジニアは、今後最低20%の取分が保証されることになる。
 話しのタネとしては、確かに面白い。
 しかし、対価の計算方法に新味がある訳ではないから、じっくり読むほどの価値はない。

 実は、一番興味深いのは、褒賞金額や対価計算方法ではなく、本件に絡むライセンス契約状況の方である。

 訴訟の過程で、ライセンス先や金額の詳細がすべて開示された。速報にも、個別の実施料が相手先企業毎に示されている。もちろん実名、実数字である。

 武器になる技術を、どのような条件でどの企業にライセンスしたかが、一般の目に始めて晒されたのである。
 お蔭で、当該企業のライセンシング方針が一目瞭然となった。
 実施料請求をしない企業があるなど、企業毎への対処が大きく違うマネジメントをしてきたことがわかる。標準化や技術普及に関しては、個別的かつ政治的な対処で進めてきたのだろう。

 リーダー企業や盟友がはっきりしていた時代なら、このようなマネジメントも奏効するが、これが今後も通用するとは思えない。
 ネットワーク時代に突入すれば、個別の最適化では、チャンスを失いかねない。標準化グループでのライセンス方法や、クロスの扱いが、普及度を左右しかねないからだ。従って、戦略的意志が見えるライセンシング方針の確立が不可欠なのである。


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