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2003.6.10
 
 


インターネット接続型デジタルTVの将来性…

 2003年5月、松下電器産業がリモコンボタンで専用ポータルを画面に呼び出せるインターネット接続型テレビを発売した。といっても、高額であり、年産1万台にすぎない。(http://matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn030417-1/jn030417-1.html)
 ようやくまともにインターネットに繋がるようになったが、閉鎖的な仕組みだから、TVポータルの道は遠いと言わざるをえまい。
 テレビこそ、インターネット取引の核と言われ続けてきたが、これでは、とても無理だ。

 4月には、シャープ、ソニー、東芝、日立製作所、松下電器産業が「デジタルテレビ情報化研究会」を設立したから、ようやくインターネット接続仕様問題が語られるようになった程度と見た方がよい。(http://www.sharp.co.jp/corporate/news/030327.html)
 もっとも、年末には地上波放送が始まるから、活用が急に広がるのではなかろうか、とこうした動きを評価する人もいるようだ。

 しかし、情報化のための仕様標準化を今から議論したところで、もう遅いのではないか。
 すでに、デジタルTV放送は始まっている。ところが、放送受信以外の機能はほとんど使われていない。こうなってから新製品を投入したり、技術を標準化したところで、流れは変わるまい。
 もともと、インターネットの共通言語HTMLを避けて、テレビ専用言語BMLを使うことに決定した時点で、こうなることはわかっていた。放送会社でもなければ、わざわざBMLを使う理由などない。当然、BMLの情報発信者は不足する。そうなれば、満足な情報が得られないから、使われなくなる。それでも、他業界の参入で業界が混乱するよりはまし、という考え方なのだ。
[わざわざ、HTMLとBMLが使えるブラウザまで準備せざるを得ない状態なのだ。](http://matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn011113-1/jn011113-1.html)

 インターネット標準に合わせないなら、デジタルTV放送は単なるテレビ放送で終わることになろう。本当にデジタルTVを活用したいなら、「デジタルテレビHTML化協議会」を作るべきである。

 現在のシステムを続ける限り、デジタルの意義などない。
 視聴者にとってのメリットは、美しい画面のアナログハイビジョンとなにもかわらないからだ。
 しかも、高価な細精度ディスプレーを避けるために、わざわざ標準画質(525i)に落とす技術開発を進めざるを得ない状況である。なかには、デジタル放送をわざわざアナログ変換して流すCATVもある。無駄なデジタル化と言わざるを得まい。

 要するに、現在のデジタルTV放送施策とは、車が滅多に走らない高価な高速道路を作るのと、たいして変わらない。違うのは、政府の力で旧道を閉鎖させ、無理矢理、高速道路を使わせる点である。
 産業界は、政府には、まだこのようなことができる力があると考えているようだが、頓挫は免れまい。CATVのデジタル化費用や、デジタルチューナー取替え費用の支払いに、全員が黙って応じるとはとうてい思えないからだ。

 日本のデジタル化は、政府がすべてを決める、社会主義国のやり方に近い。歴史の教訓では、このような国の産業は衰退する。日本のAV産業はこの道を選んだのである。


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