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2003.7.7 
 
 


ミドルウエア産業の変貌…

 モジュール化を意識的に行った始めての例は、1985年のIBMパソコン開発といえよう。これがIT産業を根本から変えることになった。サーバ・クライアント型の仕組みが一気に進み、「OS+ハード(CPU)」の主導の産業構造ができあがった。

 結局、コンピュータ産業構造は図に示すように下層のハードから、上層の運用まで、はっきりと分かれるようになった。お蔭で、階層毎に熾烈な競争が励起され、技術の進歩が加速した。

 ところが、どの階層内でも技術が成熟してきたため、統合/寡占化が進んできた。こうなると、必ず、新たな革新に向けた動きが発生する。そして、階層間の力関係が変わる。

 寡占化が激しいのは、ハード分野だ。ここではIntel一色に変わりつつある。これで、「特定OS+専用ハード(CPU)」主導体制が崩れることになる。寡占化でハードが一般化してしまえば、特定OSの意義がなくなるからだ。
 このため、インテル非対応のOSは、代替の脅威に曝され、特殊用途市場に追い込まれることになろう。同時に、この変化は、OSの影響力減退を招く。
 ということは、OSに替わって、ミドルウエアが力を発揮することになる。

 そうなると、ソフト産業はどう変わるのだろうか。

 ミドルウエアの典型はデータべースソフト(RDBMS) だ。ここでのトップ競争こそ、天王山の戦いと言えそうだ。現在のところ、実質的に、Oracle、IBM、Microsoftの3社の戦いだ。
 ここでの、各社の戦略が、今後のコンピュータ産業構造を決める可能性が高い。

 その一端を、アプリケーション分野での戦いで見ることができる。少し眺めてみよう。
 ここでは、OracleやMicrosoftといった垂直統合路線の企業と、アプリケーション階層専門企業の戦いが熾烈化している。
 例えば、企業の基幹業務を取り仕切るソフトERPで見ると、SAP、Oracle、PeopleSoftが主要ベンダーだ。Microsoftも「Microsoft Business Solutions」を投入して、それなりの地位を獲得している  CRMでは、Siebel/IBM、SAP、PeopleSoft、Oracleが主要ベンダーだ。
 SCMでは、この分野を切り拓いてきたi2 Technologies、Manugistics、Aribaといった企業だけでなく、SAP、Oracleも主要ベンダー化に成功している。
 様々なアプリケーション・セグメントを統合する必要性から、SAP、Oracle、PeopleSoftといった主要ベンダーが競争力を発揮しているといえる。先進的な応用が、特定セグメントでなされ、その技術がアプリケーション大手に吸収されるという構造ができあがっているといえる。
 しかし、注視すべきは、ミドルウエアとアプリケーションの統合路線が奏効するかである。
 もしも、ミドルウエアを握る企業が成功を収めるなら、RDBMS分野では、Oracle、IBM、Microsoftが「顔」になる。

 このシナリオを認めるつもりなら、特定分野の強力なミドルウエアを持つか、様々な分野の優れたミドルウエアを揃え尽くす戦略がベストと言えそうだ。ミドルウエアに合わせ、ベストなハード構成が要請される時代が来るのかもしれない。
 もちろん、他のシナリオもありえる。

 要するに、業界構造をどのように変えるか、という戦いが始まっているのだ。こうした動きを傍観している企業は、他社の戦略の物真似しかできない。そして、衰退を余儀なくされる。
 コンピュータ産業にとって、結節点が訪れているのである。


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