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2004.5.14 



技術で戦う企業の実像…

 雑談をしていて、あちこちで紹介されている、「技術で戦う」日本の優良企業についての話しになった。
 素晴らしい業績が続いているので、誰でもが注目している企業である。

 「エクセレントカンパニー」ブームを知る世代には、実際のところ、将来どうなるか気になるから、話しが弾んだ。
 ・・・同じことにならなければよいが、という気になった。

 というのは、この企業の技術基盤を作り上げた時代のトップマネジメントの発言を聞かせてもらったからだ。実は、その内容が辛辣だったのである。

 現在の隆盛は、昔つくられた技術基盤の上で収益拡大を図っているだけの経営に過ぎない、と看破したそうだ。
 しかも、自社独自に作り上げた技術基盤ではあるが、その基本コンセプトは、イノベーターが作り上げたものに過ぎない、と語ったという。実際、知的財産権で、イノベーターと競争していた訳ではない、と当時の実情を語ってくれたという。

 同じコンセプトで、特許に抵触しない技術を開発しただけの話しだというのだ。

 この程度なら、さしたる驚きではないが、話しはさらに続いたという。
 知的財産権で争った相手は、イノベーターではなく、余り知られていない日本の小企業だったと、指摘したのである。

 滅多に聞けない話である。
 インベスター・リレーションシップが重要な時代だから、マイナスになりかねない情報はほとんど流れない。
 それに、企業から離れた旧トップマネジメントの話しだから、どこまで本当か、確証はとりようがない。誰も引用する訳にはいかないのである。こうした話しは、藻屑のように消えていくことになる。

 もっとも、さまざまな企業の研究開発のリーダーと交流すると、このような話しにはこと欠かない。

 従って、通常なら、雑談として聞き流すのだが、今回だけは流石に気になった。
 ここのところ、新事業が登場していないからである。にもかかわらず、当該企業の現役は自信満々だから、ますます気にかかる。
 こんな調子で大丈夫か、とイライラするOBの気持ちもよくわかる。

 とはいえ、潤沢なキャッシュが生み出されているから、いずれ、新規分野の研究開発投資に大金を注ぎ込まざるを得なくなる。
 言うまでもないが、今度は、イノベーターのコンセプトを流用する訳にはいかない。自ら生み出したタネに賭けることになる。
 とのようなタネが登場するかで、本当に「技術で戦う」体制を築いてきたか、明かになる。


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