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2004.7.12 



300万円生活は可能か?…

 年金問題等、争点はあったが、第20回参議院選挙の結果は野党善戦といった程度で終わった。

 大多数の国民は、現状維持を望んでいるということだろう。

 森永卓郎氏の「年収300万円時代を生き抜く経済学」がヒットする社会である。
 金銭的な余裕がなくても、心豊かな生活はできる筈、とのメッセージがすんなりと受入れられるのだから、現状維持派が多いのは当然かもしれない。
想定経費(年額) 東京都港区
項目 計算方法 金額
控除後の
課税対象
\3,000,000
と仮定
所得税 対象x0.1
(330万円まで)
-減税20%
\240,000
特別区民税 対象x8%-\100,000
+
均等\3,000
\143,000
都民税 対象x3%-\70,000
+
均等\1,000
\21,000
医療保険
(国民保険)
住民税額x2.08
+
人頭額\30,200
(最大53万円)
\371,320
介護保険 住民税額x0.24
+
人頭額\10,800
(最大8万円)
\50,160
国民年金 月額\13,300 \159,600
水道料金 20mm30mm3
2ヶ月額\3,948
\23,688
電気料金 30A-200kWA
月額基本料\819
電力量料\3,339
\49,896
ガス料金 30mm3
月額基本\1,092
ガス量\3,457
\54,588
固定電話料金 月額回線\1,522
通話\1,000
\30,624
ADSLインターネット料金 Yahoo! BB
月額\3,282
\39,843
携帯電話料金 DoCoMoプラスL
月額\6,159
\73,908
新聞購読料金 月額\3,925 \47,100
NHK受信料金 衛星カラー契約
2ヶ月額\4,580
\27,480
生命保険 都民共済入院2型
月額\2,000
割戻33%
\16,080

 都会で、どの程度の生活になるのか、経費や控除後の課税対象額が300万円の場合で、ざっと現状を見てみよう。

 税金は約40万円。
 公的な保険/年金に支払う金額は総額で約58万円。
 水道、ガス、電気、新聞、テレビ等に支払う額が約36万円といったところだろうか。

 これに、住居費用に150万円、食費が50万円かかると考えると、合計で334万円になる。衣服代は入っていないが、一応、不可欠な出費額と考えてよいだろう。

 基礎控除(\380,000)、社会保険料控除(\581,080)、保険料控除(\16,080)があるから、収入から経費を引いた実所得は約400万円程度である。

 この差額から、様々な出費や、将来の蓄えを出すことになる。
 確かに生活はできるだろうが、「心豊か」な生活は難しいように思われる。

 従って、「心豊か」な状況にするためには、収入を増やすか、コストカットしかあるまい。
 どちらが現実的かは、自明である。

 ミクロで言えば、各人が懸命に努力して、収入を増やすしかあるまい。
 マクロで見れば、経費の単価を下げ、公的支払いを減らすのが一番の早道である。

 政策で意味があるのは、前者に関しては、高い賃金が支払える産業振興だし、後者に関しては、価格低下圧力をかけることである。
 特に、住居、食費、ユーティリティ価格を下げることが重要だと思われる。それぞれの産業にとっては市場収縮になるから、抵抗するのは間違いあるまい。しかし、産業構造を変えることで、マクロでの生産性は上がる筈だから、経営力があれば収益性は向上する筈だ。この変革なくしては、「心豊か」な庶民の生活などあり得ないと思う。
 特に、都会における基本経費を下げる施策が重要だろう。

 と言うのは、経費が下がらないと、消費が回復しない可能性があるからだ。

 仮想出費を見ればわかるが、すでに財産を保有している層は、今の状態でも、おそらく年支出300万円で謳歌できる。公的負担が重いから、収入を増やさず、小さな生活を楽しみ始める可能性が高い。本来は消費できる層が、消費を抑え、税金の支払いも減らそうと動くことになる。収入を望まなくなりかねない。
 その一方、収入300万円だけに頼る層の生活は苦しくなろう。余裕がないから、消費が抑えられる。収入を増やすための、投資もできないのだ。
 両者ともども、消費は上向かない。

 今のままでは、消費の拡大が期待できる層は、高額納税者しかなくなりかねない。


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