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2004.12.27 
 
 


アパレル産業の浮沈…

 繊維製品のGATTの割当枠制度がなくなると、米国国内の繊維産業が壊滅するのではないかという意見があるようだ。
 これに対する反論が、2004年11月18日のwashingtonpost.com のコラムに掲載された。(1)

 単純明快な主張である。

 米国市場には、すでに安価な製品は入ってきており、顧客は安価ということだけで購入する時代は終わっている、との現実を見るべきだ、という話である。

 小売にとって、売上を増やすためには、流行にあわせた品揃えが重要であり、安価というだけでは競争に勝てなくなっている。  実際、Wal-Mart は1週間毎に品揃え見直しを行っているという。

 このことは、時間がかかる遠距離ではなく、流行に迅速に対応できる近距離立地の生産拠点が優位に立つことを意味する。

 現実に、昨年の輸入額は、中国80億ドル弱だが、メキシコからは160億ドルを越えるという。

 このことは、米国と自由貿易協定を結ぶことで、近隣諸国は優位を保てることを意味する。
 従って、地域での合理的な開発・生産の仕組みを作り上げた産業は、生き残れるという訳だ。

 総論としてはわかるが、具体的にはどのような仕組みになるのか考えてみよう。

 ポイントは、普段着のファッション化への対応力と言えよう。要するに、欲しそうな商品を開発するだけでなく、欲しい商品が見つけやすい店舗を提供するなど、事業全体の構想力が問われることになる。

 換言すれば、知恵を生み出す力がある企業は伸びるというに過ぎない。

 例えば、「ユニクロ」(ファーストリテイリング)の2004年8月期決算は、売上3,399億円、経常利益641億円と好調である。(2)タイムリーに高品質な商品を提供する力があるから、顧客をつなぎとめておくことができるのだと思う。

 こうした成功を見て、「速くて、面白くて、安い」商品展開をすればよいと考える企業もあるが、真似しても、たいていは上手くいかない。売れ筋に合わせて、生産計画を急遽変更し、大量投入を図るのは当然に映るが、副作用を抑える方策がなければ、一過性の成功に終わりかねないからだ。
 特に問題になるのは、迅速対応商品開発、生産プロセス合理化だけに注力する姿勢である。対応力を重視すると訴求力が弱まりかねないのである。
 どうしても、商品仕様の特徴は希薄化してしまう。その結果、商品は個性を失い顧客が離れていく。
 タイムリーな商品提供とは、単なる速い対応ではないのだ。

 SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)がおしなべて好調なのは、個性を打ち出す知恵を持っているからといえよう。とはいえ、ファイブフォックス(「コムサイズム」)、良品計画(「無印良品」)、ワールド、や海外組み、と競争を仕掛ける企業は多く、常に先を行かないとどうなるかわからない状況である。

 一方、完全買取制の小売業を貫く、しまむらも堅調である。人口10万人当たり1店舗を郊外に開発し、ドミナント展開を図っている。顧客嗜好のトレンドを見抜ける、仕入れ力を磨くことで、業界随一の収益力を誇っていると言えそうだ。(3)

 自社製品(ブランド)を持たないジーンズメイトも、商品戦略を大切にしている。(4)「トレンド + クオリティ + プライス」の視点で競争力を高めようとしているのだ。

 こうしたバイヤーの目に応えられるメーカーは、小売企業と一緒になって伸びることができる訳だ。

 --- 参照 ---
(1) 「Apparel Apocalypse?」 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A58831-2004Nov17.html
(2) http://www.uniqlo.co.jp/news/release/n20041013095753.html
(3) http://www.shimamura.gr.jp/another/2004.8.gaiyou.pdf
(4) https://www.jeansmate.co.jp/ir/corporate02.html(3)


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