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2005.2.8
 
 


振り込め詐欺に見る危険な流れ…

 2004年の振り込め詐欺被害総額は284億円だという。(1)
 このなかには、事故示談金や債務等の「オレオレ詐欺」、誘拐偽装恐喝、架空請求詐欺/恐喝、融資保証金詐欺が含まれる。警察が認知したものだけだから、実際の被害額はさらに大きいと思われる。

 ここまで来ると、他人ごとではすまされない。
 騙されないように注意しよう、というレベルを越えているからだ。

 例えば、裁判所からの通知を、間違いと考えて、そのまま2週間放置していると自動的に「不利益」を被る。(2)
 誤りであると申告しなければ、自動的に裁定が下される仕組みを悪用しているのである。忙しい時に、郵便が到着して2週間内に、当該裁判所に出頭するなど、たまったものではない。

 矛盾した言葉になるが、どう見ても合法的な詐取である。

 こんな被害に合わないのは、たまたまの幸運と考えた方がよい時代に入ったのである。

 ・・・と考えさせられたのは、最近のテレビ報道番組を見ていると、裏社会の変貌がよくわかるからだ。

 我々は裏社会と呼ぶが、表社会とほとんどかわらない所まできている。

 「振込め詐欺」は大企業の事業運営と全く同じだ。報道を見ていると、その実態は想像がつく。
 試しに記載してみると、イメージがはっきりする。

 事業本部は10の事業部からなる。

 各事業部長は、100店舗の運営責任を負う。店舗の売上台帳をチェックし、営業利益をプールし、全体采配を振るい、事業の展開方向を指示する。毎月1回店長会議を主催し、生産性向上の議論とともに、売上目標を徹底し、情報交換を通じてリスク管理を行う。

 各店舗の店長は、ガイドラインの範囲内で自律的に動く。
 店長は、事務所を開設し、10名程度の従業員(元暴走族の少年が多いらしい)を雇用し、業務の仕方を教育する。見込み顧客名簿(名簿屋が紹介されるのだろう)を購入し、営業活動(電話セールスである)を始める。
 報酬は、固定と歩合からなり、店長の月給は50万円、店員は25万円である。成果主義であり、店舗売上ノルマは月1000万円。
 店長は、このノルマを店員に割り振る。未達成者には制裁が課せられるが、大幅にノルマを越えれば、旅行や宴会といったインセンティブが用意されている。
 従業員の組織への忠誠は重視されており、問題が生じて逮捕された際、組織に不利益を与えなければ(自供しない)生活は保障(当該期間に相当する金銭支払)される。

 収益確保上重要なのは、こうした事業部門のオペレーションを支える、コーポレート部門の活動の質である。

 なかでも、事業部門に対するサービスの質が問われる。そのため、この部門は独立採算制とし、強力な布陣を敷く。
 ・店舗開設グループは、店舗をマンション内に開設するための入居契約事務一切をとりしきる。
 ・口座提供グループは、銀行口座を開設し店長に売り渡す。1回限りの使用なので、常時数百口座確保する。
 ・現金回収グループは、店長から連絡を受け銀行口座から現金を引き出す。店舗から金額に応じた手数料を取る。
 ・その他諸々の要求に応えるグループは、携帯電話調達など細かな要求に応える。

 そして、一番重要なのが事業開発部門だ。
 顧客対象を定め、どのように売るかの仕組みを開発するのが、この組織のミッション。顧客名簿の入手方法、顧客へのアプローチ方法を考案し、販売マニュアルを作成する訳である。
 綿密な市場分析、顧客心理を読んだ高度なテレマーケティング手法、法律問題への対処、等々ができる有能なプロフェッショナルを集めているのかも知れない。

 この組織はねずみ講とは違う。
 永続的に事業が続くよう、周到に考えられた仕組みだからである。

 とはいえ、今のところは、こうした裏の組織は表と隔離されている。
 しかし、今のまま進めば、早晩、線引きは難しくなると思われる。
 すでに、表での合法性ギリギリの商売は珍しいものではないし、裏側も合法的「詐取」を始めているからだ。

 さらに問題なのは、表社会に裏社会を支援する人達が増えていることだ。

 金融機関は「偽造カード」に責任はないとの主張は典型例と言える。
  (金融機関以外の誰が、偽造をなくす動きを進めることができるのだろう。)
 ところが、金融分野のリーダーはこうした主張を腐敗とは感じないようだ。この先が思いやられる。

 --- 参照 ---
(1) http://www.npa.go.jp/sousa/souni2/hurikome16-12.pdf
(2) http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/gaiyou.pdf


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