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2007.1.16
 
 


超高速リニア輸出を諦めるべきでない…

 新幹線技術の台湾への移転について、素人なりの考えを書いてみた。
  → 「台灣高速鐵路開通を眺めて 」 (2007年1月15日)

 手短にいえば、新幹線は、日本では優れた仕組みといえるが、海外でも通用するとは限らないと言うこと。既存の鉄道輸送サービスとの親和性が必要だと、新幹線技術の導入は厄介だからである。
 輸出し易いのは、鉄道全体のマネジメントに直接関係しない、列車や個別システムだと思われる。

 輸出向きなのは、超高速リニアや都市型鉄道の方だ。
 こちらは、運転手に頼らない仕組である。そのため、既存の鉄道輸送サービスの労働事情や社会慣行からの影響は小さい。日本発の技術でも、移転の障害は少ないと思われる。
 従って、例えば、超高速リニアなら、大型補助金を含めた政治力を駆して、中国や米国の大陸鉄道用として、輸出振興を図ってもよさそうなものだ。
 ところが、どういう訳か、その方向には進まない。超高速リニア鉄道の輸出には力が入らないようだ。

 驚いたことに、輸出ではなく、国内を狙うのである。第二新幹線はいずれ必要となるから、超高速リニア建設を図れとの大合唱。(1)
 「今更、鉄道の時代ではなかろう」との声に抗して新幹線を始めて成功したから、超高速リニアで柳の下に泥鰌とでも考えているのだろうか。

 超高速リニアと言っても、東京大阪間の所要時間はせいぜいが1時間半だ。この程度であっても、超高額運賃になる。運賃を下げるには、税金投入か、既存路線の運賃値上げしかないだろう。
 これで、本来なら1万円程度の運賃でも十分採算がとれる、航空シャトル便と勝負しようというのである。
 実は、現時点でも、新幹線代金は高額であると言わざるを得ない。それでも、新幹線が乗客で満杯になっているのは、飛行場のアクセスが悪い上、高コストの航空会社が市場をコントロールして運賃をを下げるつもりが無いからに過ぎない。

 要するに、リニア新幹線建設期成派とは、これから先も、このような不合理な社会を続けさせたい一大政治勢力と言うこと。

 そもそも、上海リニア(2)の採算状況を考えればわかろう。“国威掲揚”だけで、乗客が集まることなどない。
 そして、時速100Km程度の愛知万博リニア(常伝導磁石)での経験が示すように、大量輸送とは簡単な話ではない。イベントが終われば、リニアだからといって、乗客が集まるものでもない。(3)それに、超高速用車体に、従来型並の定員など無理である。さらに、列車間隔を狭めるなど、とんでもない話だろう。
 日本のように、人口稠密で、一度に多くの人を運ぶ必要がある路線への導入意義は極めて薄いということだ。

 しかも、今や、新幹線でも時速360Kmの商業運転ができる。(4)かたや、速いといっても時速500Kmにすぎない。東京大阪間程度の距離では、時間短縮の魅力はたいしたものではなかろう。超高額費用で、少々時間を稼ぐより、在来型新幹線車内で、オフィスの仕事の続きができる空間を提供してもらう方が、ビジネスマンには余程有難い。コストパフォーマンスが悪いサービスを選ぶ人がいるとは思えない。

 こんなことを、わざわざ言わなくても、素人でも、日本国内でのリニアの無理さ加減は自明。
 東京や大阪の地下には様々な構造物が張り巡らされている。そんな大混雑都市に、リニア線をどう引き込むつもりなのか。常識で考えれば、とんでもない深い地下に線路を通すしかあるまい。
 しかも、日本は山国。そこらじゅうトンネルだらけの路線を建設するしかない。投資10兆円と喧伝されているらしいが、そんな額で済む訳がなかろう。それでも、リニアを引きたがるのは、国家的な“威信”ではない。政治力を駆使して、公共工事にお金を落とさせる勢力が主流派というだけのこと。

 もっとも、同じく超高速リニアに賭けているドイツが合理的に動いているかといえば、そうも思えない。電機会社の不調な鉄道部門や鉄鋼産業の梃入れには、これしかないということだろう。古今東西、それが政治である。

 なんとしても大陸で走らせようとの気概がないなら、超高速リニア鉄道開発は無駄だと思うが。

 --- 参照 ---
(1) http://www.linear-chuo-exp-cpf.gr.jp/gaiyo/index.html
(2) http://www.smtdc.com/
(3) http://www.linimo.jp/
(4) http://www.jreast.co.jp/press/2004_2/20050306.pdf


 <列車のイラスト>
 「鉄道バナー素材館」 http://hkuma.com/tbf/
 ・JR東海MLX01のイラスト by SnowWing
 ・愛知高速交通のイラスト by Izu


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