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2007.4.5
 
 


JR発足20周年 何が変わったか…

 JR各社が発足20周年を迎えた。と言っても、「国鉄」という用語を知らない世代が働いている時代だから、たいした意味もないかも知れぬ。
 もっとも、完全民営化が実現したのは、JR会社法改正法が成立した2001年のこと。それからは、まだ5年程度だ。

 JR東日本は東京駅丸の内北口ドームで記念セレモニーを開催した。(1)

 一方、尼崎脱線事故を起こしたJR西日本はセレモニーは見送ったそうだ。本州以外(北海道, 四国, 九州)と貨物の4社も、お祝いしたいところだろうが、上場にこぎつけられない状態では、そんな気分にはなれまい。
 首都圏路線と一等地を所有するJR東日本と、東海道新幹線のJR東海以外は、もともと収益基盤が弱体だから、予想されていたことだが。

 JR九州にしても、今後どうするのか、難しい意思決定を迫られている。関連事業の利益で鉄道事業の損失を埋める状態(2)を続けるなら、民営化の意味などなかろう。乗客需要が増える見込みがない赤字鉄道事業なら撤退するしかない。
 そもそも、運賃値上げと補助金で息をつなぎ、赤字垂れ流しを続ける「国鉄」型運営を止めるための民営化だ。これを元に戻そうとする動きに抗して頑張って欲しいと思う。

 それにしても、民営化嫌いが多いのには驚かされる。民営化したから事故がおきると主張する人までいるのだ。民営鉄道は昔から危険だと言うつもりなのだろうか。

 ともあれ、顧客第一、安全確保、チャレンジに、今後も本気で取り組んでもらいたいものだ。(3)

 少なくとも、こうした方針を打ち出した結果、目に見える変化がでてきたのは間違いない。
 首都圏の大きな駅では、掃除が行き届くようになり、清潔感がでてきた。ニューヨーク地下鉄の経験が示すとおり、公共の場所の清潔感向上は治安の良さにも繋がるので、極めて重要である。入るのもためらわれるようなトイレを放置することもなくなり、随分改善された。
 それに付随して、駅周辺に活気が出てきたことも特筆ものだ。駅に商売っ気が漲るようになったお蔭で、駅周辺も繁栄するようになった。有難いことである。なかには、ネオレアリズモ映画「Stazione Termini」のローマ・テルミニ駅のシーンを上野駅にダブらせて、古いままで利用して欲しい人達もいたらしいが、薄暗くて汚ならしい状態で放置する方針だけは御免蒙りたい。そんな流れは、周辺の商売低迷と治安悪化を招くだけである。

 ただ、これらは目立つが、あくまでも表層的なこと。
 なんと言っても、首都圏で重要なのは、乗り易さというか、便利さである。この観点では、JR東日本と東京メトロ(政府と都が株主)がリードしてきたと思う。

 ただ、それが通用しないJR東日本の駅も少なくない。その理由は外部からはよくわからぬが。
 一方、上手くいっていそうな駅には特徴がある。若い女性が働いていることが多いのだ。仕事内容を考えると、おそらく、“若い”とか、“女性”の特質を生かしているというより、意欲的な人が働いているということではないか。

 そう思うのは、掲示の仕方が違うからである。
 切符売り場にしても、今迄は、ほとんどの場合、宣伝用の規定のポスターや配布用チラシ類が貼られているだけ。たまに、企画旅行の案内が模造紙に書いてある程度。およそそっけないものだった。
 これが、突然、変わった。切符売り場でも、お徳ポイントとか、どのように便利になったか、わかり易い表現の掲示になってきたのである。パステル調の色文字や、イラストが加わったりして、いかにも素人臭いが、目をひくから結構読む人は多いと思う。
 客商売とは、本来こういうものだろう。顧客に是非とも伝えたいことがあるなら、それを楽しげに、わかり易く表現すべきである。本気でやろうと思うなら、決して難しいことではない。

 駅の案内にしても、随分改善された。

 動線を考えた案内表示がしっかりできていれば、後から余計な掲示などいらないのだが、そこまで頭が回らないのか、部署が違うから空回りするのか、鉄道の表示はいい加減なものが多い。そのため、慣れない駅では、どうしてもまごつく。それをなんとかしようと苦闘する様子が、後からつけた掲示から垣間見ることができる。

 以前なら、文句がでるから、案内を掲示しましたといわんばかりのものが多かった。これが、最近は、適切な場所に、わかり易い表現で掲示するようになってきた。一瞥して読める文章なので、立ち止まらなくても直ぐに理解できる。実に有難い。

 ここまで、20年かかったということだ。
 オット、これは、あくまでも、上手くいっている駅での話。

 時刻表や、路線図がどこにあるのかさっぱりわからないため、ホームでうろうろさせられる駅もあるし、整理整頓と全く無縁に見える駅もある。
 格差は広がる一方なのかも知れぬ。

 --- 参照 ---
(1) http://www.jreast.co.jp/press/2006_2/20070304.pdf
(2) http://www.jrkyushu.co.jp/profile/kessan_h17.pdf
(3) http://www.jreast.co.jp/investor/nf2008/pdf/01.pdf


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