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2008.2.27
 
 


本気でパンデミック阻止に動かないと…

 熱帯蚊が媒介するウイルス病、デング熱(登革熱)の名称は結構知られているようだ。ワクチンや治療薬が無いということより、出血性デング熱の全身から血液が流れだす恐ろしい疾病イメージが伝わっているからのようだ。免疫ができた後、異種ウイルスに感染すると出血性になるようだから、厄介な病気である。
 日本の都市部に生息する蚊にも媒介能力があるそうで、一度入ってしまうとデング熱蔓延の危険性はありそうだが、杞憂とされているのだろうか。(1)
 そう感じるのは、ニュースに余り登場しないから。2007年も、台南では大流行したのだが。(2)

 一方、始終報道されている割りには、それほど恐れられていない感じを受けるのが、鳥インフルエンザ。こちらは、今のところヒト伝染病ではないが、そうなるのは時間の問題だ。ただ、デング熱ほどの恐怖感は生まれていないようだ。出血性デング熱に勝るとも劣らない強烈な疾病だが、現行インフルエンザと同類と見なされているからなのだろうか。
 緊張感不足は否めない。

 なにせ、インドネシアにおける鳥インフルエンザの死者数は3桁(3)に達しているのだ。しかも、都市部で発生している。素人からすれば、ヒト-ヒト感染の段階に入りある兆候に映るのだが。
 ともかく、発展途上国での防疫は失敗したのである。補償金援助をしなければ、先進国スタイルの屠殺は鶏移送増加を意味することなどわかりきったことなのに、支援しなければ結果はわかりきったこと。(もっとも、ベトナムのように、移送を阻止して大規模屠殺に成功した例もあるが。)

 中国に関しては、信頼できる情報が少ないからなんとも言えないが、鳥インフルエンザは常時発生する状況に至ったと見てよいのではなかろうか。(4)
 中国の場合、家禽類の数は余りに多く、本気で鶏処分をしようとすれば、10億羽レベルになりかねない。こんなことは、現実性ゼロ。鶏ワクチン接種で抑える筈である。つまり、ウイルスは中国に広範囲に潜伏していくということ。ヒト感染の大流行発生が一番生まれやすい環境を作っているということでもある。
 そして、ついに南京でヒト-ヒト感染が発生した。(5)

 ベトナム、タイ、インドネシアでも、濃厚接触によるヒト-ヒト感染はすでに発生しており、同様なものと思うが、衛生部はそれを否定した。 (6)ヒト流感が発生する兆候無しとしたのである。そんなことより、家禽類の感染予防に力を入れたいのである。
 まあ、中国政府にしてみれば、現実化していない上、何をすべきかはっきりしていないヒト感染性鳥インフルエンザ問題に係わるより、他の重篤な疾病抑制に力を入れたいという気分であろう。なにせ、農村部は、トイレも満足になく、人糞肥料直接散布で、伝染病防御どころではないのが実態なのだから。(7)

 こまったものである。
 しかも、中国政府がこの情報を公開したのは、発生から1ヶ月後たってから。こんな動きでは、なんの意味もない。

 「パンデミック阻止のための防衛線構想」(8)によれば、人での発生事例の監視から2週間後には、国境検疫強化・封鎖が必要となる。
 その1ヶ月後には国内での危機管理システムが稼動し始め、さらに1ヶ月後になると膨大な死者が発生し、地域内での抑制に全力投球体制をとらざるを得なくなる。
 要するに、僅か、2ヶ月半で蔓延が始まるのだ。
 つまり、中国政府やWHOの発表を待っていたら、とても間に合わないのである。

 インテリジェント体制をつくらないと、ほとんど無防備ということである。
 ところが、残念ながら、日本で、世界の情報を徹底的に集めようと動いているのは、私的に頑張る人。しかも、助力する輪もさっぱり広がらない。
 どうにかならないものか。
→ 「鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集」 [Since Jan of 2005]
“海外情報を得ずに、国内情報だけで、対策、その問題点等を論議するマスコミや医師、保健行政関係者等が増えています。
プレパンデミックワクチンの効果、ワクチン製法の進化等の情報を得ずして、過去の知識だけで論議しても、いたずらに扇ぎたてる結果か、または過小評価に終わる可能性があります。可能な限り根拠に基づいた発想が必要と思います。”

 --- 参照 ---
(1) http://www.forth.go.jp/mhlw/animal/page_b/kagaku/kobayasi.html
(2) 台湾南部でのデング熱の流行について 交流協会高雄事務所 [2007年10月16日]
  http://www.koryu.or.jp/kaohsiung/ez3_contents.nsf/New/21EA678245B34508492573760008D640?OpenDocument
  「台湾地区本土登熱病例流行曲線」台湾衛生署疾病管制局 [2007年12月24日]
  http://www.cdc.gov.tw/file/39441_4243981481.ppt
(3) “Cumulative Number of Confirmed Human Cases of Avian Influenza A/(H5N1) Reported to WHO” [2008.2.15]
  http://www.who.int/csr/disease/avian_influenza/country/cases_table_2008_02_15/en/index.html
(4) 「中国における鳥インフルエンザの発生状況 〜鳥にはむやみに近寄らないで下さい!〜」 在中国日本国大使館 [2008.2.13]
  http://www.cn.emb-japan.go.jp/consular_j/birdflu_j.htm
(5) 「中国:鳥インフルエンザのヒト−ヒト感染疑い例について」 外務省渡航情報(スポット) [2008.1.11]
  http://www.anzen.mofa.go.jp/info/spot_top5.asp?id=009&num=2
  「江□□例人禽流感病例不是人□人」 南京晨報 [2007.12.11]
  http://www.xhby.net/xhby/content/2007-12/11/content_1584038.htm
(6) 江蘇省の鳥インフルエンザ、人から人への感染を否定
  http://www.people.ne.jp/a/aeb3979c7e974f968c2b3ec89d02cb36
(7) 衛生部毛群安「免疫規制実施」記者会見 [2008年2月18日]
  http://www.china.com.cn/zhibo/2008-02/18/content_10048366.htm
(8) 2008年1月22日 日本記者クラブ講演趣旨[外岡立人 小樽保健所所長]
  http://homepage3.nifty.com/sank/jyouhou/BIRDFLU/boueisenkousou.html
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