■■■■■ 2010.11.19 ■■■■■

 尖閣問題雑感

尖閣問題で感じたこと。・・・

■問題の全体像から離れがちの議論が多すぎるのでは。■
ビデオ流失問題の議論ばかりで、つまらん。もちろん、面白話もあるが、・・・
   阿比留瑠比: “共産党・志位委員長が産経「正論路線」に近づいてきた!?” [2010/11/12]

  【問題の焦点は、ビデオ流出問題じゃない。】・・・そんなの当たり前。
本筋とはずれるが、流出はもともとたいした話ではない。外に漏れたのは、検察用ではなく、研修所で用いる「漁船拿捕ケーススタディ用」資料にすぎないからだ。この場合、漏洩は内規問題にすぎない。
  ・組織的に秘密資料とされていない資料である。(誰でも見れる。)
  ・政権幹部が所内秘となるような指示をだしていない。(部外に資料を送付したのである。)
もちろん、政権として、無理に法的問題にすることは可能である。だが、それは、政府組織として瓦解していることを示すことになる。
  ・「映像は刑事訴訟法上の証拠物にあたる」としている。
  ・それが、外部に漏れたなら、関係者が仕組んだことになる。(捜査は振り出しに戻る。)

  【政府の責任でもっと早い段階で公表すべきだった。】・・・この意見が多いがピント外れ。
編集したビデオは無意味。それはなんらかの意図を含んでいる宣伝用資料にすぎない。“インターネットでアップされたもの見ましたけれども、見ての私たちの判断”では、という態度ではこまる。前後の脈絡なき映像などゴミ。
重要なのは、領海侵犯を認定して退去勧告してから拿捕まで、どの位の時間がかかり、どのような状態だったかである。そして、どうやって当該船の乗組員を取り押さえたか。
意図的なのか、何を狙った挑発なのかは、こうした全体像から判断すべきもの。それについては、未だに、何もわかっていない。憶測が飛び交うだけ。

 一体、菅政権は何を隠そうとしたのだろうか。流出ビデオの映像が、胡政権を動揺させるようなものとは思えないし。

■米国はこの手の事件を早くから予想していたと思われる。流石。■
・菅首相の冗談の下劣さに、仰天したからでは。
   “首相が自衛隊の指揮官であるのを知った”と総理大臣が発言したのだ。 (2010.8.21)
・これを見た中国なら、対応不能政権を試しにかかると予想した筈。(軍事政権とはそういうもの。)
・尖閣での挑発発生時のシナリオを準備したと思われる。
・すでに、中国との交渉姿勢転換を開始しており検討は一気に進んだろう。
   信頼感喪失の発端はCOP15だが、齟齬は続く。 (2010.8.9)
・鳩山政権での教訓をもとに、日本政府はバラバラで対応不能と見ていたようだ。
・従って、早い段階で「尖閣は日米安全保障条約適応地域」と発表して日本に梃入れ。
・おそらく、中国首脳に対して沈静化の働きかけをしたに違いない。
・クリントン長官の指し手は的確。中国外相は孤立化させられた。

■菅内閣は、外務省の機能を全く無視して動き続けたように見える。■
・尖閣は日中相互に触れぬ問題という“ケ小平遺訓”の意味を首相はわかっていなかった。
  “国内法に基づいて粛々と処理”とは、暗黙の了解を破ることになる。
  自民党型対処なら、危害を加えた件で逮捕しても、不埒な輩即刻強制送還で幕だろう。
  胡政権は弱体化しており、反日運動抑制困難とのアドバイスもなかったようだ。
・日本政府の一大政策転換を意味することを、首相は理解していなかったようである。
  なにがおきたのか全くわからなかったようである。
  中国の強硬姿勢に対するアタフタぶりは世界で有名になった。
  駐中大使を深夜“突然呼びつけ”と発表し、意図的に反中国世論を煽ったのも不可思議。
・外相が“政治主導”で、強引に路線転換を推進した可能性が高い。
  米国から「尖閣は日米安全保障条約適応地域」との言質獲得狙い。
  米国は即座に外相の姿勢を読みとったが、首相にはその認識がなかった。
  官房長官の行動は、結果論的に読めば、外相に呼応した世論の嫌中誘導そのもの。
・“政治主導”は人気取りの掛け声だけ。なんの準備もしていなかった。
  すべてが泥縄式。ただいま、ガバナンスの初歩からのOJT真っ最中ということ。

■首相の外交・安全保障に関する判断能力が低すぎる。常識さえ無さそう。■
・普天間問題の教訓はゼロ。
  そもそも、副総理というのに発言しなかった狡猾政治屋が首相になったのである。
・当然考えられる中国の反応を全く予想できなかったようである。
  ここまで世界情勢に無知な首相も珍しい。
・領土問題についてなんらの覚悟も無いことを示す動きをしてしまった。
  お蔭で、ロシアも動いた訳である。
・しかるに、今もって、中国政府の懸念さえ理解していないようだ。
  リーダーシップが全く発揮できない首相と見られている。
  国民の考え方を中国に説明する気も無いようだ。(偏った見方を助長させている。)
    人民網[2010.11.8]---少壮政治家は軽率で危ういというのである。
・短時間の日中首脳“会合”でさえメモ棒読み状態。
  このような映像をわざわざ流させる頓珍漢ぶりには唖然。
  中国政府は菅政権短命と見てパイプ作りを止めることになろう。
  ビデオが世界に配信されてしまったから、これから先、相手にされなくなる。
  無能な政権と見なされると、大国から捨石にされかねず、実に危うい。

■安全保障問題が発生すれば、民主党政権では手に負えないから、退場しかなかろう。■
・時事通信社の2010年11月調査で、内閣不支持率がついに5割を超えた。
  どう考えても尖閣問題だけの影響。(2割もの支持者が存在していることが恐ろしい。)
・民主党はもともと思想的には寄り合い所帯。安全保障問題はアキレス腱。
  無定見の政治屋であることを知りながら、首相に担ぎ上げたのだからどうにもならない。
・政党支持率はずっと民20% v.s.自15%だったが、4ポイント減少し逆転。 (2010.10.26)
  外交・安保の話だから、支持が戻ることはなさそう。
・さらに、法相のトンデモ発言。尖閣事件型の情報管理ができることを誇示したようなもの。
  驚いたことに、首相はこれを肯定。国家主義的独裁政権を目指すとの宣言と同義。
  日本の市民運動はこの手のリーダーを支持するのだから恐ろしい話だ。
  問責決議案投票で、独裁政治派の数がどの程度か明らかにして欲しいもの。

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