■■■■■ 2010.12.26 ■■■■■

 日本の黄昏化が進展した一年だった。

 今年も残すところあと数日。
 この年末、予算編成の話そっちのけで、政局話が盛り上がった。日本の新聞はこの類の報道で食べているようなものだから、この話題はさぞかし有り難かったろう。
 しかし、手詰まりの菅首相が仕掛けた党内闘争話が連日報道され、辟易した人も少なくなかったのでは。

 夢がかなって首相の座を仕留めたから、あとは一日でも長く留まるだけが生き甲斐の政治屋と、もともと首相の座に興味が薄そうな、田中角栄直弟子のステーツマンの間のゴタゴタを懇切丁寧に解説してもらったところで、なんの意味も無かろう。もっとも、三面記事には向いているかも知れぬが。

 それにしても、溺れた犬の末路は哀れ。

 公明党代表や、一介の民主党員でしかない小沢元代表が、胡錦濤主席とサシで自由に長時間歓談していることを見せつけられてしまい、首相の権威どころでなくなってしまったからだ。
 なにせ、一国の宰相というのに、同席写真撮影の了解をどうにかこうにかもらって、ただただメモを棒読みするしかできなかったのだから。こんな無様な姿をビデオで流せば、海外から、まともな交渉相手と見なされなくなってしまう。
 今もって、そのことに全く気付いていないようだから、こまったもの。このままいけば、嘲笑の対象にされるだけ。

 国内での動きも圧巻。
 衆議院で3分の2を実現しようということで、連立工作するのは当然だが、その無定見さには大笑い。「結党趣旨」が「打倒民主党」のミニ保守政党との連立を図るのだから。
 無理矢理成立させてきたつまらぬ法案ではことごとく対立していた勢力に協力を要請するのだから、何をバーター条件にしたのか知らぬが、馬鹿げた話だ。
 その上、保守勢力とは水と油のミニ社会主義政党に再度連立参加を呼びかけるのだからたいしたもの。
 ついにこの程度のことしかできなくなってしまったということでもある。発展途上国での利権争奪の権力闘争とたいした違いはない。扶養控除撤廃を取りやめたように、頃合を見計らってTPPも知らん顔だろう。ともかく場当たり的な対応。実現したいことなど何も持ち合わせず、ただただ一日でも長く総理の座にしがみつきたいだけ。そのなにが楽しいのか、さっぱり理解できぬが、政治的動物とはそういうものかも。
 こうした政治屋の動きを黙って眺めているだけの民主党の議員とは、一体、どういう人達なのだろうか。有象無象の集団としか形容のしようがない。

 そうまでして予算関連法案を通す位なら、衆議院を解散し、暫定予算で経済混乱状態突入の方がまし。選挙など迷惑千万ではあるが、どの道、遠からず経済大混乱は避けられないから、その予行演習と考えればよかろう。
 ともかく、世界情勢に疎く、安全保障感覚ゼロの宰相を一刻も早く変えてもらわねばこまる。最高指揮官としての自覚なき人物を首相に担ぐなど非常識極まる。このままでは戦乱に巻き込まれかねず、危険なことこの上ない。
  「ただただ首相交代を願うのみ」(2010.8.21)

 それにしても、これほど愚劣な内閣を未だに21%もの人が支持率しているのには唖然とさせられる。(時事世論調査12月)こうした政治を望んでいる人がこれほど大勢いるのだ。当座、楽して食べていくにはこの内閣が最高という人達ということか。確かに、そんな人達には無定見な首相はお似合い。
 この21%に対抗する勢力が、自民党+公明党だが、これまた合算政党支持率はずっと2割前後。こちらも、当座、楽して食べていくにはこの勢力の政権をという人達が支持者ということか。

 この状況を考えると、「政権選択が間違いだったことがはっきりした。」との指摘は間違いもはなはだしい。日本の政治はバラマキだけで動いていることをはっきりさせてくれたという点で、政権交代は間違いどころか、大正解である。
 そういえば、“大主筆”と呼ばれる胡散臭い仕掛け人が「大連立」を呼びかけ、えらく評判が悪いらしが、どちらの勢力も「大きな政府派」だから、おかしな主張とはいえまい。両者あわせた4割の既得権益層が今まで通り食べていけるように、協力してバラマキを続行せよというだけの話。確かに、民意反映の最善策。それに、新聞販売事業者にとっても最良だろうし。
 当たり前だが、これこそ過去の資産食い潰しの、正真正銘“日本黄昏化”路線。しかし、バラマキ先が異なるだけの二大政党政治も本質的にはなんら変わりはなかろう。

 要するに、黄昏化を止める手立てはないということ。
 なにせ、「大きな政府」の支持率は4割に達しているからだ。残りは6割もあるといえなくもないが、その3分の1は“どうでもなれ”層だろう。しかも、数%でとはいえ、独裁政治愛好の社会主義のミニ政党まで含まれているのだ。この数字を考えれば、反「大きな政府」派がいくら頑張ろうが、流れを変えることはできまい。
 それを知ってか知らずか、「日本にはまだまだ力があります。All Japanで頑張りましょう。復活を信じています。」と語る人も少なくない。その主張は、「大きな政府」反対に映ることもあるが、“All Japan”と語る限り、ありえない。「大きな政府」の下で、批判で儲けるコツを見つたということだろう。

 と言うことで、2010年を総括すると、「黄昏化加速の年」となろううか。菅首相はその点では大いに貢献してくれたし、その内閣を支持しているマスコミは最大の功労者であり、表彰モノ。
 この調子で進めば、既得権益層に困窮層が生まれてこよう。そうなれば、内部抗争必至だから、ようやく大転換が始まる。・・・と考えたいところだが、この国の場合、それは希望的観測でしかない。
 “既得権益層に担がれた信頼感ゼロの無定見な宰相” + “経済沈滞からくる閉塞感蔓延” + “国際情勢音痴の素人外交(自分の実力もわからず大国に敵対・シナリオなき軍事同盟強化)”・・・歴史を鑑みると、そんな三拍子揃った時代があった。現状とまさに瓜二つ。悲惨な結末が予想されるが、マスコミはすでにその道を選んだようである。

(C) 2010 RandDManagement.com    HOME  INDEX