■■■■■ 2011.2.9 ■■■■■

 名古屋市の選挙結果は特殊とは思えない。

 桜井充副財務相は2月3日の会見で、民主党の衆院選マニフェストで掲げた最低保障年金制度の創設に必要な額が試算されていないことについて、「アバウトな数字ですらなかったことに驚いている。マニフェストを作った人たちにきちんと説明してもらいたい」と発言したという。
 こんなことを吐露するようでは、もう政権の態をなしていないということ。

 小生は、この一言が、名古屋市長選挙に駄目押し的に効いたのではないかと感じた。
 政権内部から、マニフェストとは嘘の塊であり、政権奪取したらその時に都合のよい政策を打ち出せばよいと考えている政治屋集団であることを正直に語ってしまったとも言えるからである。

 ともかく名古屋選挙はスローガンというか戦った組織名が凄い。「減税日本」である。ポピュリズムというなら、これ以上の直裁的な表現はなさそう。現状維持派には不快きわまる名称だと思われるが。
 しかも、挑発的な言葉が多いから、たまらなかったのではなかろうか。「マニフェストはまもらにゃあかん」とか、「議会は市民をなめている」との言葉は突き刺さったに違いない。要するに、議員になれば、約束は反故にし、お手盛りと支持層へのバラ撒きに頑張るだけ。そんな政治屋集団に権力を渡すなというメッセージを発し続けたということ。

 これは、消費税による税収増大を図り始めた民主党への強烈な一打となっているのは明らか。
 自民党以上に、「税金を払う方が苦しく、税金を食べる方が楽をする政治」を追求していると言い放ったに等しいからだ。既得権益層へのバラ撒き政治を続けるために、両党揃って大増税路線につき進むつもりだから、それを阻止しようという主張に近い。
 これで大衆受けしなかったらどうかしている。ただ、その支持のうねりは、減税で恩恵を受けることへの期待感からではなさそうである。既得権益層優遇施策のため、なにも変化が生まれず、結果として生活が悪化しつつあるのではとの直感で一票を投じたということでは。「減税」施策提唱者なら、現状維持施策と真っ向から対立するから、まかせてみるしかなかろうということ。
 要するに、本当の「政権交代」をさせて見たいというのが一般の願いなのではなかろうか。上手な選挙戦術に、民主党がしてやられたという訳ではなさそうである。

 そんな流れが生まれてしまえば、たとえ、全国一強固な地盤の地区だろうが、民主党が勝てる筈がなかろう。民主党のマニフェストなど嘘八百でしかないとか、今まで自民党しか議論してこなかった内容の施策の実現に突然注力し始めるという裏切り行為を平然と行う政治屋集団である言われても、事実なのだから、反論のしようがない。しかも、民主党議員達が党首の方針に諾々として従うのだから、「民主党公認」とは信頼できない政治屋ということを意味するようになってしまった訳である。
 従って、名古屋市長選挙での民主党候補の敗北は、世論調査する必要もないくらいの当然の結末。民主党候補に一票を投じる人が未だ多数存在していることの方が驚異的と言えよう。政権を奪取すると、短期間で既得権益層の数はこれほどまでに増えると見るべき数字。

 それこそ、今、衆議院選挙を行えば、菅直人候補落選さえありえる状況ではないか。名古屋の「特殊事情」で民主党が敗北したと見る訳にはいくまい。愛知でなくとも、地縁関係が薄い都会では、民主党議員は全く信用されなくなっていると思われるからだ。
 東京で考えれば、「子供手当」が財源上実施できないと言い出したことが致命傷かも。子供は社会が面倒を見ると大見得を切ったことを覚えていない人はいないからだ。しかも、地方からの歳出を要求したため、首長の拒否宣言が出されたのも効いた。地域主権という話も、中味は空だとの印象が広まってしまったからである。出鱈目で無責任な党という評価が決定的になってしまったということ。
 東京でも、民主党公認候補は、既得権益層からなる組織と、私的な後援会からの票しか集められなくなりそうな予感がする。

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