■■■■■ 2011.4.14 ■■■■■

 原発危機は続く

 とんでもない首相である。
 こともあろうに、4月12日に原発に関して「一歩一歩安定化に向かっている」と発言したからである。

 与党は解散が怖い議員だらけで、首相の地位を脅かされる心配がほとんどない。従って、何を言ったところでかまわないという傲慢な態度そのものと言えよう。ただ、当然ながら、海外にもこの言葉は翻訳されて流れてしまう。日本の首相は、深刻な事故と認識していないとなるから、海外の首脳から批判を浴びたと思われる。
 それを受けて急遽、チェルノブイリ級との声明を発表するしかなくなったのだろうか。

 と言っても、マスコミが「一歩一歩安定化に向かっている」雰囲気を醸成したがっていたのだから、当然の結果と言えるかも。報道は海外モノを読まないと駄目である。
 原発の状況をどう読むかなど、自明。
 そもそも、公式な発表データを見るだけでも、安定というにはほど遠いことがわかる。危機的な状況に一歩一歩進んでいる状態ではないと言うだけのこと。大きな余震が頻繁に続いている状況だから、これが突如悪化しないとの保証はないのだ。

 一応、原子力安全保安院発表の数字(リンク先はatmc.jp作成のグラフ)と、NHKニュースから「事実」だけご紹介してこう。
   ・福島原発 1号機
     -炉内圧力は未だに上昇基調である。「原子炉圧力」
     -格納容器放射線量は4月7日に突如激増、以後データ公開中止。「放射線量」
     -炉の給水ノズル温度は水の沸点(1気圧なら)を大幅に超えたまま。「原子炉温度」
     -窒素ガス充填による想定圧力変化(排気せずと見て)は見えず。「収納容器圧力」
     -"炉の表面温度が地震(4月7日夜)直後に40度近く上昇" NHKニュース 4月9日 4時38分
   ・福島原発 4号機
     -"使用済み燃料プールの水温が、およそ90度"。
     -"水面の上で、1時間当たり84ミリシーベルト"。NHKニュース 4月13日 19時40分

 要するに、膠着状態が続いているということ。放射性物質放出量は、爆発時の大量放出の影響が収まれば減少して当然。しかし、放射能物質はすでに剥き出状態だから、この先、気体や液体に混ざって"安定して"外部に放出され続ける。冷却水循環装置や、気体用フィルターが欠落しているのだから、これが収まることは考えにくい。

 この状態でできることは限られている。奇跡はあり得ない。
 知恵者を集めたところで、画期的方策の案出などできる訳がないのである。緊急マニュアル通り、決まったことを、手順通り進める以外に手は無いということ。そうした実行能力に長けた実務家にマネジメントを委ねるのが一番。
 現首相の動き方は、発言や行動を見る限り、いかにも非マニュアル的で対応も遅い。それをリーダーシップと勘違いしているのかも。ともかく、素人的なマネジメントそのもの。
 もちろん、そんな姿勢が意味を持つこともある。がんじがらめになっている既得権益構造を崩すために、素人的発想で動き枠組みを変えるという発想には一理あるからだ。しかし、それを緊急事態に適用されたのではたまったものではない。危険極まりないこと、この上なし。
 なにせ、暴徒化するデモ隊解散用の警視庁放水車を派遣したり、バケツの水を上空から周辺一帯に散布するような、常識外れの施策を次々と登場させる人達なのである。

 くどいが、問題は単純である。
 危機を回避したいなら、水を大量に入れ、ただただ温度上昇を防ぐしかありえない。せいぜいが、水の代替として、ドライアイスや液体窒素が使える位。ともかく、愚直に進めるしかないのである。
 当然ながら、そのためには釜の圧力を下げるために排気が必要となるし、排水放出量も一気に増える。汚染は広がる。しかし、これを避ければ、釜が爆発するリスクを抱えることになる。ここをどう判断するかの意思決定を総理大臣に委ねていることを忘れるべきではない。
 言うまでもないが、事故当初の動きから見て、「綱渡り的」操作で収拾できると考える「楽観論」者である。現時点の住民退避圏の設定状況から見て、ギリギリまで排気はさせないつもりである。


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