■■■■■ 2011.4.29 ■■■■■

 優良企業の組織とは

優良会社に接したことがある人はご存知だと思うが、会議での緊張感が違う。
と言って、別に、雰囲気や言葉遣いが特段違う訳ではない。

腑に落ちぬ話が出ると、それを切欠に結構紛糾したりするから、表面的には普通の企業となんらかわりはない。それどころか、時間の無駄としか思えぬ問題にこだわったりすることも結構多く、外部の人間から見れば、およそ非効率に映る。
と言うのは、従業員が一丸となって効率向上に励んでいる"普通の"会社と比較しがちなせいもある。会議スキルを磨いている企業を見慣れていたりすると、この企業のどこが優良なんだとあきれかえってしまうかも。

しかし、内情を知ると、両者は根本的に違うことに気付かされてしまう。
どこが違うかといえば、集まって何をしようとしているか、参集者全員がわかっているか否か。しかし、おそらく、誰が聞いてもそんなことがある筈がなかろうとなろう。その差は、すぐにはわかりにくいのである。
と言うのは、会議運営スキルの向上に励んでいる企業も、この点についてはご執心だからだ。議題を簡潔明瞭に表現し、時間内で結論を出す習慣付けが進んでおり、参加者全員が準備してくるから、そんなことなら完璧に出来上がっていると考えがちなのだ。
まあ、このセンスが違うと言った方がよいかも。

重要なのは、なんのためにその議題をその会議が取り上げているのか。そして、どうしてそこで結論を出さねばならないのかという点。これがわかっているかを考えた時、全く違った様相が見えてくる筈。会議そのものだけ見れば、確かに効率的でも、もっと広い視野で眺めると、はたしてその会議の価値はどれだけあるのか考えてみると、疑問も浮かぶということ。
こんな説明ではかえってわからなくなったか。

ともあれ、優良企業の会議は、広い視野で見ないと、その価値がわからないのである。一見すれば、非効率だったり、無駄な時間を潰しているように見えても、それに重大な意味があったりするもの。ここを見逃してはいけない。
例えば、いかに些細な話であっても、議題設定の背景を考えると納得いかないこともあろう。それにどう対応するかだ。会議を効率的に進めたいなら、時間が勿体ないので無視することになるのでは。しかし、優良企業ではそうは問屋がおろさない。問題自体は些細でも、それは基本方針からするとおかしくないかと主張する人がきまってどこからか登場するのである。つまり、全員が同じ方向に走っているのか、どうも気になるぜと言い出したに等しい。その瞬間、場は凍りつく。本質に関わる話がでてしまったからである。いかにつまらぬことでも、これを乗り越えなければ組織は一歩も進めないと、全員が感じるからでもある。緊張感が漲り、解決のために皆が頭をひねる訳だ。実は、この緊張感こそがイノベーションの原動力。
この状態になって初めて"文殊の知恵"が生まれるもの。

おわかりになると思うが、効率的議事運営からいえば、些細な疑問は避けたいもの。後から当事者で勝手に始末してくれと言いたくなる。ともあれ、全体の大きな方向を揃えることが第一義。それはビジネスマンなら当然な話に聞こえるだろう。しかし、その些細な問題が組織内の考え方にズレを生じさせる兆候だとしたら、放置しておいてよいのか。・・・優良企業は、この問題を早くから見抜いていたということ。

その風土を理解できると、実力のほどが見えてくる。
先ず気付くのが、会議終了後の行動の敏捷さ。たちどころに皆が勝手に動き出す。それぞれの所属部署内だけでかたがつかないことが多いから、それに対処するために関係者がすぐに連絡を取り合う。要するに、工程表らしきものがすぐにできあがってしまうということ。決めるには時間がかかるが、決まれば速い。 なんと言ってもそこでの驚きは、会議終了間際に、責任者が「○○ちゃんにも聞いておけよ。こちらから伝えておくから。」と軽く発言したこと。そう、この会議は、ここで閉じている訳ではないのである。そして、誰が中心になってどう動き始めそうか、皆、即座にわかっていたのである。

この程度なら、そこそこの企業でも可能と甘く考えない方がよい。
会議の仕方やその後の動き方の根っこにあるものは、そう簡単に身につくものではないからだ。

それは、当該企業のトップからお話を伺い。末端組織の課長まで次々とインタビューすれば一目瞭然。まさに金太郎飴。用語やスローガンを覚えていて、皆が繰り返すという話ではない。用語や言い回しは違っていても、全く同じ主旨の主張がなされる。根本が全くぶれないのである。これが素晴らしい風土と見なせるかはなんとも言い難いところもあるが、簡単に真似できないのは間違いない。

こんなことを書いてみたくなったのは、全く逆の例を、これでもかというほど連日見せつけられているから。

なんといっても、常識外れなのが、原発記者会見。
まったく役割が違い、構造や文化も異なる3つの組織を合同するというのには驚いた。同じ発言をするためというのである。これほど馬鹿げた理屈を聞いたのは初めて。
そして、圧巻は、曖昧な役割のままで、次々と立ち上がる識者会議。この手の組織はもともと政治的なものでしかないが、それをストーリー無しで編成するという異常さ。皆で知恵を寄せ集めれば、なんとかなるという、普通に考えれば稚拙な組織論でしかない。もっとも、原発緊急対応や救援活動体制構築のあまりのお粗末ぶりを見ていると、素人感覚の政治こそがベストとの思想が根底にあるのかも知れぬ。


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