■■■■■ 2011.9.11 ■■■■■

 新政権の緊要課題は日米安全保障体制再構築

「日米安全保障体制再構築が緊要な課題」と言ってもピンとくる人は稀かも。
「安全保障に関しては素人だが、これが本当のシビリアンコントロール」と胸をはる人が防衛大臣の国なのだから。
ジャーナリストの質もたいしてかわらない。なにせ、F35が1機50億円というニュースを、なんのコメントも付けず、平然と流せる神経の持ち主。

言うまでもないが、日本の安全保障は日米軍事同盟を基盤にしている。ところが、米国のお家の事情で、それが大きく揺らぎ始めた。超党派委員会が歳出削減計画で合意できなければ、自動的に防衛費がカットされることになるからだ。ティーパーティは、国防より歳出削減を優先しており、そうなる可能性も否定できない。もしそうなると、ただならない事態。

色々な問題が発生するが、例えば、F35開発プロジェクト中断となったらどうするのか。

すでに、巨額の開発費用が投入されているが、開発目標がチャレンジングすぎるから、ありえる話。なにせ、全く異なる要求の3タイプの機種を共通の新躯体と新エンジンで実現するというのだから。常識的には、帯に短し襷に長しで苦吟せざるをえない筈。その状態から抜け出ることができるか、今もってわからないというのが実態なのでは。

まあ、それはそれで致し方ない話とはなるのだが。
もともとF35は、日本には技術非開示のプロジェクト。従って、維持費用が嵩むのは間違いない代物で、日本の国防予算では所要機数を揃えるのは難しそう。中途半端に発注などしなくてすんだとも言える。
だが、問題はその代替機。

一つは、リビアでの米国との共同戦線運用実績を見せつけた、英国BAEシステムズのユーロファイター。日本のような狭い飛行場だらけの国には向いている機種である。その特徴は、なんといっても、ライセンス生産と技術情報全面開示が確約されている点。
将来的に安全保障を自国で担っていく覚悟があるなら、防衛産業を確立する必要があるが、それを実現できるということ。しかし、日米軍事同盟の下、米国の軍事情報網のなかで、非米国機種を使うのは大きな賭けである。辺野古移転問題の解決確約も全くできない状態なのだから。
その対抗馬というか、安全牌はボーイングのF18。これはすでに量産機で新鋭機とは言い難い。従って、こちらを選定すれば、この先少なくとも30年は米軍の最新鋭機への依存を続けざるを得まい。
あるいは、インチキ意思決定という手もあるのかも。しばらくは米軍依存度を高めながら、オーストラリアやシンガポールと歩調を合わせ、東アジアの新しい安全保障体制へと進める目論見。

つまり、この問題は機種選定という単純な話ではないのである。安全保障の観点で、日米関係をどう構築していくかという大問題に触れざるを得ない。だが、それをじっくりと検討できる時間はほとんど残されていない。
結局のところ、首相と長島昭久首相補佐官(外交・安全保障担当)の判断で日本の針路が決まることになりそうである。

(ref.)
「特集:日米安保条約60年 3氏座談会 マンネリズムを超えて」 毎日新聞 2011年9月7日
http://mainichi.jp/select/seiji/archive/news/2011/09/07/20110907ddm010010197000c.html
「日本向け価格は1機50億円 F35でロッキード幹部」 産経新聞-共同 2011年8月16日
「防衛省頼みの限界、日の丸戦闘機の苦境」 日本経済新聞 2011年6月21日


(C) 2011 RandDManagement.com    HOME  INDEX