■■■■■ 2011.9.29 ■■■■■

 中国型鉄道事故とは

中国の鉄道事故報道が騒がしい。原因がはっきりしていない状態で、信号システムがおかしいという話だけが一人歩きしているようだ。

小生は、追突という一報を耳にして、日本で発生した単線での正面衝突事故を思い出した。管理者が、信号の仕組みを理解できなかったと語ったので驚かされた覚えがある。安全確保業務は、信号システム敷設企業に丸投げだったのである。
中国も同じような運営状況なのかも。

信号システムは普通は強固なものである。同じ区間に2つの列車がかちあわないようにする基本原則が揺らぐことはない。たとえ機器が故障しても、全面的な停止信号表示か、非表示となるので、信号を遵守していれば追突など起こりようがない。
多くの場合、ノイズによる誤検出か、正常運用への復旧時に発生する誤操作で問題が発生する。特に、後者はよくある話。

言うまでもないが、故障時やメインテナンス時には、信号は半手動。その運用方法のマニュアルも作られている。
しかし、マニュアルには、どうしてそのような手順になっているのかは記載されることはない。従って、仕組みについて一知半解な人でも操作は可能。ただ、すべての条件をカバーするようなものは作れない。ここが危うさのもと。
マニュアルと一部異なった操作をするとどんな影響が出そうか、どんな時に何をしてはいけないか、全く理解していない人が、システムを弄くることになりかねないからだ。危険きわまりない話である。
最悪の場合、システム回復時に誤った設定をしても、気付かないこともある。それが安全システムを外す方向に進むものだったりしたらえらいこと。

中国の場合、取り急ぎ、半手動で運行を回復させたのではないか。その条件では、安全システムが解除されるとは思ってもいなかったのだろう。

直接的な問題は、この辺りだと見たが、遠因は、信号システムに故障が多いことにあるのかも。
例えば、落雷等の強烈なサージ電流に遭遇すれば、信号システムはダウンする。従って、敷設環境に応じて、ダウン防止策を取り入れたり、早期復旧の工夫が必要となる。敷設や機器に細かな配慮がなされる訳である。
早い話、故障解析のデータが集まっていて、その原因追求と対処策に関するノウハウがないと、円滑な運行はなかなか難しいということ。その点では、日本の鉄道は上を行くのは間違いない。
なにせ、扉一つが上手く閉まらないだけでも、列車は動けなくなったりする。そんな些細なことで運行遅延でも発生すれば、日本では乗客が怒りだすのだから、手抜きはできない。

しかし、同じ日本の鉄道と言っても、「新」交通システムの場合はそうはいくまい。長期のデータが無いからである。
そういう意味では、中国の新幹線は、ほとんど「新」交通システムに近い。中国独自の環境要件が考慮されていなさそうだし、長年の耐用試験も経ていない。にもかかわらず、車両設計時の想定時速を超えた運用を行っているからである。車両点検や部品交換期間が同じでも安全が保てるものかは、なんとも言えまい。
鉄道技術は本来保守的な筈。「先端」と称するものも、歴史は長かったりするのが普通だろう。
歴史が浅い技術を使う時は、日々注意して運用できる力がある鉄道会社以外では避けるのが基本。


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