■■■■■ 2011.11.24 ■■■■■

  ウォルマートのバーゲン品広告を眺めて

ご存知のように、米国ではThanksgivingが到来すると、クリスマス装飾が登場し、大バーゲンが始まる。 新聞は広告特集だらけで大部となる。ということで、なにげなくWalMartの広告を見ていたら、大画面液晶TVが掲載されていた。高精細(1080p)モデルが以下のお値段。Doorbustersに当たるのかはよくわからぬが。
 65インチ Toshiba $998
 46インチ Samsung $598
 40インチ Emerson $248
有名な安売りブランドが無いので、ウエブを見ると・・・。(但し、720p)
 32インチ Vizio $229
 ---LG, Toshiba $269
 26インチ Vizio $199

東芝が気を吐いているように映るが、安売りスーパーでの日本メーカーの存在感は薄そう。コスト、機能、品質、デザインのどれをとったところで、日本メーカーが圧倒的に優れている点をあげられないのだから、当然の結果だろう。
米国市場での日本企業のシェアはどの程度か調べていないが、この雰囲気から想像するに、どの大手メーカーもせいぜい1割いけば上首尾という状況か。

それよりなにより、驚かされるのは、日米の圧倒的な価格差。広告を見ると、ノートパソコンにしても、Compaqの15.6インチが$198。(2GBメモリ、250GBハードディスク、AMDデュアルコアCPU)そんな商品を日本で見たことがない。
無線マウスなど$8にすぎない。日本の百円ショップに、ようやく¥300の光学マウスが登場したらしいが、日本でのこの分野の商品はいつまでも価格が高止まりだ。

日本の量販店の価格の高さは特筆モノと言ってよさそう。昔、日米構造協議で大いに叩かれた非関税障壁的な「目に見えない制度」が今もって生きているということか。グローバル経済の時代に、未だにこんなことで収益を保とうと努力しているとしたら時代錯誤も甚だしいのでは。

と言うか、それしか道は残っていないということかも。
なにせ、国内では、TV産業にカンフル剤の大量投与まで行ったのだから。流石に、大枚の補助金とアナログ放送全廃スローガンは効いたようで、TVがバカスカ売れたようである。(CATVはアナログ放送並存)ただ、これは買い替え需要の先食いでしかなく、対処療法が終ればあとはどうにもなるまい。
素人目には、モルヒネ注射に映ったが。

もともと、こんな羽目に陥る可能性は、10年前に予想されていたのではないか。
各社揃い踏みで、似たような新製品ラッシュ攻勢をかけて、市場拡大を図りながら、そのなかで規模の経済を活かす算段が上手な企業が大儲けといったパターンがいつまでも続く訳があるまい。新興国市場が巨大化してしまえば、従来型のトータル原価計算スキルをベースとした生産技術の優位性だけでは競争に勝てないことは自明だと思うが。
勝てる技術が無く、 加速償却に向かない税制の国で生産を続ければどうなるかなど素人でもわかっていた話。

それに、放送機器事業を持っていながら、インターネット利用によるTV機能の飛躍的発展のチャンスも活かそうとしなかったことも大きい。ウエブ技術浸透の流れに抗し、培ってきたブランドプレミアムで食べていく決心を貫いた訳である。ご立派としか言いようがない。だが、それも、そろそろ限界ではないか。
TV市場で存在感を失うことは、エレクトロニクス系家電品での認知度を落とすことを意味するし、販売チャネル把握力も低下する。日本メーカーはこの市場でのじり貧化は免れないのでは。

そもそも、インターネット普及は、個別端末機器ID化の流れでもある。新製品開発能力が高いメーカーには滅多にないチャンスが巡ってきたと考えるべきもの。オーディオ製品のように、技術が成熟して市場が萎んでしまうことはありえない分野だった。しかし、そんな飛躍に繋がる道を嫌った訳である。


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