■■■■■ 2011.11.30 ■■■■■

  潮流エネルギー開発は頃合かも

NEDOの自然エネルギー技術開発の一つとして、「海洋エネルギー」分野のプロジェクトが始まるそうだ。
本来ならもっと早くから手をつけるべき分野だと見ている人もいそうだが、日本の体質を考えれば「頃合」では。

言うまでもないが、世界的に見れば、施工が簡単で安定したエネルギー源と見なされるのは風力の方である。
しかし、日本の環境には風力は向いていない。せいぜいのところ、輸出事業化を狙うといったところでは。だが、自然エネルギー発電はもともと政治臭濃厚な分野。おそらく、そんな海外市場に日本が食い込むのは至難の技だろう。といって、無視もできないから、風力発電はソコソコ適当にというのがまともな判断なのでは。

しかし、そうはならないのが日本の体質。自称エコ派による風力発電賞賛の嵐が巻き起こった。海外の真似好きな人だらけだから、むやみに反対もできない訳で、おそらく今もってヒト・モノ・カネが風力発電分野に注入されていることだろう。

これに対して、潮力発電は、理屈から言えば、日本に向いている。「黒潮」を海洋で大規模に使えばの話だが。もっとも、そんなことを表立って言う人はおそらく稀。社会的に、地熱発電以上に、筋が悪すぎるのである。
日本の海洋は「利権の海」だからだ。少しでも手を出せば、何が待ち構えているかわかったものではない。
それに海外市場は期待薄。電力消費地近くに安定した大きな潮流がある場所はそうそうはないからだ。
しかも、海中構造物建設には巨大投資と膨大なメインテナンス費用がかかる。それを狙う人も多そうだし、常識的にば潮流発電はペイするとは思えない。

しかし、それを乗り越える情熱とアイデアがあるなら話は別。
本来、研究開発とはそういったものだが、ご存知のように、日本が一番苦手な類の分野。もっとも、正確に言えば、苦手なのではなく、世界の潮流が決まってから後追いでトップを狙うのがお好きな人だらけというだけのこと。違う仕組みで、世界の先頭を切ろうという人達が出てくると、急いでその梯子を外しにかかる社会なのである。

先行開発は、やってみなければ、わからない。分析して成功確率を読むようなものではないのである。
重要なのは、駄目だと思ったら即刻プロジェクトを止めること。それだけ。その時は、引き続いて突破口を探るだけの極く小規模な基礎研究を残せばよいのだ。異端の研究になるが、ブレークスルーに期待するということ。もちろん、転進してもかまわないのである。

このプロジェクトがそうならないことを願うばかりだが、この開発は簡単ではなさそう。
それは、課題の難しさと言うより、日本に軍事技術開発のスキルがほとんど無い点にある。
本来なら、こうしたプロジェクトは先ずは コストを度外視した実証プロジェクトが望ましい。発電コストは二の次。技術体系を作るにはそれが一番早道だからだ。だが、それは日本ではまず無理。
しかも、軍用のような、悪条件下の長期使用型開発プロジェクト経験が不足している。民需は、ストレスをできる限り避ける工夫に重点を置きがちで、姿勢が正反対。要するに、最初の突破口は軍事型が切り開き易いのである。それに新しいアイデアで大胆な転換を図ると、画期的な製品が生まれたりする。これが、商用化の楽なやり方。
日本はそういう訳にいかないので、なかなか骨が折れる。

とは言え、プロジェクトの成否は当該組織の意気で決まるというのが、古今東西通用する経験則。
是非頑張って欲しいもの。

(ref.)
吉田勝:「IHIや東芝など、水中浮体式の海流発電システムの開発に着手--NEDOの委託予定先に採択」 日経BP Tech-On! 2011/11/28


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