■■■■■ 2012.2.28 ■■■■■

 福島原発民間事故調の報告はわかりにくそう

福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の半年にわたる検証作業結果が発表されたらしい。
(記者会見はこれから。28日午後3時。船橋洋一理事長の日本再建イニシアティブが編成した組織。 前科学技術振興機構理事長、元国際原子力機関理事会議長、弁護士・元検事総長、一橋大学名誉教授、東京大学先端科学技術研究センター教授、地球環境産業技術研究機構理事・研究所長といった6名のメンバーからなる。)
インタビューベースで背景や構造的な問題点を探ったもの。

報道を読んだだけだが、なんとなくわかりにくい報告書である。
水素爆発にまで至ってしまった大事故化問題と、津波で電源喪失してしまような非常事態への備えが全くされていなかった問題が混ざってしまうからかな。
まあ、これほどの大事故に至らないで済んだ筈との前提での調査ではないということか。

マスコミの取り上げ方としては、官邸の対応は「泥縄的で、無用な混乱により状況を悪化させる危険性を高めた」という調子が多そう。要するに、「省庁や事業者による役割分担を飛び越えて官邸が介入したが、事故の拡大防止にはほとんど貢献しなかった」との結論であると紹介する訳である。「官邸主導による現場への過剰介入」がよくなかったと見なすことになるが、それなら現場まかせが妥当だったとなりかねまい。そんな教訓だとすると、どこかおかしくないかネ。
その一方で、原子力災害をタブー視し、組織的怠慢で、力不足の安全規制状態という指摘もあったとなる。これでは、どうにもならない状態だったということになり、事故発生もその重大化も、まったく驚きでもなんでもないとになる。それはそうかも知れぬが、そんな見方でお茶を濁してよいのだろうか。

そうそう、「迅速な情報開示と、正確性の確保という2つの要請のせめぎ合いの中で試行錯誤していた」話も混ざってくる。ココも理解しにい点。「国民とのコミュニケーション不足による政府の信頼喪失」はその通りだが、信頼されようと、されなかろうが、パニックは防げたのは間違いないのでは。こちらの視点はどうなっているのかナ。
それに、放射能汚染が広がる可能性があったにもかかわらず、避難命令とその体制構築を後回しにしていたのは明らか。それに合わせ、実質的な報道管制を敷いたように映ったがそこら辺りはどう関係するのやら。

大日本帝国陸軍の組織問題を研究した学者が参加していたから、事故化を防げなかった組織的問題を抉ってくれると期待していたのだが。

小生は、最大の問題は、リーダーの判断能力不足と見ている。
それを、本人が自覚していればまだしも、真逆だったからどうにもならなくなったのだと思う。まともなスタッフも揃えていなかったようだし。なにせ、初動の電源車手配が無駄に終わったり、危険地帯への首相視察、自衛隊ヘリコプターによるバケツ水撒き敢行と、非常識連発。

しかも、周囲がいかにも原発の素人達。これ自体が問題ではなく、そこからあがってくる指摘の意味を、自分で考えようとしない姿勢が最悪。これでは、総合的な状況判断ができる筈がないからだ。
その上、専門家の知恵を生かすスキルも欠いていた。様々な意見がある筈で、断言する学者は胡散臭い。重要なのは、レビューをさせることで、意見の違いの大元を見抜くこと。これができないと、特定の学者の言い草に沿って動くことしかできなくなる。聞かされていた予想が外れたりすれば、どうしてよいかわからなくなって頭は大混乱。外から見れば、お粗末この上なしだが、当人達は専門家のいい加減さに腹を立てるだけで、自分達が悪いとは露とも思っていまい。

ここでの問題は、そんなリーダーが、リーダー然として「果敢に意思決定する」ことを放置する組風土。と言うか、組織的にバラバラにならないようにするから、リーダーの判断がおかしくても、そう感じなくなってしまうのである。
ただ、皆、なんか泥縄式対応だナと感じるだけ。
従って、最悪のシナリオが現実化しそうな気になる訳である。当人は危機感と感じたと語るだろうが、不安感でただただバタバタ動いていただけ。問題解決に向かっている確信がないのだから、実は、精神的緊張感ゼロなのである。その辺りがわからないというか、体験したことがない人達だったということ。

(参考とした記事)
「官邸の介入強めた班目発言 「水素爆発ない」 東電は再三の撤退申し入れ 民間事故調報告」 日経 2012/2/27
「“東京でも避難必要”の危機感も」 NHK 2月27日
「原発事故、官邸は泥縄対応 民間事故調が報告書」 共同通信・47News 2012/02/27
(報告書要旨)
「【原発民間事故調報告書】報告書要旨」 産経 2012.2.28


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