■■■■■ 2012.4.6 ■■■■■

 日本人気質について考えてみた

小生は、日本文化の基層は農耕文化と見るべきでないと考える。それなら、どのような文化か示す必要があるが、雑種文化だから表現が難しい。しかし避ける訳にもいかないから、素人的イメージだけでも開陳しておこう。
ただ、日本人の起源論のような、100人いれば、100説存在するような議論ではないから、そこら辺りはご理解のほど。

まず押さえておくべきは、気候条件。ほとんどが温帯モンスーンに属しているおり、全般的には暖かいが、季節変化が大きいこと。夏は高温で多湿かつ降雨量も多く、冬は結構寒くなり山岳部には大量の積雪がある。黙っていても、夏に植物が急生長し、秋には大量に実をつけるという、採取生活的には恵まれた地域なのである。
次に見ておくべきは、地形。深い森に覆われた火山だらけなのだ。しかも、海から山までの距離は短い。降雨量が多いため、火山灰に覆われたばかりの地域を除けば、肥沃な土壌の小さな扇状地が至るところに出現することになる。降雨量が少ない春は雪解け水が流れるから、一年中水はふんだんに存在する。近畿に存在する古都は山で囲まれている地形だが、もともとそこは池や沼。それが流れ込む土砂で埋まった訳で、極めて肥沃な土地だった筈。
ただ、こうした洪積地は全体から見れば僅かな面積。実態としては、台地、丘陵、低山、だらけ。しかもそれらの地質たるやバラバラ。モザイク模様さながら。こんな国土は滅多にないのである。

この条件を考慮すれば、収集経済と細微な農耕経済が混在した定住型小規模集落の姿が思い浮かぶ。狭い範囲での自立経済モデルが一番適合していそう。
もしも、これが当たっているとしたら、この小さな経済圏に狩猟経済も存在している筈。なんとなれば、森はすぐ側にあり、野生動物とヒトの生活圏は重なりあっていからだ。
狭い地域毎に自立できるということは、道具生産も行っていたことになる。岡本太郎は、縄文土器に触発されたそうだが、各地域独特の主張があり、古代人は道具類に魂を込めて作っていたことがわかる。実に小さな経済圏であるにもかかわらず、様々な産業形態が同居していた訳である。一般に、スキルの優劣で成果は大きく左右されるから、分業の仕組みがあったのは間違いないが、小規模集落の場合、大半の生活者は多能工的に様々な仕事に参加していたのでは。

ただ、自立した経済といっても、閉鎖経済ではない。古事記の海彦山彦の業務交換話があるし、伊豆製造の巡航速度が速い船があったことも記載されているように、海上や河川の交通は活発だったのは間違いない。黒曜石の全国分布で知られているように、その交易圏は現在にひけをとらない。つまり、古代から海人言語は広域で通用していたことになる。様々な物品が運ばれていることが判明しており、経済圏外との交流は極めて活発と見るべきだろう。つまり、狭い経済圏だが、そこには外部と交易を行う商業も存在したことになる。

こうした水上交通が活発なところを見ると、漁労も狭い経済圏内に含まれていた可能性が高い。常識的には、水産物だけでは基礎エネルギー摂取はできかねるから、漁業経済だけの社会は自立できない。それぞれの経済圏毎に包含される漁民達が存在したということか。火山と森の日本列島周辺の海域は、水産資源は世界有数の豊富さ。漁労民を抱えた経済圏は繁栄したに違いない。それに、藻塩の調達という点でも、各経済圏にとって必須な業態。

このように書いていると、日本の特徴がわかってくる。まあ、どれもこれも、その地域固有の環境についての深い理解なしには、まともな成果が得られそうにない業態だらけなのである。そういう国土だから必然と言えるかも。
このことは、本来的には地方分権型経済であることを意味する。しかし、その一方で、他地域の動きには目を離さずに、なんでも新しいものを取り込もうとする体質はありそう。

要するに、日本人の気質とは、上記の各種業態から生まれた気質の融合体ということ。雑種であり、雑食であるだけでなく、気質も混合状態なのは間違いないと思う。ただ、どれもこれも土着志向が濃厚。この辺りが一大特徴と言えそう。

例えば、以下のような6種の混合と考えることもできそう。
●農民体質 地域の気象や土質に合わせ、濃密に手を加える。
  つまり、勤勉。細かな工夫好き。
●採集人体質 何時ごろ、何処で。何が得られそうか、直感を働かせる。
  つまり、鋭い観察眼。
●狩人体質 狩猟用具を上手く使うために、訓練を怠らない。
  つまり、道具への深い愛着心。
●職人体質 狭い地域の独自性発揮にこだわり、道具は工芸品化する。
  つまり、手先が器用。緻密な作業に没頭。
●商人体質 新機能や高度なモノを、すかさず入手しようとする。
  つまり、新しいモノ好き。
●海人体質 大漁での大騒ぎ。遠征いとわず。武人でもありそう。
  つまり、宴会好き。外部情報収集に熱心。
まあ、こんな気質の見方が正しいかとか、これらが融合することがありえるのだろうか、といった話は、実はどうでもよい。指摘したいのは、以下の単純な話
 ・すべての産業が揃う、狭い地域内の、「自立」社会を好む。
 ・地域特殊性を勘案した、独自ノウハウ満載の産業に仕上げたがる。
 ・産業すべてを揃えるため、おそらく、社会的安定性を最優先する。
 ・しかし、閉鎖的ではなく、新しい人・物・知識の来訪大歓迎である。
こんなところ。

この状態だと、多分、隣接経済圏の統合はメリットよりデメリットの方が大きそう。中華帝国型支配機構の導入も困難だ。しかし、隣との繁栄競争はあったろうし、揉め事無しという訳にもいくまい。だが、その程度で終わらない時もある。地域毎の特殊性に合わせるよりも、生産性が上がる仕組みが登場した時だ。併合のメリットが生まれ、内乱勃発必至だから厄介だ。しかも、小さな経済圏だらけだから、一度始まると、覇権争いはそう簡単に決着がつくまい。共存の「和」国に突然大乱の図。
そんな状態を避けるには、調整役の中央政府樹立が手っ取り早かろう。見かけは中華帝国統治機構にしておいて、内実は全く違う政府にするだけの話。各地域の「自立」を犯さず、できる限り象徴的な機能に徹する権力を擁立する訳である。これこそが、日本的な国家観の原点ではあるまいか。

(地質について) 全国地質調査業協会連合会「地質情報ポータルサイト 教材用資料」


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