■■■■■ 2012.5.7 ■■■■■

 絵本を眺めて(続)

いかにも大人用哲学本として企画されたような、西洋「絵本」の話を2ヶ月ほど前にして、多少、気になっていたので、今度は、哲学を表に出さない日本の絵本を眺めて見ることにした。
絵本出版社から出された、いかにも子供向け体裁本。
この分野では有名な本である。ただ、小生は初めて。
   いわむら かずお著 「かんがえるカエルくん」 (福音館書店 1996年)

日本の新聞マンガのように、コマ割りになっており、テーマ毎にシリーズを形成している。
というご紹介をしたりすると、「哲学」系なら、起承転結話かと勘違いされるかも知れぬが、そんな感覚とはおよそ正反対。
これは、まぎれもなき「絵」本であり、言葉の本ではないからだ。

前回取り上げた、「はじめての哲学 生きる意味」は、極めて理屈っぽいが、それに比べると、「かんがえるカエルくん」はほどんど言語の体をなしていないと言えそう。
とは言え、全面に渡って、主人公のカエルくんととっても仲が良いネズミくんの会話シーンだけが描かれているのである。
常に短い言葉だけなのだが、お互いの表情から、それぞれ何を言いたいのかがわかる仕掛け。

作品のなかでは、なんといっても、「ぼく」あっての、「きみ」の世界が秀逸。
他人がどう見ているかを知ることによって、自分がわかるという、社会性の原点が、「ケケケ・・・」と、「ククク・・・」という楽しそうな二人の会話に凝縮されている訳である。
ここには言葉による論理は皆無。しかし、日本人にとっては、これこそが深いコミュニケーション。おそらく、世界標準では浅い情緒的な交流と見なされ、会話と呼べるものではないだろう。

と言うことで、まさに、日本語の真髄を描ききった傑作と言えよう。
一度、お読みになって、カエルくんの真似をして、かんがえてみたら如何かと。

(前回の当サイト掲載)
絵本を眺めて(2012.3.9)・・・「はじめての哲学 生きる意味」 オスカー・ブルニフィエ(文)/ジャック・デプレ(イラスト)/藤田尊潮 (訳) 世界文化社 2011年11月
(福音館書店サイト「カエルくんがかんがえたこと」)
http://www.fukuinkan.co.jp/ninkimono/kaeru/002.html


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