■■■■■ 2012.5.17 ■■■■■

 大阪自滅の図を見せてくれるらしい

報道からすると、未だに、無責任な電力会社批判が続いているようだ。大阪の電力需給問題のこと。
電力会社を悪者に仕立てて叩いているだけとしか思えない。それが実生活にプラスに働くとは思えないし、なにが楽しいのかさっぱりわからず。ひと昔前の左翼小児病的な社会党の動きによく似た感じがする。

相手が何を言いたいのか理解しようともせず、ただただ敵はけしからん輩と言うだけ。そんな主張は、説得力ゼロだから、そのうち捨てられるもの。
もっとも、昔は、それでも価値があった。大国の圧力に屈せず、公然と政権を批判できる勢力だったから。と言うか、インテリ層を抱える勢力だったことが大きい。その対極は、モノ言えぬ行動主義的な人達だらけなので、えらく輝いて見えたのである。しかし、社会状況は変わった。それなりに社会が成熟したきたからである。

よけいな前置きだったか。

この化けの皮が剥がれるのが、電力需給見通しに関する議論。
常識で考えればわかるが、精緻な予測などできる訳が無い。どんな知恵を集めようと、予想は政治的なもの。批判したいなら、どのように考えるべきか仮説を作り、勝手に数字を作って対案を出すしかないのである。
従って、ここを見ていれば、頭脳のレベルは一目瞭然。

一番簡単なのは、稼動可能な発電所すべての理論上の最大発電量を合計してそれを総供給量とするやり方。一方、需要は、今迄のピーク消費電力の最高値。こんな数字を用いて、需給状況を判断する気になれるだろうか。それは余りに無謀というのなら、どうするネ。正解がある訳ではないから、どのようなシュミレーションでも可能であり、結局のところは政治的判断で決めるしかないのである。
そうそう、夜間余剰電力対策として活用してきた巨大な揚水発電所もすべて稼動とするのも一案。夜間に火力を稼動し続ければ運転可能だからだ。だが、天候で使えなくなることもある。そんなことは無視せよというのなら、それもあり。どう判断するかは、政治の問題。
閉鎖した発電所の再開分の扱いも同じようなもの。古い設備でもメインテナンスをしているから稼動はできる。しかし、常識的に長期安定性は保証できかねる。その事故確率など、誰もよくわからない。従って、どう判断するも勝手。

日本の電力会社は、トラブル無きよう、しかも、経営安定を旨としながら、エネルギー政策に合わせて能力を設定してきたに過ぎない。明らかに安定供給至上主義である。従って、常に安全サイドで供給能力を計算する筈。それは無駄と考えるなら、はっきりとそう主張すべきだ。当然のことながら、それによって停電のリスクは高まる。それだけのこと。
ただ、電力系統制御の仕組みの抜本的変更を突然行うようなことは狂気の沙汰に近いが。
ともあれ、もう少し、まともな議論をしたらどんなものか。

まあ、そんなことより厄介なのは、役所で刺青が流行るような地域で発生している騒動という点。新首長が指摘するように、非効率な役所がとりしきる税金ぶる下がり社会だとしたら、計画停電を始めたら、えらい騒ぎになるのでは。
業種によっては、操業停止を迫られ、事業が成り立たなくなる可能性が高いし、なんとか操業するにしても、そのコストはただならないものになりかねない。長期的に経済低迷の地区ということは、資本コスト割れにもかかわらず、なんとか操業を続けているだけの中小零細業者の集積地であることを意味していそうだし、体質的に金銭的保証を言い出すことになるのでは。一体、それにどう対応するつもりなのだろう。

先ずは、昨夏、節電目標がまともに実現できたのかの検証から。ともかく、現実を見据えて進めて欲しいもの。しかし、首長は、そんなことはどうでもよいとの姿勢に見える。恐ろしい話。
なにせ、「こういう状況は二度とない。次世代のために電力使用制限令とはどういうことなのか、しっかり経験することが必要だ」という発想。大停電実験もやってみたいのかも。
大阪経済自滅の図を皆に見せたいらしい。

それでも、府知事・市長と関西の経済団体代表の節電会談は始まったらしい。肝心の、誰が、どう節電量を調整するのかは曖昧なままのようだが。
言うまでもないが、「調整」は、旧政治勢力の一番のお得意技。地元での利害調整役を担えるからこそ、国会議員職が約束されるというのが、日本の地方の掟だからだ。これをリセットするには、合理主義を政治決断に持ち込む必要があるが、論理を欠く原発再開反対論を振りかざすのだから、それは無理だろう。そうなると、どうやって調整するつもりなのだろうか。
そうそう、電源車の手配や、その対応設備工事がどうなっているのかも気にかかる点。施設によっては、長時間の停電はヒトの命にかかわる問題であり、もたもたしているとえらいことになるのだが。

(記事)
橋下市長ら 経済団体と会談 5月16日 14時39分 NHK
橋下市長「電力使用制限令の経験必要」2012年5月15日 読売新聞-関西発


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