■■■■■ 2012.7.12 ■■■■■

  五輪招致意識のズレ

ロンドンオリンピックに向け、2020年夏季五輪の東京招致運動に力が入ってきた模様。
徹頭徹尾、「復興五輪」でいくらしい。
どんなものかね。被災された方々がそんな気分ならよいが。

そうでなくとも、当初からノリが悪い。
招致「賛成」と「やや賛成」は、全国で未だ56.8%程度でしかなく、東京都だと52.4%と盛り上がりを欠く。

にもかかわらず、今や東京は本命候補に浮上とか囁く人多し。ロンドン(欧州)、リオ(南アメリカ)とくれば次は東京(アジア)というのが通り相場ということで。
それに、競争相手のマドリードは経済危機で大幅予算削減に見舞われそうだし、政治的にもまとまった招致運動はできなくなりそう。少なくとも大幅計画変更は余儀なくされるから、常識的には落選臭い。イスタンブールは小アジアの都市だが、欧州のアジアへの入り口イメージが濃いし。
こうなると中央の政治家も注力したくなるもの。上手くかめば、後で自分の実績と誇ることができそうだから。そうなるとマスコミも総力をあげて喧伝開始か。それが日本の常。

これが独りよがりの大騒ぎにならなければよいが。海外の目は相当違うのではないかと思うからでもある。
あからさまに言うことは無かろうが、以下を気にしている人だらけでは。
  ・原発停止で電力供給不足はどうなの?
  ・露出したプールにある膨大な核燃料はそのまま?
  ・放射線量が基準値を上回る地域があると聞くが?
  ・首都直下型地震の話を耳にするが?
どう答えるつもりなのだろうか。そもそも、どれも、国内でさえまともな説明を聞いた覚えがないからだ。ただただ、不安を覚える必要無しと宣伝するつもりなのだろうか。国内なら通用するかも知れぬが、それを海外でも押し通して大丈夫かね。

それだけではない。感覚的に相当な齟齬が生まれていそう。
それは、石原都知事の発言が物語る。・・・(都民は、)「ぜいたくで、何があっても当たり前。うぬぼれてるし、自分のことしか考えなくなり、他の日本人と違う人種になりましたな。(五輪が)実現したら都民は来なくていい」。
フラストレーションはよくわかる。なにせ、都民支持率47%だったのだから。そんなとてつもなく低い数字の開催候補都市など常識ではあり得まい。

暴言で注目を集める手法を多用する知事だが、これこそ都会人の感覚を理解できなくなっていることを示したものではないか。ぜいたくができるから都会に魅力があるという古典的な地方の発想そのものと言えそう。苦労に苦労を重ねて、ついにポルシェに乗れたという成金風情の集まりが大都会といった感覚なのでは。
まあ、それが間違いとは言えないが、グローバル化が進んだ結果、都会住民の嗜好は大きく変わっていると思うが。
世界中、どの都市も、自らの文化を発信しながら、他の文化を味わうこともできる、多文化世界の生活を楽しめる環境をつくる方向に進みつつあるからだ。それこそ、都民もニューヨーカーも、イスタンブール開催が今の時代らしいネとの気分を共有してもおかしくない時代。そうだからこそ都会に魅力があるのだと思うが。
早く言えば、都会には自らの意志で新しいことができそうとの雰囲気が満ち溢れているというだけの話。そうだからこそ、様々な人が集まってくるのだと思う。グローバル的には、それがさらに一歩進んでいると見るべきだろう。今や、日本人がガイジンとして他の都会へと移って仕事をしたところで生活上たいした違和感は無いのである。日の丸を胸に、他国で頑張るような風情などどこにもない。しかも、それはデユッセルドルフやボストンという話ではなく、バンコクや香港を含む、世界の大都会でのこと。
開催地はパリよりロンドンだネ、との決定がその変化をいみじくも物語っているとは言えまいか。コレ、いわば都市住民の気分で選ばれたようなものでは。芸術文化の都より、自然体で、皆がスポーツを気楽に楽しむ都会で開催した方が嬉しがる時代ではないかと、投票者が気付いたということ。オリンピック事業が対象としている主顧客は、あくまでも世界中の都会の人々なのである。

(記事)
五輪東京招致、支持は57%=民間調査 2012/07/10-20:40 時事
五輪中のロンドンで招致PRへ 7月7日 0時9分 NHK
五輪=経済危機のスペイン、マドリードの招致活動に疑問の声 2012年 06月 26日 13:47 JST ロイター
東日本大震災 復興五輪/理念磨き支援体制組もう 2012年06月26日 河北新報
特集ワイド:なんか違う?最近の石原都知事発言「東京は薄情」「ちまちました我欲」「やせた民族」 「壊れた心」最後の叫び 毎日新聞 2012年06月13日


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