■■■■■ 2012.7.14 ■■■■■

  サバンナ二足歩行の裸猿論は余りに雑

ヒトは裸のサル。
頭髪と陰毛は例外だが、ケモノのような毛は全く無く、誰でもが納得する表現だと思う。
おそらく、二足歩行を始めたため、毛が薄くなり、産毛しかなくなったのだろうとだれしもが感じている筈。ところが、どのように二足歩行になったかという話になると、どうも今一歩の説しかない。
そのため、未だに、二足歩行で森から草原に出立との「サバンナ仮説」が幅を利かせている。ちょっと見にはそれしかなかろうと思い込みがちだが、よく考えてみれば欠点だらけの説。と言うか、もしかするとトンデモ論かも。裸になる必然性を感じさせないからである。
もっとも、そう考える人は少なさそう。
サバンナ説以外の主張をことごとく学者が叩いてきたから、否定したくても、乗り換える理屈が見つからないからだ。異なる主張の核心を読み取ろうとせず、矛盾点を突くばかりでは進歩が無いと思うが、サバンナ説を否定されると沽券にかかわると感じる人だらけなのだろう。

そんな状態は、素人にとっては大歓迎。学者の細かな理屈など読まなくても、Wiki等の雑駁な情報をザッと参照するだけで、勝手に色々と類推できるからだ。すぐできる頭の体操みたいなもので、暇潰しにはお勧め。

ということで、サバンナ仮説が素人からすれば、トンデモ論に映る理由を書いておこうか。

ド素人である。別に難しい理屈を捏ねようという訳ではない。現に、サバンナで暮らすサルがいるから、おかしな理屈だと感じるだけのこと。毛皮のサルより、裸のサルが草原の環境に適合する根拠ってナンナノということ。

ということで、毛皮のサルを見ておこう。

●映像によく登場するのは、有名猿のサバンナモンキー君。
雑食性らしいが、草原ではもっぱらイネ科の草の実を食べると言われている。穀物中心の現代人の食材ミックスと似ているのかも。ただ、ヒトとは比べものにならないほど臼歯が発達しているから、そんなことが可能なのだろう。動物園では、そんなことはわからないが、このサル、見ればすぐわかる。性器が独特だが、それではない。顔が真っ黒なのだ。まさに、アフリカの熱帯に住むヒトの皮膚色そのもの。裸になれば全身黒色になるのは道理。
別名、ベルベットモンキーとされるだけあって、素敵なふさふさした毛皮の持ち主。草地で長時間過ごすが、毛が落ち、裸状態になる兆候などどこにも見当たらない。

●多少体躯が大きめのパタスモンキー君も森から出たかどうかはわからないが、正真正銘毛皮のサル。
こちらはほぼ地表生活。低木上で寝るというから、夜はベッド生活といったところか。昼間生活時間は長く、もちろん四足で歩く。だが、なんといってもその特徴は、走行に適している四肢のつくり。なにせ、時速55Km出せるというのだ。ヒトの二足走行は100m走で時速36Kmがせいいっぱいだから、圧倒的に優れている。腹毛は白色でふさふさ。それほど日光に当たらない部分だと思うが、暑すぎないのか気になる。夜の寝冷え予防には嬉しいというところか。どもあれ、しいて裸になりたい理由はなさそう。尚、このサルの場合、檻で飼うと、顔の黒色が薄くなるそうである。

●ヒヒもサバンナの毛皮哺乳類と言ってよいだろう。正式名称で特定するなら、チャクマヒヒ、キイロヒヒ、アヌビスヒヒといったところ。チャクマという名前は馴染みが薄いが、アフリカ旅行宣伝の映像でよく登場するからお馴染みの筈。水場さえあれば、四本足で草地をどこまでも平然と歩く。隙あれば、観光用のコテッジにすかさず侵入する輩として知られている。
なかなか賢そうであり、本来は川辺の林で餌をあさる習慣を持っていそう。もっとも、それは、安全が確認できた一時のみだろう。サバンナも危険だろうから、逃げる場所を確保しながらの長距離移動者だと思われる。
ヒト同様に雑食性。草や堅い実を歯で潰す力がある。四足歩行だが、片手で食べ物を採る体勢が普通。頬袋があるから、持ち運びに手は使わない。
尻尾欠損個体が多そう。ヒト同様に樹上生活ではないからバランス確保用として不要ということなのだろう。もっとも、犬のようにコミュニケーションに使ってもよい訳だが。

これらを見る限り、サバンナを長時間それなりのスピードで歩けることと、両手を自由に使えることが絶大なメリットと見なせる情景は極めて限定的と言わざるを得まい。捕食者が存在するエリアに、俊足で逃げる力もない生物がノコノコでかける馬鹿もいまい。しかも、嗅覚は鈍く、死肉を見つけて両手で運んでくるというシーンは映画でしかありwそうにない。
しかし、化石骨格から、ヒトの祖先が二足歩行していたのは確実。そうだとするなら、仮説の骨格を変える必要があろう。少なくとも、サバンナへの出立という見方は余りに雑。異なる説をじっくり考え、その理屈を磨き直す必要がありそう。


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