■■■■■ 2012.7.19 ■■■■■

  トイレカタログを見て

思ってもいなかったことだが、先日、トイレ改装を勧められた。最近の日本のトイレはシステム化されていて機能的な上、美しいですから、と言うのである。と言っても、カタログをもらっただけにすぎないが。

眺めると確かに、成る程感あり。
部屋の大きさに合わせて、全体の構成を考え、美麗に整えるように工夫されたカタログなのである。そして、基本は洗浄・暖房機能付き便座組み込みのタンクレス一体型便器の使用。
そして、室内全体をお洒落なイメージに仕立て上げることができるようになっている。

うーむ。
トイレもファッショナブルに、と言うことか。
確かに機能的で悪くはないのだが、なんとなく趣味に合わぬといった感じ。小生は標準偏差ではだいぶ離れたところにいるようだ。

小生は、大きなウオータータンクが付いた、2ピース白色陶器が好きなのである。邪魔で、不恰好であることは間違いないが。プラスチックではなく、陶器の重そうな質感が心地よさそのものだからだ。確かに、洗浄・暖房型便座を別途取り付けるから、デザイン的一体性が無く、今一歩であるのは確かだが、それより全体の質感が嬉しい。
タンクレス一体型便器は占有面積を減らすことができるが、そうしなければならない広さなら、手洗いを兼ねたタンク型が良さげ。ところが、今は、狭い部屋でも、別途洗面器を設置したい方が多いらしい。子供が使い易いからか。

質感の嬉しさという点では、小生の好みは、壁は無地クロス、床は無垢木材、カウンターは天然一枚石といった構成。単純だから嬉しいのである。
今の流れはこれとは180度違うようだ。壁はデザイン性豊かな装飾モノ。飾り棚までつけるのである。床材のお勧め品はセラミックなのである。汚れに強いということ。当然ながら、カウンター天板は様々なものから選ぶことになる。

従って、洗面器もデザイン性を重視することになる。最近の流行はカウンター上に乗せるベッセル型陶器洗面器。確かに、色々な焼き物があり面白かろう。もちろん、水洗金具は混合タイプ。
小生は、はっきり言って、このタイプ大嫌い。店屋の便所で時々経験するのだが、混合水栓金具なので高い位置に蛇口がつけられており、水がはねるからである。拙宅のは、カウンター面に凹の鋳物琺瑯洗面器。蛇口がベッセルに間近の2水栓金具であり、古典的な手洗い様式。これが一番と考えている。ここはキッチンではないのだから。

不思議なのは、鏡の設置。できるだけ小型にしたいようである。一種の壁の装飾品なのだろうか。拙宅は、洗面カウンターの壁面側は全面鏡貼にしているが、その手の単純なデザインは好まれないようだ。
カウンターにしても、一種の収納家具だから、天板下部は扉をつけるだけというのが、基本と見ていたら、そこに開放棚をつけたり、トイレットペーパー収納場所をとったりするのである。その辺りの考え方もシステムトイレの重要なポイントなのかも知れぬが、小生はこういった便利さは嫌いである。トイレットペーパーは便器横壁に取り付けたメタル紙巻器が一番だと考えているからだ。言うまでもないが、質感がでている厚手のクロムメッキ品が嬉しい。もちろん、できるかぎり単純な形態。

何故、突然、トイレの話をしたのかと言えば、最近の日本の家電製品の特徴とよく似ている感じがしたからである。なんとなくファッショナブルに感じさせるし、説明を聞くと確かに機能的に優れていることがわかる。デザインも凝ったものになっていたり、機器操作のソフトも細かく工夫されている。手の込んだ高付加価値製品を目指して頑張っているのはよくわかる。
しかし、この流れでよいのか、よく考える必要があるのではなかろうか。
20社もが似たり寄ったりの新製品競争を繰り広げる時代はとうに終わっているのである。誰でもが唸るような訴求点を欠いたままだと、下手をすればゴジャゴジャ感を与えかねない点に十分注意を払うべきだと思う。
愛される工業製品とは、「単純」であり、かつ、その「質感」が魅力を奏でるものなのだから。


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