■■■■■ 2012.12.16 ■■■■■

  北朝鮮と中国の権力者が考えていそうなこと

北朝鮮の姿勢についてのマスコミのコメントはステレオタイプなものが多い。商売だからいたしかたがないが。
例えば、こんなところ。
・国際社会を挑発し、関係国の譲歩を引き出そうとする「瀬戸際外交」が、亡父の金正日総書記から引き継がれているようだ。
・関係国の権力移行期でもあり、「北朝鮮は国際社会が強力な制裁措置を打ち出せないと高をくくっている」(日朝関係筋)・・・。

北朝鮮独裁者から見れば、米国との直接交渉によって「平和条約」締結を実現することが一番の目標。誰が権力を握ろうとこれは変わるまい。さすれば、周辺国への対立姿勢を示したり、軍事的緊張を煽ったりする動きとは、その観点から、当座有利か否かで判断しているだけの話では。北朝鮮から見れば、あくまでも「停戦協定」履行下というだけにすぎず、戦争は終結している訳ではない。そんな戦時体制国家に対して、常識的な外交を期待すること自体がピンボケとは言えまいか。
それに、身分制が徹底している軍事独裁国である。その仕組みが王朝一族の支配を支えているのは明らか。一族分裂さえ発生しなければ、経済制裁程度で権力基盤が揺らぐことはまず考えにくかろう。

つまり、「国際社会」の批判云々は、こちら側の論理。しかも、朝鮮半島など遠いところの紛争としてしか見ていない感覚濃厚。そんな視点で、北朝鮮の独裁者の動きを読むのはいい加減に止めたらどうか。

その独裁者だが、率直そのもの。まさに、直球勝負。
「宇宙強国の地位をさらに固め、われわれが世界最先端科学技術に達したことを見せつけ」、「技術的に難しい寒い季節に行われたが、大成功を収めた。これは誇るべき勝利」というのは、この国の論理そのものである。
発射準備に長時間有するようなこの手のミサイルは、発射準備作業が探知可能であり、短時間でピンポイント型破壊行動をとれる米軍にとってはさしたる軍事的脅威では無い。だが、北朝鮮から見ればそういう話ではない。衛星軌道に乗せる技術力の誇示こそが、国家生き残りの鍵と考えているからだ。
それは東西冷戦状態の米ソ角逐の姿を学んだから。ソ連に先を越された米国の焦りをよく知っているからである。核兵器開発済みの大陸間弾道弾保有国には、米国は早晩折れてくるしかなかろうと見ているだけの話。
それはありえないが、封建的仕組みだと、精神論の議論だらけになるから、現実が見えないのである。核兵器小型化と衛星制御再突入の技術開発ほどカネを喰うプロジェクトは滅多にないからだ。イランと一緒になってカネをつぎ込み、早く自爆してくれというのが、米国の思惑。面倒なことは一切中国まかせの、ヘジテーションストラテジーそのもの。

このように考えていくと、中国共産党の独裁者も似た発想をしていることに気付かされる。
ただ、こちらは、北朝鮮よりは少し進歩している。冷戦終結がソ連崩壊で発生したことが頭に深く刻まれているということ。
レーガン大統領に、軍拡競争を仕掛けられ、資金的に続かなくなったソ連は根太が崩れてしまい、結局のところグローバル経済のなかで沈没せざるを得なかった訳である。
従って、今、中国は好機到来と見ているに違いない。軍拡競争を煽るにしくわなしという訳。はなばなしければ、はなばなしいほど良い。米国も日本も、軍事支出を拡大すれば国家財政が破綻するだけ。この流れに乗ってくれれば言うことなし。後は、両国の国力が落ちてくれるのを待つだけ。まさに、熟柿作戦である。

ここをよく勘案して、動かないと、たまったものではない。歴史的感性も発揮し、熟考すべきだと思う。・・・日本史を眺める限り、中華帝国や、朝鮮半島統一化勢力と、友好的だった時代があったとは思えない。貢物や戦利品としての奴隷層の移住は古代から存在していたようだが、日本人として溶け込んだのは、その手の人々ではなさそう。迫害や粛清を逃れてきた上層階級や大陸文化が心地よくなくて移住してきたインテリ階層が、日本列島の住民と交じり合ったと見て間違いなさそう。従って、混交に障害となる宗教としての儒教や宦官制度は決して取り入れることもなかった訳である。
つまり、両者の風土は全く異なるということ。それが続く限り、日本と大陸間の摩擦は避けがたかろう。それを前提として、いかに風当たりを弱くするかが外交技術。なにせ、大陸の国家は、帝国もミニもおしなべて覇権主義であり、露骨に傲慢さを示すことこそがレゾンデートルそのものなのだから。

一方、歴史的には、米国と中国の間に直接的な摩擦があった訳ではない。齟齬は、朝鮮半島での戦いだけ。ニクソン-毛沢東の会談とは、世界の覇権国同志で世界の趨勢を決めていこうという歴史的な合意イベント。両国は、その時々の力関係で適当なところで折り合いをつけていこうという意思一致ができている訳である。それが破られたことはなく、この先、突然にして、両国が勝手に東アジアの枠組みを取り決めてしまうこともありうるということ。用心にこしたことはない。

ここら辺りを勘案して、どうすべきかを考えることができる人に外交をまかせて欲しいものである。ドンキホーテ的な感覚で槍を振り上げて自己満足に浸るような人の起用だけは避けてくれないと。
無理かもしれぬが。

(時事通信社の記事)
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