■■■■■ 2013.4.15 ■■■■■

  朝鮮動乱の気配

この所の北朝鮮の動きを見ていると、朝鮮戦争勃発は時間の問題でしかないような気がする。海外の様々な報道をざっと眺めているに過ぎないし、直観的(直感と書くべきかも)なものだから、こんなことを文章にするのは気がひけるが。ただ、経験的にはこの手の予測は結構当たる。誰でもそんな経験はあろう。

そんな予想の当たり外れは別として、マスコミ報道解説から距離を置いて、自分の頭で考えるようにしないと、判断力が鈍ってくるのではないか。本質に触れず、話題性が高い現象の当座の説明に余念がない記事ばかりだからだ。
その場合、なによりも重要なのは、全体観の形成を目指すこと。そのためには、余り分析的に考えず、感覚の次元でも、ニュースに触れる必要があろう。それが習い性になると、一見どうでもよさそうなニュースの欠片に接しているだけで、突如、全体の流れが見えてくることがあるもの。口では簡単だが、これが結構難しい。
ただ、間違えてもらってはこまるが、予想が当たると言っても、それは「必然性を感じる」ような流れが見えてくるだけ。転換点の時期は読みようがない。

朝鮮戦争勃発不可避という予想にしても、せいぜいのところ、遅くても2015年中といったレベル。それ以上の予測は多分無理だろう。直近に突然勃発の可能性もなきにしもあらずということでもある。米韓中の協議が朝鮮半島内で行われ、「北朝鮮指導者に"指示"した」と受け取られかねない表現での共同声明でも発表されたりすれば、即宣戦布告かも。

不思議なことに、この手の見方は稀。そんな見方をすると、質が低い異端ジャーナリズムと見なされるからだろうか。紆余曲折はあろうが、暴走することはあり得まいという見方だらけ。それが説得力を持つならわかるが、小生にはそうは感じられないから、どうも違和感だけが残るのだ。

例えば、こういうこと。

 (1) 戦力的にとんでもなく劣勢だから開戦できる筈が無い。
    ・・・論理が真逆では。
負けるのがわかっていて、宣戦布告することは無いというのだが、その理屈が通らないのは日本の現代史を見れば明らかではないか。
帝国海軍の上層部が敵国の力量を冷静に判断し、開戦は無理筋と判断していたのは間違いない。しかも、統帥権を有する最高司令官も、開戦は無謀と見ていたようだ。ところが、結局のところ、そんな見方は葬り去られたのである。石油を断たれしまったから、「このままではジリ貧一方。もうヤルしか無い。」派が"暴走"したのである。しかも驚くことに、「勝利の日まで、最後の一人になっても戦い抜く」方針に、国家の指導層が諾々と従った。普通は、秘密裏に、どのように戦争を終結すべきか様々なシナリオを作成した上で戦争布告するものだと思うが、グローバルなセンスを持つ人々も含め、指導部全員が「なんとかなるさ」で動いたようだ。ド素人集団が指導層の国家だったとは思えないにもかかわらず。
一方、当時の米国政府は、圧力をかけ続ければ、日本は必ず撥ねると読んでいたようである。徹底的に日本文化を研究しており、それをベースにした外交に徹していたということ。
これが歴史が語ってくれる、事態の推移の見本。冒頭の論理がどこから出てくるのか理解に苦しむ。
ただ、こうした過去の流れをそのまま現代の朝鮮半島情勢に当てはめることはできない。中東政策を見ればわかるように、最近の米国政府には異国の社会風土を考慮した対応能力は欠落したまま。世界のリーダーとして指導力を発揮する気概も失せているようにしか思えない。東アジアで問題が発生しても、その都度、ご都合主義的な動きでお茶を濁す以上の動きはしないと見た方がよさそう。
しかし、北朝鮮軍の考える米国とは、1950年の頃の覇権国で、ここらの現状認識の違いが、齟齬を埋められない元凶と言えないこともない。

 (2) いつもの瀬戸際外交だ。
    ・・・その見方は現象論では。

金王朝の初代は独立を自力で果たし、半島統一戦争に踏み出した神がかりの英雄であり、二代目は悲願の半島統一を目指して、ただただ軍事力強化に邁進する方針のもと、独裁政治を完璧に仕上げてきたのである。
この点を踏まえれば、独裁者がブラフを仕掛ける瀬戸際外交の国と解釈しては拙いことがわかろう。外交政策と国内における独裁体制強化が別物である訳がないのであり、最後の戦い目指して軍事力強化という方針を貫き通しているにすぎまい。いつ暴走してもおかしくなかった訳だが、カリスマ的地位にのぼりつめた独裁者が「開戦は時期尚早であり、さらに高度な軍事力を備えるまで待て」と言い続けてきたから、そこに至らなかったと見た方が妥当とはいえまいか。
中国もそうだが、外交部門は、独裁者の命を受けたと称する軍の方針に従い動く以上のことはできない。そうした状況を考えれば、瀬戸際外交はいつまでも通用する訳がなかろうとのコメントはピント外れでは。北朝鮮の動きに騙されてはならぬ式の主張はさらなり。米中ともに、金王朝崩壊による半島大混乱を避けたいがため、対処療法で問題の先送りをしてきたツケがついに回ってきただけのことでは。
さて、そこで三代目。今までと同じ姿勢で開戦先延ばしを指示できるとは思えまい。核兵器は使える状態だし、膨大な数のミサイルも揃え、それこそ百万人の陸軍も動かせる状態になったというのに、首領様は知らん顔という訳にはいくまい。開戦を引き伸ばす理屈がなくなっており、軍の総意が開戦急げということなら、金王朝維持のためには、宣戦布告を決断せざるを得まい。

 (3) 鬼畜米国で煽って国内引き締めを図っているだけ。
    ・・・ついに、暴走が始まってしまったのでは。

小生は、朝鮮民族は、ドンキホーテ型夢想に陥る体質が濃厚と見ている。大言壮語表現や、事実歪曲を繰り返しているうちに、そのうちそれに酔ってしまい、真実がわからなくなってしまうのである。しかも、根底には脈々と受け継がれてきた小中華思想があり、天帝に従うという儒教の教えが染み付いている。いったん暴走が始まるともう止めようがなかろう。
おそらく、北朝鮮正規軍は、緒戦での、パールハーバー型大勝利を確信しており、その勢いで、一気に短時間で半島全面支配にこぎつけようとの目論見だろう。2012年の大軍事パレードの様子を見ると、いつ開戦に踏み切っても勝てると自負しているかのよう。武器が質量的に高度な水準に達しているとはとうてい思えないが、そんなことは瑣末なこと。朝鮮戦争では、突然の侵攻で大勝利し半島全域支配目前までいたのに失敗。明らかに、その教訓を踏まえた装備を見せ付けている印象。敵国への力の誇示というより、開戦に向けた昂揚感醸成と、南のシンパ組織を鼓舞しようとの意図がありあり。
グアムの米軍基地を叩くことが可能になったし、半島内のすべての軍事基地を即時破壊できる量を越えたミサイル備蓄も完了したから、後は首領様が時期を決めるだけと考えているのと違うか。かつてのソウル"解放"で、住民総出で大歓迎してもらった写真を眺めながら、再びその日が来るのをただただ待ちわびているというのが北朝鮮軍の実態かも知れないのである。


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