■■■■■ 2013.6.3 ■■■■■

  FTの新サービスを見て

5月末に、突然、"fastFT"なるものがファイナンシャル・タイムズ紙HPに登場。
  "Financial Times launches fastFT" 29 May 2013 ft.com/about us
ロンドン、ニューヨーク、香港を拠点に、24時間眠らずに、ショートメッセージ型記事を掲載する方針のようだ。
ついに来たか。時代の流れである。

欧米の新聞記事は電子版でも結構長いものが多い。なかには、記者の意気込みを感じさせるものもあるし、背景を読み間違えないように気を使っていそうなものも。
それに、もともと以下のような情報が加わっていることが多い。読者の判断力を高めようということだろうか。ただ、現実には、インパクトを高める仕掛けとして機能しているだけの気もするが。
 ・関係者や影響を受けた人々の証言的発言、
 ・その解釈の仕方についての、専門家の見方の紹介、
 ・事実確認のためのソースに関する話、等々。
従って、信用するから、簡単に要点だけ伝えてヨとなるのはわかる。グダグダ読んでも、時間を割いたわりには、得るところほとんどなしと感じれば、サマリーニュースの方が有難い。
間違えてもらってはこまるが、新聞の一面に掲載記事見出しを出すような話とは訳が違う。気になる記事を選んで読むというのではなく、速報そのもので全体の流れがわかるようにしてもらおうということ。読む方としては、その方が全体観が生まれ易い可能性もあるし。

すでに、紙の新聞のニュースを読まなくなっている人だと、そんな感覚がすでに身に着き始めているのではないか。Googleのニュースタイトル一覧を自分好みに表示したりして、まずはそれを眺め、今、世の中はどう動いているか感を得ようとする訳だ。たた、どうしても質的にイマイチ感はあるし、タイトル以外は冒頭の数行表示なので、ザックリと眺めると言っても限界がある。それでも、その状況に慣らされてきた訳である。
fastFTは、それを質的に一歩進めるものと言えそう。

この流れは、記事に含まれている余計な情報に触れたり、所謂ベタ記事を読むチャンスを失うことを意味する。下手すれば、大きな流れを自分で感じ取ることができなくなり、fastFT編集者の見方にそのまま染まってしまうことになる可能性もなきにしもあらず。従って、読者としては、今迄以上に、コメントや関連ブログにも目を通すという習慣に染まっていくのだろう。
その上で、識者や記者が書いているコラムを覗いていくことになろう。

要するに、FTは、そういう知的な読み方をしそうな層を顧客にしているということか。これは、他の新聞には真似できないかも。
しかも、グローバルにそんな顧客を掬い上げてしまおうと頑張っていそう。
fastFTは24時間体勢だから翻訳版提供は難しいと思うが、主要記事についてはすでにかなり広い言語に対応しているようだ。南米スペイン語圏、ブラジル、中国、ドイツ、インド、インドネシア、韓国、日本に加え、ついに、オリンピック開催国との下馬評高きトルコまで。
そういえば、紙の方は、赤字続きだったドイツ語版を2012年12月に廃刊させたようである。
  Financial Times Deutschland Folds After 12 Years of PinkLosses bloomberg 2012/12/07

FTとWSJには、目を通さない訳にはいかないが、どのように読むか、そろそろ考え時かも。


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