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■■■■■ 2014.8.23 ■■■■■


土砂崩れ災害対策の転機

航空写真からみた、広島土砂災害は凄まじいの一語に尽きる。この一帯すべての沢が崩壊していそう。

降雨強度三次元分布図は衝撃的。
安佐南区と安佐北区の山側を、100mm/時の「バックビルディングタイプの線状降水」が襲ったというのである。これでは、台風の降雨ですでに地盤が緩んでいたのだから、ひとたまりもなかろう。

時間的推移で見るとこうなる。
 19日午後9時25分 大雨警報発令
 20日午前1時15分 土砂災害警戒情報発表
 20日午前3時20分 生き埋め119番通報
 20日午前3時30分 災害対策本部設置
 20日午前3時50分 記録的短時間大雨情報発表
 20日午前4時20分 根谷川氾濫
 20日午前4時20分 安佐北区4地区に避難勧告
 20日午前4時30分 安佐南区山本に避難勧告

日本は土砂崩れだらけの国土なのだと思わず嘆息させられる経緯である。

都会生活に浸ってしまうと、土砂崩れリスクの実感がさっぱり湧かないが、1年ぶりに、同じ山道を歩けば、そこいらじゅうが変化していることに気付く。手入れなかりせば、道など無くなってしまうのがすぐにわかる。
人が住む地域でも、山がちな場所だと危ない所だらけ。
昔、山の家に泊まったことがあるが、数日前に雨で直径50cm大の石がころがり落ち、部屋を直撃したばかりだった。たまたま人がいなかったから大事故にならず、幸運としか言いようがない。
そうそう、ご存知のように、山へ行けば必ずぶち当たるのが、林道の土砂崩れ補修工事。これが地域経済を下支えしているのは言うまでもない。
土砂崩れこそ、日本の国土の実相そのもの。

統計情報によれば、年間1,000件ほどの土砂災害が発生しているというが、それはヒトの目が届く、生活にかかわる地域での話だろう。
日本の国土は土砂崩れや、崖崩れは、珍しいものではないのである。

東京では、神奈川、千葉辺りが特に多いと言われているが、それは、危険な崖そばや、丘陵を軽く崩しただけの地形に、居住地が広がってしまった結果と見てよかろう。
しかし、自治体が防災対策を繰り広げているから大きな問題が発生していなかったにすぎまい。
しかし、これを首都圏以外に敷衍する訳にはいくまい。
人口密度からみて、まんべんなく対応するのは無理だからだ。たとえ、都市化した地域があろうと、そこだけに注力する訳にもいくまい。どこかを重視すれば、他は軽視するしかないのだから。

問題は、そうなっているにもかかわらず、それを公言しないことにあろう。できないにもかかわらず、「頑張ります」の世界。これが問題の始まりではなかろうか。

気候が熱帯化すれば、必然的にスポット的豪雨はおこるもの。すでに東京では、ほんの隣町は快晴だというのに、とんでもない雨量の雹が降ってきた地域もある位。そんなものを予測できるとは思えまい。
   「今夏は、不安定な気象か」 [2014.7.9]
いくら高度な雨量計測システムを完備したところで、今回のような状況を察知するには程遠い仕組み。

豪雨が夜間だったため、危険察知は難しかったが、昼間であっても上記の警報タイミングでは避難が間に合ったかはなんとも言い難いところ。警報が出ていなくても、単純な予想で早期避難というのが危険地帯の大原則である。
(湧き水が出たり、川や井戸の水が濁ったら即避難。河川に樹木が流れてきたら、上流は一大事なのは素人でもわかる。地鳴りでも始まったら、ただただ遁走しかない。)
土砂崩れ災害は局所的なことが多く、警報のメッシュは荒すぎる。従って、警報発令がなかろうが、自分の判断で避難を決めるのが一番。しかし、それを肯定する発言はタブーなのである。そのような「勝手な」判断を下すと、噂を流した輩と叩かれること必至の社会だからだ。当然、誰も、口に出さない。ここら辺りは昔から大きな齟齬があるのだが、皆、知らん顔できた。
そろそろ、そういう訳にいかなくなってきたのでは。

(source)
2014年8月20日の広島県における大雨土砂災害 広島市に局地的大雨をもたらした降水システムの立体構造 (独)防災科学技術研究所 2014年8月21日
「土砂災害の危険箇所は全国に52万箇所!」 内閣府 "暮らしのお役立ち情報"(平成26年5月22日)
広島市、土砂崩れ発生後に避難勧告 15年前の教訓生かされず 2014.8.20 19:13 産経新聞

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