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■■■■■ 2014.11.7 ■■■■■


熊災害への対応姿勢明確化が必要では

日本クマネットワーク(JBN)によれば、「2014年本州でツキノワグマ大量出没の前兆あり」とのこと。「いったん大量出没が起こった場合、クマが冬眠に入る11月下旬から12月上旬頃まで出没は続くと考えられます。」というから、要注意である。2013年、ブナの結実は豊作だったから、子育てが盛んだった筈。ところが、2014年は一転して、凶作〜皆無の地域がほとんどらしい。
どうなるかは、自明。

2012年も大出没だったというのに。
  「クマ君はどうなるのだろう」 [2012.8.29]
  「2010年の晩秋は熊だらけ」[2010.11.15]

奥多摩でも、目撃情報が目だっているようだ。
  ツキノワグマ目撃情報件数推移
   @奥多摩ビジターセンター
[→]
 ------9月---10月
 2014--8件---10件
 2013--2件----0件
 2012--1件----7件
 2011--2件----1件
 2010--2件----3件
 2009--1件----3件
 2008--3件----5件

実態はこんなものではないように思うが。

現実に、9月28日には、川苔山[1363.3m]で単独行の男性がクマに頭を咬まれ、動けなくなり救助された。おそらく、緊急事態として扱われただろうから、ヘリ出動だと思う。大事件と言ってよいだろう。

この辺りは都会から交通至便なので、一般ハイカーだらけ。ヒトに滅多に合わぬ藪漕ぎ道ではないのである。おそらく、油断していて、クマ回避行動をとっていなかったのだと思われる。
クマは、ヒトの動きを感じる場所はできる限り避けるらしいが、この山では、生憎とそれが上手く働かない。頂上に繋がる道が多いから、クマも人道を通る習慣ができている可能性が高いからだ。ハイカーとしては、一人で静かに歩きたいし、湧水際を通るのもこのほか嬉しいとなろうが、それはクマも同じ。突然の鉢合わせはあってしかるべきだろう。

そのような地域でなくても、たいていの山には、熊がよく使う通路があるもの。そして、気候が秋めいて来れば、クマはドングリを食べに朝から林を歩き回り、沢に集ったりすることが知られている。従って、そういう場所と思しき付近を通るなら、それなりの用意は鉄則である。

ツキノワグマはいたって臆病なので、驚かしたりしなければ、襲われないという説明がなされているが、小生は信用していない。
古くから伝わる話を聞く限り、そんな性状ではないと思うからだ。
まず、成獣の♂は極めて獰猛。ヒグマほどではないようだが、犬と一緒でないなら、縄張りに入ってしまったら襲われると考えた方がよいと思う。
ただ、ハイキングコースや登山道辺りに成獣の♂が出てくることはほとんどなかろう。深山を棲家にしている筈だからだ。その生態はほとんど知られていないと思われるが、単独生活者なのは間違いない。つまり、オス-オスの縄張りは重複しないが、オス-メスは重なっているということ。
このことは、繁殖時期を除けば、メスはオスにできるでけ出くわさぬように始終用心しながら動き回っていることを意味する。出会えば、なにをされるかわかったものではないからだ。
つまり、ヒトが遭遇するのは、ほとんどの場合、餌探しに熱中して、ほっつき歩いているメスか成獣前のオス。できる限り成獣の♂と接触したくないから、ヒトと出会っても同じ態度をとることもあろう。その仕草が臆病に見えるかも知れぬが、そのような性情の動物とは思えぬ。

従って、出会ってしまえばどうにもならぬ。

メスなら、成獣の♂と出会い、逃げると拙いとなれば、軽く脅して、さっさと逃げる手を選びそう。しかし、「軽く」といっても、力は強いから、大怪我もありえよう。もし小熊でもいれば、それでは済むまい。巨大な成獣の♂に果敢に攻撃することが知られているからだ。命を奪われる可能性もありえよう。
厄介なのは、幼い成長中のオス。オス v.s. オスの争いを始めるべく力を蓄え中なのだから、殺人的な攻撃をしかけてくるのでは。

ともあれ、出会ってしまったら、攻撃体制へのスイッチがONが入らないように対処する以外に手はない。たまたま、当該個体が「敵意」を感じていなかったら、幸運というだけ。防ぐ方法などなきに等しいのでは。
小生は、クマと会わないように注意してかかる以外に対処策は無いと見る。

しかし、それも、そろそろ限界が来ているということではないか。
ニュースをみると、北アルプス山麓や飛騨地方では相当な数のクマが出没しているようだし。
このことは、ついにクマがヒト慣れしてきたということでは。つまり、出会うのは当たり前の時代に突入しつつあるのではないか。
なにせ、奥多摩では、早朝に、クマが電車の線路際道を歩いていておかしくないと言う人もいる位なのだから。

想像するに、成獣の♂の縄張りが、ヒトに出会わなくてすむ森林領域をすべてカバーしてしまったということではなかろうか。言うまでもなく、熊狩りのプロの数が激減したからである。
そうなれば、多くのメスや若いオスは押し出されてヒトの居住領域で生きていくしかなくなる。その上、樹木伐採を減らし、農耕地周辺の疎林・藪化が進んでいる。クマにとってはまさに好環境であり、進出して当然だろう。

こんな風に考えれば、川苔山山頂付近での人身「災害」は、決して例外的なものではなく、これから増えていく典型例と考えるべきだろう。
そうだとすれば、そろそろクマ災害対応の方針を明確にする必要があろう。「クマを護りましょう」という曖昧な姿勢を続けるのはもう限界だと思うが。

(記事) 目撃情報 過去5年最多ペース クマ 奥多摩で37件、先月末に登山者大けが 2014年10月29日 東京新聞
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