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■■■■■ 2015.1.23 ■■■■■


ようやくホワイトカラー・エグゼンプション

「ホワイトカラー・エグゼンプション」がようやくまとまったらしい。
思った通り、限定版。
小泉政権時代の「特区」のようなもの。線香花火に近いが、当時は完全に潰れたから、ゼロとの比較なら無限大という評価をする人達もいるかも。この程度では、経済発展に寄与するとは考えにくい。

もともと、自民党とは、税金バラ撒きで、地方での新陳代謝抑制をしてきた勢力。この仕組みが未だに集票マシンそのものだから、如何ともし難い。
労働政策にしても、なにはともあれ、地方のコミュニティへの副作用無きようという配慮しか頭にない筈。

もっとも、野党の自称リベラル政党にいたっては、副作用を生む労働政策に対しては絶対反対。当たり前だが、産業の新陳代謝に繋がりかねないからだ。自らの支持基盤が揺らぐ動きを止めるべく必死で動くのは当然である。そんなこともあり、今や、大バラ撒きの、衰退貧困化を狙う勢力と化している。
日本企業に競争力がある時代は、それでも、どうということはなかった。ガバナンス力は欠けていたとはいえ、世界に冠たる新事業展開意欲は誰もが認めるところだったから。

今や、それがゆっくりと逆回転中である。

多くの日本企業が競争力を失いつつある。実質的に、資本コスト割れの企業も少なくない。しかも、回復見込み皆無とくる。倫理感無しの、ガバナンスゼロ企業だらけになりつつあるのが現実。
そこまで行かなくても、過去の遺産を喰い潰しているにすぎない企業が、日本の産業の過半を占めているのは明らか。

問題はそこだけではない。
カネがあっても、意欲無しの企業が生まれつつあるからだ。椅子取りゲーム的官僚システムが完備され、「やりたい」とか「やらねばならぬ」新規事業が思い浮かばない時代に入ってしまったのである。
それもわからないではない。
新規事業に必要な人材の枯渇は経営陣が一番よく知っているからだ。ゼネラルな人材育成で人員余剰問題に対処してきた張本人なのだから当然である。お蔭で、閉鎖的風土が固定化してしまい、開放的な風土で生きる有能な人達と協同して動くことが一番苦手とくる。
こんなことを続けて行くことは無理と、口では言っても、なにもできないのが現実。

しかし、時間的余裕はもうないのである。

若年労働者は決定的に不足しており、全労働人口も減っていくからだ。国内顧客も老齢化している上に多様化が進んでおり、この市場をバネに海外展開という流れが通用しなくなってきた。働いている人達の質も、すでに海外と五十歩百歩で、量になればとても勝負になるまい。・・・常識で判断する限り、今のままでは競争力はさらに低下していくことになろう。知恵を生み出すことで生産性を上げる道しかないことになる。

ところが、今の日本企業は、一部を除けば、それに一番向かない体質のままである。わかっていても、それを変えるのではなく、そのママで、ギリギリまで頑張るという状況。最悪である。
エリート教育を見ても、それに合った動きになっている。ガツンと一撃の教育は皆無で、マネジメントツール習得やプリゼンテーション力向上にばかり注力。日本の現状を鑑みると、これらは創造性ある人材を殺しかねないのだが。

イノベーションを生み出す社会へと変えるには、新しい雇用の仕組みは不可欠。
しかし、この流れを阻止する動きだらけ。
最低賃金向上、正社員化、など典型。・・・麻薬取締を徹底強化し、社会を不安定化させたりする、真面目なだけで無能な政治家が打ち出す手の政策と言えよう。日本の状況を考えれば、新規雇用を減らし、新規事業化を難しくするから、産業の新陳代謝を遅らせる効果しか生むまい。

今のままなら、おそらく、この先も、IT投資が日本企業にプラス効果をもたらすことはない。皆が期待するロボット産業にしても、規制だらけで、大胆な登用ができないで終わる可能性の方が高い。

伸びている社会の将来像を思い浮かべてみれば、そんなことはすぐにわかると思うのだが。

例えば、斬新なコンセプトのロボットを市場で立ち上げるために、急遽、様々な分野のプロ数百人を雇用し、数年間、みっちり働いて、成功裏に解散する世界。間違ってはいけないが、そのような法制度ができて、おカネが唸っているから可能になる訳ではなく、素晴らしいと思うプロジェクトには、優秀で意気軒昂な人々が我先に集まってくる時代が到来するということ。
年功序列のゼネラリスト正社員ばかりの組織で成果が生まれるか考えてみればわかりそうなもの。ギルド職人を育てるだけで済む官納業種とは違うのである。

ただ、こうした未来像から単純投影して、現実政策を立案しては拙い。現実を踏まえて、どこから手をつけるべきか、何を突破口にして、どのように切り拓いていくべきか、シナリオを作成する必要があろう。もちろん、その土台には、現状を延長しただけならどうなりそうか描いた絵がある訳だ。だからこそ、場合によっては、未来の姿に反する施策も必要になったりする。それこそが優れたガバナンスなのである。

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