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■■■■■ 2015.2.8 ■■■■■


理解し難き「農業」政策

自民党は農業をどうしたいのだろうか。
様々な手を駆使したバラ撒きによって、農村コミュニティ維持方針を貫く政党と思っていたが、よくわからなくなってきた。

と言うのは、「自民 農協改革 会計監査権限で調整続く」[2月3日 17時51分 NHK]とのニュースが流れたから。
こんなところを弄ったところで、単協の動きが変わる時代は大昔の話では。一体なにをしたいのだろうか。
全中が「農家の経営の自由度を阻害したことはない」と主張しているそうだが、それはある意味当たっているのでは。政府のように予算で中央が管理する組織とは違うからである。全中の問題はそこではなかろう。
誰でも知っているように、各地の単協は、真似ッコ事業を、呆れかえるほど多数手がけている。どう見ても、イイ話を耳にすればすぐにとびつくだけのこと。もちろん、民間企業の事業センスなどあろう筈もない。
こんなところに、公認会計士を登用したところで、なんの意味もなかろう。杜撰な管理はいくらでも指摘はできるが、それで食べている人達が当座こまるだけ。どの道、政府にブル下がって食べようという人々なのだから。改革したいなら、単協レベルで、有能なビジネスマンを投入する以外に手はなかろう。しかし、どうもその方向には進ませたくはないようだ。

農業特区も訳がわからん。丁度一年前、今後2年間で、残された岩盤規制をすべて打ち抜くと大見えを切ったが、未だにナンダカネ状態。
実験なら、抜本的なルール変更に踏み込むのが普通だと思うが、その手のものではないようだ。

驚いたことに、農業の大規模化でコスト競争力向上とブランド力獲得という話らしい。失礼ながら大笑いである。
数少ないとはいえ、日本の農業分野には、事業化精神の塊のような農家は存在するのである。(資本収益率でも優良中小企業に引けをとらない。)ところが、この手の話が始まると、その方々は早速逃げ出すのが普通。自分達の利益の源泉や、競争力基盤がなんたるかを知りつくしているからである。できる限り目立たぬようといのが、こうした農家の姿勢だから見えにくいが。

ご想像がつくと思うが、政府の施策とは、「成功物語」を真似よという話。そこに様々な形でおカネが流し込まれるだけ。お蔭で、せっかく苦労して作り上げた儲かる事業がメタメタにされる。その前に方向転換を開始するだけの話。ずっと、それで来たのである。
自民党の農業政策とは、産業政策ではなく、バラ撒きによる農村コミュニティ維持政策だし、野党はそれに輪をかけたような発想で臨むのだから、どうにもならない。
日本の農業を成長産業にしたいなら、事業家が活躍し易くなる場を提供することが肝だが、真逆ということ。

例えば、供給過剰にもかかわらず、トンデモ高額が続いている米市場を考えればわかる筈。価格下落は必然だが、零細農家とは農業で食べている訳ではないから、赤字だろうがヘイチャラ。地域コミュニティメンバーとして認知してもらい、生活上メリットを得られればそれで十分なのだから。
このような競争相手とコスト競争してどうするつもりなのだろう。経営原則からすれば、単純な大規模化はリスクの塊のような事業。誰も手をつけようとしないのが普通。
敢えて手を出すとしたら、そこにはなんらかの特別な儲けのタネがある場合のみである。

従って、「米の輸出を狙え」とは、沈没路線と言うことになろう。
すでに述べたが、稲作領域でも、事業家魂を持った人々は存在するのである。農業で高収益を実現して来た人達である。
当然ながら、とっくに、高く売れる輸出ルートなど開発済みの筈だ。・・・カネをばらまくから、そんな情報を他の農業従事者に公開せよというのが、輸出振興策の実情。
今迄の教訓から言えば、またしても市場は政府によって潰されるのである。

特に、輸出は深刻な問題を孕んでいる。政府の振興策が始まると、輸出不適米が流出する可能性大だからだ。
と言うのは、政府はそのような米の存在を言い出せないからである。従って、仕掛けられれば、ある日、突然にして輸出市場壊滅ということも十分ありうる。極めてハイリスクな振興策と言わざるを得ない。
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