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■■■■■ 2015.2.17 ■■■■■


未だ1%成長路線では

2月16日発表の、2014年第4四半期のGDP速報値は、事前予測中央値の実質年率3.7%にはるかに届かず、2.2%。素人感覚では、三菱総研予測の1.9%辺りでは、という感じだったが、それを若干上振れ。
数字はともかく、経済状況ははっきりしているのではなかろうか。
 ・\120/$なので、輸出は"若干"伸びる。
   -設備も労働力もタイト
   -製品輸入メーカーが増大中
   -競争力喪失企業の輸出拡大は限定的
   -米国以外の市場は減速見込み
   -中国はそもそも生産設備過剰
 ・原油安で"若干"のプラス効果あり。
   -円価格に直せば、安価は小幅
 ・需要の先取り喰い潰しのオフセットには至らない。
   -民間住宅の減少は暫く持続
    (建築・土木労働力不足中)
   -耐久消費財支出の減少持続
    (新規住宅着工件数減退では成長見込み薄)
 ・在庫圧縮は一服感あり。
 ・企業設備投資は"若干"増加する。
   -現状維持的な投資は回復
 ・家計支出はようやくにしてまともに増加する。

予想が外れたのは、多分、以下2点によるもの。
 ・年末にかけ2つの効果で消費旺盛化と勘違い。
   -ガソリン/燃料価格低下効果への過度な期待
   -ボーナス増加の数字を囃したマスコミ効果
 ・設備投資活発化との勝手な読み違い。
   -機械受注増加数字だけの期待
    (輸出拡大チャンスと見て、積極国内投資?)
    (経営者が、国内消費盛り上がりを確信?)

・・・素人からすれば、年率0〜1%ラインで進んでいるとしか映らないが。
実際、2014年は結局のところ、実質ゼロ成長だった訳で。
なんら政策的に褒めるべきもの無しということでは。おっと、拍手喝采モノもある。来日旅行客の持ち帰り購入物品の非課税化。ようやくにして、国内バラ撒きでない方策を始める気になったようだ。これで、観光立国への一歩を踏み出したことになる。

第4四半期段階で、家と耐久消費財を除けば、消費税増税の影響はほぼなくなっている筈。「個人消費の伸びが遅れている」のではなく、常態に復帰してこの程度と考えるのが自然だと思うが。未だに、貯蓄率プラスの時代感覚で眺めているのと違うか。
老齢化と給与明細のボトムラインを考えれば、消費水準は決して低いとは思えない。「収入の動きを示す雇用者報酬は---物価の影響を除いた実質ベースは0.5%減と4四半期連続のマイナス」だったというのだから。まあ、「物価の動きを総合的に示すGDPデフレーターは前年同期比で2.3%上昇し、前期よりも上昇幅が拡大」したのだから、ここら辺りの数字になって当然では。
(もっとも、このような荒っぽい数字で家計状況を推定するのは、どうかと思う。といっても、誰でもが知る統計数字以外に参考となる指標は提供されていないのである。カルト的に「正義」論を大声で叫ぶ商売人はいくらでもいるが、面倒な分析に精力を注ぐ学者はいないのだろうか。)

要するに、相変わらずの政府のバラ撒きで経済を支えている状況はなんら変わっていない。「公共投資は0.6%増と3期連続で増え、政府の経済対策が経済を支えている構図」とか。

そもそも、東京で労働需給がタイト化したのは、2014年冒頭。明らかに2013年の財政梃入れ政策と円安によってグローバル競争力劣化企業が一息ついたことによる効果。
その結果、短期的には経済成長が生まれるが、そのメッキがはげ落ちれば、元の木阿弥。

だいたい、政府が民間に賃上げを要求するという、国家資本主義的な動きを見せる政権が経済成長を実現できるものか考えてみればわかる筈ではないか。
経済成長の牽引車を欠く状態が続いているというのに、突然、「分配論」を始めるのだから。未だに、規制と分配適正化で経済成長実現を夢想する野党と同じ穴の貉と言えまいか。
驚かされたのは、野党党首の見方。日本が成長路線に乗っていると見ているのかも。・・・政府の方針には「成長の果実をいかに分配するかという視点が欠落している」というのだから。

分配論を始めれば、経済はますます悪循環に陥るというのが現実であることに目をつむり、カルト的な理屈で経済運営を図ろうというのだから、上手く行く訳がなかろう。
なにが重要なのかは、遠の昔にわかっている筈である。・・・リスクを踏まえた、果敢な投資を進める企業や、如何に労働力を活用するか頭を回転している人々を増やすこと。これなくしては、良くてゼロ成長の時代である。
ソリャ、新しいことに挑戦するのだから、既存組織との軋轢は避けられないし、副作用は必ず生まれる。しかし、それを避ければ、全体が沈没していくだけ。皆で美しく滅んでいく路線である。
どこまで、副作用を容認しながら進めるかが、為政者の能力そのものということ。

こんな時に、ピケティ理論とくる。野党は、この流行に依拠できるとばかり大喜びのご様子。これで、与野党揃って「分配論」を競うことになる。政府によるバラ撒き賞賛が始まる訳だ。
といっても、日本政府にできることは限られている。すでに財政は実質的に破綻しており、年金・医療・介護など持続不可能。生活保護もどこまで面倒を見ることができるかわからない状況。
とは言え、社会には慣性力があるので、「破綻」の表面化は、なかなかやってはこないので、できる限りのバラ撒きに精を出す政治が続くことだろう。ある日突然の悲劇開始まで。
そういう流れを良しとするのが、日本の風土ということか。

(日経記事)
「GDP年率2.2%増 10〜12月実質、増税後初のプラス」 2015/2/16 11:52
(ロイター記事)
「実質GDP10─12月期、3期ぶりプラス成長:識者はこうみる」 2015年02月16日 10:07 JST
「菅官房長官「個人消費の伸びに遅れ」、予想下振れのGDPで」 2015年02月16日 12:28 JST
「首相「報われる社会を実現」」 2015年 02月 16日 15:47 JST

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