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2006.6.28
 
 


W杯に関する議論

 ようやく、W杯の話が一段落。と言っても、まだゲームは終わってはいないが。

 やはり、日本チームは1次リーグ突破を果たせなかったか。残念。
 ・・・といったところが、一般的な感想だろうか。

 ドイツ・ワールドカップ中継番組は高視聴率が続いたそうである。
 正確に言えば、“WM06 DEUTSCHLAND”の観戦と言うより、日本代表チーム出場試合に関心が集まったということ。Gruppe F 以外の試合には、それほど人気があった訳ではなさそうだ。

 それでも、大画面テレビは売れに売れたというから、有難いイベントである。この経済効果だけでも、選手達に大いに感謝せねばなるまい。

 それにしても、日本チームはシュートがさっぱりだった。
 “強豪にはシュート力があり、強く、速い選手が多い”(1)のがいかにも対照的だった。実力の差なのであろうか。

 しかし、体力がない日本人が一番嫌う、炎天下の試合が連続したことも大きく影響したのは確かである。

 “It's a crime that we had to play in this heat again,”
 “Our last game was at 3pm too but they want to do it that way for television. I guess business is business.”(2)
 ・・・とジーコ監督が語るのも、もっともだ。おおきなハンディを背負い込んだのは間違いあるまい。

 メディア優先方針に抗して、過酷な試合日程を調整させ、勝つ確率を高めようと動く人はいなかったようだ。

 もともとFIFAという組織は、金がからむ領域では、胡散臭さがつきまとう。
 チケット流通など最たるものである。どう考えてもチケットがさばけそうにない組織や、チケットに興味がなさそうなスポンサーにチケットを大量に流す仕組みを温存し続けるのだから、呆れかえる。なにせ、チケットを横流ししてポケットマネーを手にする理事がいる組織なのだから、どうにもなるまい。
 従って、チケットが入手できなかったサポーターが売り手を探す姿はいつまでも続く。(3)

 ところが、試合は膨大な空席のままで行われるから、入場できなかったサポーターは怒る。

 もっとも、そんなことが気になるのは、日本位かもしれない。

 日本と違って、米国では、ワールドカップに関心を持つ人は少ないようだ。メディアもこのイベントを醒めた目で見ている。

 所詮は、酒と乱痴気騒ぎではないかと言わんばかりに、裏でおきていることを暴いた。(4)
 どこまで本当かはわからぬが、この1ヶ月間の祭典に、4万人もの女性/子供が人身売買され、売春のためにドイツに送られてくるそうだ。

 この見方には、人種のモザイク模様を是とする欧州の方針に対する嫌悪感がありそうだ。とはいえ、欧州の底辺社会は隠れていて、我々にはさっぱり見えてこないから、現実はこんなものかも知れない。

 そんな社会でのワールドカップである。

 もともと、英国式サッカー観戦とは、ビールを一杯ひっかけてから、スタジアムに行って歌い騒ぐというスタイルだと思う。ラグビーとは違い、羽目を外すお祭りもかねているのだ。Hooligan は流石に極端だが、人種と階級で分かれる社会のなかで、皆で大騒ぎを愉しむことができるイベントは少ないから、サッカーでの大騒ぎは大目に見られてきたのだと思う。
 日本のサポーターがお行儀がよいと言うより、日本には、サッカーは純粋スポーツとして入ってきたから、そんな風習がなかっただけのこと。

 ところで、発展途上国からワールドカップを見れば、又、違った姿となる。

 “Fifa has 207 members; we have only 191. ”
 ・・・Annan国連事務総長の言葉である。(5)

 “But there are far better reasons to be envious.
 First, the World Cup is an event in which everybody knows where their team stands,
 and what it did to get there.
 They know who scored and how and in what minute of the game;
 they know who missed the open goal; they know who saved the penalty. ”

 世界が一つの家族のようになって、問題解決に当たる姿を、サッカーのなかに見つけている人もいるのである。

 そんな感覚を共有したいところではあるが・・・。

 --- 参照 ---
(1) http://www.asahi.com/sports/update/0623/237.html
(2) “Japan boss angry at match timings” BBCニュース[2006.6.18]
  http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/football/world_cup_2006/teams/japan/5044540.stm
(3) http://www.sueddeutsche.de/sport/weltfussball/special/710/65645/index.html/sport/weltfussball/artikel/815/78737/article.html
(4) Katherine Chon and Derek Ellerman“Soccer With a Side of Slavery” Washington Post [2006.6.10]
  http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/09/AR2006060901477.html
(5) Kofi A. Annan: “Meanwhile: At the UN, how we envy the World Cup”International Herald Tribune [2006.6.9]


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