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2013.8.6
 
 
 

フクロウ文化について…

古代ギリシャ、アクロポリスのアテーナイにはパルテノン神殿があり、守護神として女神アテナが祀られていた。その従者/使者/神鳥がglaux(コキンメフクロウ)だった。女神だから、おそらく、当初は農業の神だったと想像するが、国家間の戦乱のなかで軍神となり、覇権を握るようになってからはオリーブを飾る平和の象徴神かつ都市守護者と見なされ、さらには学芸神へと変化していったのだと思われる。当然ながら、フクロウのイメージもこれに伴って変化した筈である。
その後、アレキサンダー大王時代になって、フクロウは知恵の神あるいは森の賢者として定着した模様。そして、ローマが力を持つようになると、フクロウは女神ミネルバの従者とされる。・・・こんなところが、欧州でのフクロウ観の底流。
もっとも、神秘イメージがあったから、中世は魔女のお供にされたりと、必ずしもずっと良好なイメージが持たれていたとは言いきれないが。

それにしても、何故、女神の従者がフクロウなのかという点が気にかかる。アテナは瞳が特徴的とされているそうだから、同じ特徴ということでフクロウが選ばれたのか、あるいはそもそもフクロウのような眼と持つ女神だったのかも。なにせ、フクロウの眼は正面向きで見開いたまん丸形状。首が機械的に回転するから、M型お面の穴から誰かが覗いているように見える。羽音もたてずに飛ぶそうだし、神秘的な印象を持つ人だらけだったということか。
そうそう、ヒエログラフではフクロウはその「M」だ。これは眼の音「me」ということかも。
 → 「眼で見ると、日本語は海洋民族語」 [2011.1.27]

一方、日本だが、古事記にはフクロウもミミズクも全く登場してこない。その後もほとんど無関心。と言うか、恐ろしいので触れたくなかったという見方が妥当だろう。闇夜の森は文化的生活の対極にあり、そこに精神的な怖さを感じていたということでもあろう。
  山深み け近き鳥の 音はせで
  物おそろしき ふくろふの声
   [山家集(大原の寂然との贈答歌)]
ただ、江戸期になって語呂合わせで「不苦労」ということで、疱瘡除けの朱色の「赤梟」張子玩具が流行ったことはあるようだ。老人社会になった今では「福老」で売っているかも知れぬが。
ともあれ、西洋的なフクロウイメージ伝来までは、えらく嫌われていた鳥と見てよさそう。
その理由は、日蓮が取り上げた言葉でわかる。・・・「梟鳥が母を食、母これをすてず。」法華経では罪深い鳥とされているから、それほど驚く話ではない。ただ、平安朝には反アイヌ感情があったに違いなく、そのため増幅された可能性はあろう。狩猟生活者主体のアイヌ民族にとっては神鳥だったに違いないから。
しかし、仏教信者のなかには、特定の動物だけを悪とみなすのはどんなものかと考える人も出てこよう。特に、日蓮の影響が強い場合。
【秩父神社】
 この神社の創建時御祭神は八意思兼命。
  (国造の知知夫彦命の祖先神)
 その後、13世紀に秩父氏が北辰妙見菩薩合祀。
  (宇宙根源の北斗七星神)
 八意思兼命は智恵の神とされているらしい。
 そこで、本殿北側に「北辰の(見返り)梟」の彫刻装飾。
【雑司ヶ谷の鬼子母神】
 この尊像は16世紀頃に祀られたようだ。
  (日蓮宗の外護神)
 安産・子育にご利益ありとして崇められていた。
 「すすきみみずく」はそこでのお土産品。
 もちろん物語がある。・・・
  貧しい母子家庭で母親が罹病。
  女の子は快癒祈願のお百度参り。
  周囲に生えているすすきでミミズクを作るようお告げあり。
  それに従うと、参拝者にお守りとして売れるようになる。
  薬代ができて母親も治癒という次第。
 この辺りは鷹匠管轄の将軍家お狩場。
 フクロウも珍しくなかったということか。
【宮沢賢治:「二十六夜」】
 大正12年頃の作品。梟のお経話として知られる。
 肉食の罪のお説教で、その罪は死んでも消えんゾということ。
 だから菜食ダとなるが、それではフクロウ君は生きていけない。
 この辺りを考えさせるのが肝。
【岡山市のお寺】
 こちらは現代。
 日蓮宗の顕本寺(1881年建立)は「ふくろう寺」と称している。
 本堂大修理の際に屋根裏に2羽の幼鳥がいたため。
 そこで、世界のふくろう絵天井にしたという。


日本では、プロフクロウ的な姿勢は例外的だったが、西洋思想が入って来た途端に、イメージは180度転換したようだ。森が消えたせいもあるが、今や、恐ろしい鳥と感じる人など稀。動物園では、惹きこまれる鳥の類と言ってよかろう。じっくりご対面の方は少なさそうだが、短時間にもかかわらずたいていはビックリしたとの感想を漏らすようだ。なにせ、2つの目玉がこちらをじっと見据えているだけかと思いきや、突然、仮面的な顔をグルッと回すのだからソリャ誰でも驚く。このことは、見かけによらず神経質ということかも。

(読んでないので、参考本として記載するのは気が引けるが、一応。)
 飯野徹雄: フクロウの文化誌―イメージの変貌 中公新書 1991
 [註] 故飯野徹雄氏は豊島ふくろう・みみずく資料館の名誉館長。
   (遺伝学者生活の傍ら、ふくろう・みみずくグッズ収集にも注力)
(フクロウ・ズク系の日本における主要な鳥)
 フクロウ[梟] 北方系。ユーラシア全域に存在。
   [金目−] ユーラシア北米の針葉樹林帯棲息。大雪山だけかも。
 シロフクロウ[白−] 雪のよう。北極育ちか。梟だが、耳羽有り。
 シマフクロウ[島−] 魚食。北方の島棲息。
 ミミズク[耳木菟] 角のような耳。耳羽「突く」がツクの語源らしい。
 コミミズク−[小耳−] 短耳というか、耳羽は目立たない。
 コノハズク[木葉−] 枯葉色。仏法僧啼き。オオコノハズクが見かけるタイプか。
 ワシミミズク[鷲−] 鷲色。
 アオバズク[青葉−] 青葉頃渡来。茶系鷹色。ズクだが耳羽無しとされる。


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