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2014.7.4

秋津遊び

「秋津」のことを書きたくなった。
古事記上巻の最後、高千穂と隼人辺りを、のんびりと読んでいるせい。盆地に注ぐ渓流にはわんさか赤トンボが群れるから、ついつい。

古事記には、太安万侶流の歴史観がちりばめられており、なかなかに読ませる。しかし、現代人には簡単にわからぬから、えらく難儀な作業ではある。

何故にアキツに関心を持つかといえば、上巻冒頭で本州のことを「大倭豊秋津島」と書いてあるから。
この「秋津」がトンボだとの証拠がある訳ではない。後代の話からそう見るのが妥当というにすぎない。
 [古事記]
 (1) 国見で、秋津の交尾の如しと表現。
 (2) 東吉野村辺りの野に狩りの行幸。
    腕に喰いついた虻を蜻蛉が食べてしまう。
    そんなことで、大和の国を蜻蛉島と言うのだ。
 [万葉集:376]
 (3) 秋津羽之 袖振妹乎 珠匣 奥尓念乎 見賜吾君
(つまらぬことを確認しているように映るが、こうした細部にはご用心である。なにせ、用語も統一されていないし、いかにも矛盾している記述も平然と登場するのだから。現代人からすれば、とんでもない常識外れの書。しかし、そうだからこそ、当時の読者には状況が手に取るようにわかったのだと思う。成程、そういう風に歴史は展開したのかと。それを読み取る必要がある訳である。)

尚、神生みでは、速秋津比古神・速秋津比売神が登場するが、[別名:水戸神]となっているから、ここでの秋津がトンボかどうかはわからない。

そこで、本州名に戻って別名をながめると、[別名:天御虚空豊秋津根別]である。「秋津」は残っているが、「大倭」は消され「虚空」といった仏教的な用語に変わっている。人名的な「別」神の名称だから、こちらが古層の名称ではなかろうか。はたしてこちらもトンボだろうか。

国生み直後は、おそらく、淡道之穂之狭別ノ島と伊豫の二名ノ島が繁栄した時代ともいえる。粟の畑であるから、盆地の田圃のようにトンボが群れる状態とはいかなかったかも。そうなると、秋津はトンボでないかも。しかしながら、この言葉は消え去るしかない。スサノヲがこの土地の食物の女神を殺してしまったのだから。

それはそれで、どうでもよいのだが、どうしてこれほど大切なアキツという言葉を消し去ってしまったのか。さっぱり合点がいかない。

と言うことで、大分前に書いたトンボものを読み直してみた。
  「ムカシトンボが醸し出す郷愁感」 [2012.6.1]

方言分布調査があることを思い出したが、一般向けの書籍は細かな話を欠くので、こちらの関心に合った情報は少ない。どうしても、周辺域には古い言葉が残っているという理屈の解説になってしまうからだ。
そこで、嗜好を替えて、強引に書き換えてしまうことにした。
このように書いてみると、シナリオが生まれそうな気になってくる。
まあ、その辺りは書かずに終わらせよう。お遊びなのだから。

─・─ 強引に書き換えたトンボ方言分布 ─・─
<大型トンボとして残った言葉>
○「ヤンマ」
 [地域}讃岐、阿波の一部
 [地域}吉備の一部
 [地域}筑紫の一部

<トンボ近似:EnB圏>
○「エンバ」
 [地域}五島列島・長崎半島・・・周辺である。
○「ヘンボ」
 [地域}肥国
<トンボ/ダンブリ>
○「トンブリ」
 [地域}東北一部

<ダンブリ文化圏>
○「ダンブリ」
 [地域}東北北部
  「ダンブリ長者物語」 十和田八幡平観光物産協会

<アキツ土着圏>
○「アケス」
 [地域}大隅半島西側・宮崎県南部
○「アケヅ」
 [地域}仙台平野・北上川下流域
○「アーケージュー(現代語:e音あり)、アキヅ(古語)」
 [地域}沖縄

<飛び地的存在>
○「ポイ」
 [地域}錦江湾岸
○「ゲンザ」
 [地域}栃木・茨木

(本) 佐藤亮一 監修:「お国ことばを知る 方言の地図帳」(「方言の読本」増補改定版) 小学館 2002年

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