■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[12h釋水]■■■
釋水篇は詩作に雅語を使いたいとの要請にさっぱり応えていない感じがするが、だからといって、「詩経」から遠ざかっている訳でも無い。

1作品について、くどくどと説明している箇所があるからだ。記載目的が全くわからぬ。

 濟有深渉
   深則 淺則掲
        掲者…【掲衣】
 以衣渉水
 繇膝以下
 繇膝以上
 繇帶以上
 潛行  

注釈があったにこしたことは無いが、ママ眺めても、大体のことは想像がつくのでは。
・・・と、思わず書いてしまうのは、下手に辞書的に文字の字義を親切に示されでもすれば、かえって混乱しかねないから。
:水⊂出〜  渡:濟
:水⊂出〜  漼:深
       淺:不深
渉/涉  潛:涉水 泳:潛行水中
  :旱石…砥石
     氏c【作】@釋詁
     月在戌曰@釋天
  掲/揭:高舉

詩の原文表記があるなら、即、自分勝手に読み取るのが一番。間違いなど気にしたところで、実は、たいした意味は無いからだ。読めば、必ず、この詩は一体何なんだ、と考える必要に迫られる。結局のところ、全体解釈に応じて訂正を余儀なくされ、その時点で字義の間違いに気付くことになる。従って、正確を期して一所懸命字義を検討したところで、骨折り損。・・・
例えば、辞典によると<深諮掲:深い川を渡る時には着物をたくし上げ、浅い川を渡る時は裾をからげて渡る。>とされている。
一方、""にその手の意味は全く記載されていないのが普通。<1 といし 2 はげしい/きびしい 3 はげます 4 疫病/災い>

     匏有苦葉 濟有深涉 深則 淺則揭 [「詩經」國風 邶風 匏有苦葉]
     有狐綏綏 在彼淇 心之憂矣 之子無帶 [「詩經」國風 衞風 有狐]

瓢箪の苦葉は浮きになるとはいえ、
 濟水の渡河は深い箇所が有って大事。
  余りに深ければ、腰まで浸かって、渉ろう。
  淺いことがわかったら、衣をたくしあげて、渉ろう。

このどこに雅語風情を感じさせるというのだろうか。
・・・言うまでもないが、そう思った瞬間、科挙即不合格。自由人としての資格無しと判定されることになる。
そりゃ当然。たとえ、上記の文章が当たっていたとして、そこから感興が自動的に生まれることなどおよそあり得まい。師の教えを請い、どういう状況で何に感動すべきかを学びというか、鑑賞の仕方を丸暗記する訳で、そこに悦びを見出すことができる様に自己鍛錬することになる。

「爾雅」とは、そのための上質なテキスト。
  

     

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