■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[16f釋魚]■■■ @【此四方中國之異氣】 ━━五方 東方有比目魚焉 不比不行 其名謂之鰈 ≪魚≫鰈:比目魚 一つ目魚は寄り添って泳ぐしかないとのお話。指すのは、ヒラメかカレイか。 -----再掲[9]----- 【五方】では、「山海經」出の語彙が用いられている。比翼連理はよく知られているし、(伏羲女媧的)2頭2身合体を意味する比肩民(=一臂人)も引用されていることが多い。鰈や鮃も目が偏っており、その怪を強調すれば比目魚となるのは道理。比肩獸だけは、説明が長いのは、姿が確定していなかったからだろう。ただ、ポイントとしては、"邛邛/蛩蛩-岠/巨/距/鉅/駏-虛/驉"イメージであること。「說文解字」は当てにならぬと見ていそうだが。 蟨(/蹶)[鼠] (一曰:西方有獸 足短 與蛩蛩 巨虛比)そして、中央は雙頭虵(枳首=分歧頭)。おそらく、極めて稀だが発見されたのだろう。もちろん、不吉兆候とされた筈。 要するに、四方に夷の棲む異氣の地ありという観念の形象化。 五方之民 言語不通 嗜欲不同[「禮記」王制 第五] 日本語的には、平目[鮃]を当てたいが、非収録。 字書である「說文解字」にどんな邦訳書があるのか調べたことがないが、唐代の「酉陽雑祖」の翻訳者的真摯な姿勢を貫いている場合は、"鰈"のj字義解説には慎重かつ詳細な註をつけている筈。 しかし、おそらく、その手の執筆が行われることは無いと思う。真摯では無いという意味ではなく、出典は経典の1書「爾雅」とするだけで十分だからだ。この文はあくまでも釋地の"五方"の一部。わざわざ、自明な不比不○を解説しても、たいした意味は無かろうし。 しかし、最も有名な比翼についての扱いと、比目が異なっている点について語っておこうと考えれば、ここでの解説には力が入っておかしくない。 片目魚は一匹では生きていけないので、2匹が合体したとの、異形の説明は結構面白いからだ。 棲息場所での平底魚というより、寄り目魚ということでの、字体表現になっている点に注目する必要があろう。鮃という表現では駄目。鰈と葉という対比が秀逸。 左右対称が正式で、それが崩れると奇形という感覚がうまれがちだが、葉形の非対処など当たり前であることを指摘しているようなものだからだ。 さらに、「爾雅」記載の、鳥にも同様な姿ありとの、比翼と比目を並べるセンスも大笑いではあるまいか。両翼なくては飛べる訳がなく、鳥類はすべて比翼かネとなりかねない訳で。従って、鳥にも比目ありということなのだろうが、そうなれば、片や、実在、他方は空想となってしまう。 「說文解字」は冷徹にそこらを評価して文字を収録している。鰈はあっても、鶼は除外。 状況を見抜いていると見てもよかろう。片側に2ッ目鳥は実在している筈とするしかないからだ。もちろん、解答は簡単。目と羽の色模様でそう見えるだけ。もちろん、それを知っていて、ご都合主義から比翼鳥なる生物が登場した訳だ。 官僚は、事実改竄やこの手のお話ならいくらでも生み出せる能力があるものの、ゼロから想像力を駆使して新しいコンセプトを考え出すことはしない性情であることを自覚していたことになろう。 文字創造者を官僚と見なした理屈もよくわかる。(既に書いたが、王と見なしてもよかったのである。)王朝の特定専門分野の官僚達に文字使用をさせた訳だが、その象形アイデア自体は借り物。要するに、文字を駆使することで、超能力的物知りぶりを発揮していた部族長の行為の模倣。「說文解字」では記載を避けているが、四ッ目がウリであり、目の刺青がその力の根源とされていたことになろう。 太安万侶もそこらに気付いて、初代天皇の大和王朝創始譚に臣下の目の入墨譚が収録されている可能性もあり得よう。少なくとも、何故にこの話が必要なのか納得できそうなストーリーに出会ったことは無いからだ。他の譚は、政治的見地から記載の理由付けをすることが普通なのにもかかわらず。 ⏩続 (C) 2025 RandDManagement.com →HOME |