■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[16ha釋魚]■■■ <【鱓】皮可爲鼓>との解釈は秀逸。 皮を利用するのだから、この魚がウツボを指すことは、読者ならすぐにわかった筈。大好物である田鰻(田圃水抜後耕で大量捕獲)によく似た海棲の猛魚であるとの認識もあってしかるべき。そこで、小篆創出に当たって、田鰻は鱓と表記すべきではないとの見解が出されたことに気付くことになる。 もともと、どう見たって、鰻(東日本好物)、穴子(江戸好物)、鱧(旧都好物)とも同類としか思えないが、それとは一線を画す魚ということになる。・・・この辺りで、官僚が大いに頭を捻った状況を想定していると言えよう。 そこらを十分に考慮しているのが「說文解字」。(小篆はあくまでも字形を通じた表意文字と見なしているとしか思えない。叙で、六書分類を大々的に掲げていながら、全巻通じて、その創出過程分類の六書にはたいした意味無しといわんばかりの書きっぷり。ここでは触れないが。) 一方、ただただ雅語表現追求しか頭にないのが「爾雅」ということが見えて来る。 実は、そんなことが言えるのは漢字活用に長ける日本人だから。 この和語"うつぼ"だが、箞/靭(腰につけたり背負う、筒形矢入武具)から来ている。穴棲の獰猛で細長い魚の特徴そのもの。一方、漢字の鱓も、離れたところから、一気にガブリの強烈な一撃をくらわす魚という表意としか思えず、この発想の転用とも言えそう。大陸とは異なり、畦壊しの穴棲屋はあくまでも淡水田圃棲の鰻@汽水域で獰猛というイメージは無い。おそらく、労働に障害となる蛭の夜間喰い役程度の認識だったのだろう。 さらに比較してみよう。 黃鱔⇔田鰻 白鱔⇔(日本)鰻 鱔王⇔大鰻 鰻鱺⇔(大陸)鰻 康吉鰻⇔穴子 海鰻⇔鱧 この鱔だが、発音的には鱣[鯉] 鱓と同等と見なされている。代替文字として使用されて当然ということになり、王朝官僚としては、一意的にするために工夫せざるを得ないから、公式語から外して俗語扱いすることになろう。それが上首尾に運ぶかは別として。 そこらの事情を勘案しているのが「說文解字」であり、その感触を理解していたのが大和朝廷の専門家達。 そんなことを考えると、魚の知識豊富な人々が用いている和語の世界から、「說文解字」収録文字を眺めるのも一興。 言うまでもないが、遼東半島から東側の魚だけが対象となる。中華帝国官僚にとっては驚くべき異界の魚となる訳だが、その地では珍しくもない種ということになろう。 そんな例が、【鱓】記載の後に並ぶ。・・・ 出"薉邪頭國"2魚、さらに、出"樂浪潘國"7魚、出"貉國"1魚、が登場。 特段、調べずとも、素人でも推定可能。勿論、ハズレの可能性は高かろうが、徹底的検討で正解が得られるとも思えないからどうということもない。 【鱸】 鯔魚ボラ[or 鰡]flathead mullet 【鯜】 K龍江鰟鮍 朝鮮鰟鮍バラタナゴ[薔薇鱮/鰱]rosy bitterling 【䰽】 河魨/䰽魚フグ[or 河豚/鰒/鮐/鯸/鯺/吹吐魚/鯸䱌]blowfish 【䱡】 海豚イルカ[or 鯆]dolphin 【魦】 蝦虎魚ハゼ†spiny goby 【鱳】 翻車魚マンボウ[or 曼波魚]ocean sunfish or mola 【鰅】 海獅(二ホン)アシカ[海驢/葦鹿]sea lion[絶滅] 皮有文 出樂浪東暆 神爵四年 初捕收輸考工 周成王時 揚州獻鰅 † 推定…鯊魚[サメ] 魦[ハゼ] 沙溝魚[オコゼ] 沙鰛[イワシ] 出"遼東"は解説があるのでここから外したようだ。潘國は半島域らしい。 【鰸】狀似蝦 無足 長寸 大如叉股 蝦は外殻と鋏・10脚、さらに強力な顎を持つことが特徴。類縁の無足タイプと言う表現は解せぬが、潮間帯岩礁に大規模に群生する龜足カメノテ[亀手]Japanese goose barnacleになってしまう。勿論、味はエビそのもの。 貉國は東北地区ツングース貊系の魚生食族だろう。朝鮮の語源でもあり、和食の刺身と違って、完全活魚を用いる鱠料理として呈される。(勿論、生肉刺身の膾も定番。) 【鮮】 許氏平鮋クロソイ[黒曹以]black rockfish 薉=穢/濊で東北地区ツングース貊系の濊水流域の部族。 【鮸】 箕作黃姑魚ニベ[or 鰾膠]/ぐちhonnibe croaker…浮袋⇒膠 【A】 磷蝦アミエビ[醤蝦](North Pacific) krill ⏩続 (C) 2025 RandDManagement.com →HOME |