■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[16k釋魚]■■■
話は跳ぶが、異形動物に関する記述は、驚くようなことではない。

二頭や三眼といった奇形は、発生確率がとてつもなく低いし、多くは生命維持ができないものの、報告例はある訳で。
そこらの感覚は古代人と相当なズレがあると考えた方がよい。

古代社会では、そうした特異な事象に遭遇すれば、政治的にも宗教的にも、重要な事績として伝承させる要ありと考えるのは自然な流れ。インパクトが大きい話だから、時間がたつほど、尾鰭が付いた話に仕立て上げられるのが普通。(現代社会ではあり得ない話として、隠蔽するのではなかろうか。)

ただ、そうした伝承譚が余りに多いので、現代人からすると、創作話と見なすしかなくなってしまう。これは拙い。

どうして、そんな話が多いかといえば、異形動物が恐ろしいほどの威力を発揮すると考えられていたから。神話に登場する威力ある�~は、異形にならざるを得ないということ。

ここらは、至極単純な話。
そうした信仰と対立的な宗教圏内に居れば、そんな話は耳にしたくない訳で、一切唾棄すべきとなる。言うまでもないが、中華帝国では神話体系は人為的に消されてしまい、残渣がちらほら状態。
(神話のストーリーはほぼ末梢されているが、タイトルロールの奇怪な偶像だけが伝承されている状態。もちろん存続が容認されている部分的なストーリーもあるが、奇怪に映る表現は消されていると見た方がよい。)
しかし、古代、各部族は、トーテムとして、固有の動物を祖としていたと考えられるから、奇形に違和感どころか、崇拝対象であった訳で、儒教国への転換は人類史的にも一大革命だったことを忘れるべきでないと思う。

ともあれ、各部族は、異形の偶像を祀っていた可能性が高いということ。おそらく、木乃伊化させた体躯を加工して、異形の姿に作り上げていたと思われる。
現代の偶像とは違い、部族長のみが接することができたのだろうが、その威力は半端なものではなく、天変地異発生や戦争での偉大な力を発揮できる根源と信じられていたに違いなかろう。
(尚、多頭多肢を奇怪な姿と見なすのは考えモノ。・・・そのタイプの観音像が信仰対象とされている訳で。異教徒は別だが。)

ただ、厄介なのは、トーテムではなさそうな異形動物の伝承譚も数々存在している点。もちろん、文化が異なる部族のトーテムの可能性もあるが、多くの場合は、噂としての奇怪な動物のお話だろう。
要は、これをどれだけ信用するかの判断力の問題。現代人の方が優れているとの証拠は無い訳で、社会環境を考えれば、どうせ創作と片付けるべきではないと思う。
知らない土地には、奇妙な生物が生息しているのは確かなのだから。それは、経験則でもある訳で。
従って、たいていの場合はモデル動物が存在し、特徴が誇張されているだけだったり、一知半解的な生態理解から生まれたあり得ない姿描写になっていると見た方がよいのでは。

ただ、これはあくまでも雜な一般論。

魚の扱いは特に難しい。
魚屬はFishという限定した範囲に留まらないから、崇拝対象になってもおかしくない種を含んでいるが、現在は絶滅かその道を歩んでいたりするので、身近な有足"巨大魚"の感覚が生まれない。古代感覚は違っていたかも知れない訳で。・・・
  長吻鱷マレーガビアルfalse gharial
  灣鱷イリエワニsalt-water crocodile
  揚子鱷ヨウスコウワニChinese alligator
  大山椒魚も乱獲で希少化。どう扱われてきたのか全くわからない。

さらに気を付けなければならない点がある。内陸部であっても、淡水魚だけの知識しかなかった訳ではなく、見たことも無い海水魚の情報を得ていた可能性が高そうなこと。
だからこそ、魚に翼があるのかも知れない。
(敦煌墓地の壁画には人面人手足魚や飛翼魚があり、「山海經」の記載とほとんど合致している。移住者の信仰の可能性が高そうだが、神話の世界が完成していたことを伺わせる。)

このことは、思っている以上に、古代の地域的交流のレベルは高いことになろう。
女系社会では、立派な男子ほど異郷へ颯爽として旅立つ冒険文化があり、その一方で、遠方から来訪した強靭で知的に優れた若者を大歓迎する風習が確立していたのは間違いなさそうだし。(「古事記」が一目惚れ話として描いている。)

「山海經」南山経 西山経 北山経 東山経 中山経の"魚"
📖"酉陽雑俎的に山海経18巻を読む"
《南山山系》
 ▲猨翼之山・・・怪魚・・・
 ▲柢山有翼羽牛的魚鯥・・・陵居蛇尾鯥下留牛音 →淡水海豹?
 ▲青丘之山・・・
   人面魚赤鱬・・・鴛鴦音 →淡水瘤鯛?
 ▲浮玉之山・・・
   鮆魚
 ▲天虞之山・・・
   魚的虎蛟・・・蛇尾鴛鴦音
 ▲雞山鮒的鱄魚・・・彘毛豚音
《西山山系》
 ▲英山鼈的魚䰷魚・・・羊音
 ▲竹山人魚
 ▲峚山・・・奇魚
 ▲泰器之山鯉的魚文鰩魚・・・魚身鳥翼蒼文白首赤喙
 ▲樂遊之山蛇的䱻魚・・・四足食魚
 ▲英鞮之山魚身蛇首冉遺之魚・・・六足目馬耳
 ▲邽山・・・
   有鳥翼魚蠃魚・・・魚身鳥鴛鴦音
 ▲鳥鼠同穴之山・・・
   鱣魚的鰠魚
   鳥首魚𩶯魮・・・覆銚状魚翼魚尾磬石之聲音生珠玉
《北山山系》
 ▲求如之山鱓的滑魚・・・赤背梧音 →巨大鯢/山椒魚?
 ▲帶山・・・
   鶏的儵魚・・・赤毛三尾六足四首鵲音 →魚名は莊子「知魚之樂」にも。
 ▲譙明之山何羅之魚・・・一首十身吠犬音 →10本足の特殊な烏賊か?
 ▲涿光之山鵲的魚鰼鰼之魚・・・十翼羽端鱗鵲音 →蓑笠子?
 ▲少咸之山・・・
   䰽䰽之魚 →河豚?
 ▲嶽法之山鯉的魚抄魚・・・雞足 →魴鮄?
 ▲北嶽之山
   魚鮨魚・・・魚身犬首嬰兒音 →犬魚か?[黒点河豚/Dog face puffer]
 ▲縣雍之山・・・
   儵的鮆魚・・・赤麟叱音 →刀魚らしい。渾沌を殺した南海之帝は儵。
 ▲龍侯之山䱱魚的人魚・・・四足嬰兒音 →䱱は山椒魚。
 ▲陽山・・・
   鮒魚的魚䱤父之魚・・・魚首而彘身 →幼魚に瓜坊的縞がある鶏魚か?
 ▲饒山・・・
   師魚 →ブリではない。(現代中国の"鰤"は日本の国訓文字。)
 ▲碣石之山蒲夷之魚 →(推定不能)蛇魚的河神か?
《東山山系》
 ▲樕𧑤之山[=首]梨牛的鱅鱅之魚・・・彘鳴音
 ▲栒状之山・・・
   儵的箴魚・・・箴喙
 ▲番條之山鱤魚
 ▲姑兒之山鱤魚
 ▲犲山堪㐨之魚
 ▲葛山之首胏的珠蟞魚・・・有目六足有珠(其味酸甘)
 ▲耿山・・・
   狐的獣朱獳・・・魚翼自訆鳴
 ▲諸鉤之山寐魚
 ▲跂踵之山・・・
   鯉的魚鮯鮯之魚・・・六足鳥尾自訆鳴
 ▲旄山鯉的魚鱃魚・・・大首
 ▲東始之山・・・
   鮒的茈魚・・・一首而十身蘪蕪臭
 ▲女烝之山鱣的魚薄魚・・・一目歐音
 ▲欽山鱃魚
 ▲子桐之山有鳥翼魚䱻魚・・・出入有光鴛鴦音
 ▲太山・・・
   鱃魚
《中山山系》
 ▲薄=首▲甘棗〜▲鼓鐙 歴兒の冢。・・・
   鮪的豪魚・・・赤喙赤尾赤羽
   鮒魚飛魚・・・鮒魚状
 ▲萯=首▲敖岸〜▲和山 神は泰逢, 熏池, 武羅。・・・
   飛魚・・・豚状赤文
 ▲釐=首▲鹿蹄〜▲玄扈 山神は人面獸身。・・・
   人魚
 ▲縞羝=首▲平逢〜▲陽華 中央嶽の祠信仰。・・・
   人魚
   脩辟之魚・・・黽的白喙鴟音
 ▲苦=首▲休輿〜▲大騩 16神は人面豕身。+人面3首・・・
   鮒的鯩魚・・・�K文
   鱖的鰧魚・・・居逵蒼文赤尾
   𥂕蜼的䱱魚・・・長距足白對
 ▲荊=首▲景〜▲琴鼓 山神は人面鳥身。・・・
   文魚, 鮫魚
 ▲岷=首▲女几〜▲賈超 山神は龍首馬身。・・・
   䲀魚
 ▲荊=首▲翼望〜▲几  山神は人首彘神。・・・
   人魚, 大魚
  ⏩続
     

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