■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[17釋鳥]■■■
「說文解字」は、思想が研ぎ済まされているが、それは政治的に立ち回らざるを得ない社会であるからではあるものの、「淮南子」をじっくり読む過程で、「爾雅」に何度も目を通したことも大きいと思う。
なかでも、巻十七釋鳥を見て、文字宇宙の観念ゼロの無思想な状況を突破しないと古代精神を伝えることができないと危機感を覚えたに違いない。

漢文を公式文書化し始めたことで、倭語が孕む古代精神喪失の恐れありと感じたであろう太安万侶と同じ。「說文解字」に啓発された可能性が高い。

要するに、釋鳥を読んで目を覚まされたのである。(一般的には、これを"気付き"と云い、他人の話や書の指摘で初めて分かったと言うが、言葉の綾である。多くの場合、ママ暗記的に受け入れていると思いたくないだけ。ほんの少数が気付きを得るのだが、気付いていなかったのではなく、薄々そう感じていたことが、自分以外にもあることを知っただけ。そう思いたくないだけのこと。目から鱗もそういう類。)

釋鳥は、見た瞬間、ゴチャ感を覚える。初見の文字だらけということもあるが、連文字と単独文字が整理されず並んでおり、部首的なセンスも皆無。
多少、鳥に興味があると、さらに驚かされるのは、ほとんど鳥の知識無しで羅列していそうな点。手抜きで調べているとは思えないから、できる限り文献で網羅的に集めることに注力していることがわかる。しかるに、"鳥"の特徴による、文献情報だけでの分類整理は難しいので実質放棄ということだろう。

コリャ駄目ということで、生まれたのが「說文解字」と見る事もできよう。
網羅したところで、それに何の意味があるのかという、基本的なところで両書の考え方は対立していると言ってよさそう。

「說文解字」の方針とは相容れないと言ってよいだろう。字体書と字義書の違いではなく、文字とは何かを概念的に追及する書と、全く無頓着で執筆された書の差。
その方針だが、自明なものがある。
 意義未詳なら、下手に推定しない方が良い。
  意味が薄い網羅性は避けるべし。
  (推定方法が文字毎に違うのでは参考にならない。)
 規格化された1文字毎に検討しないと混乱を招く。
  連文字や重畳とは用法表示なので峻別すべし。
  (A=ABと、B=ABと書き、さらに必要なら追記が望ましい。)
 <部>構造の文字世界に合わせること。
  <部>による峻別は必須。
  (文字認識の当たり前の方法に従うべきである。)

結果、異なる結論が導かれることになる。
言うまでもないが、概念を研ぎ澄ます方向は嫌われるから、現代は「說文解字」の方針に従うことにはならない。
      ≪禽≫
  「爾雅[釋鳥]」二足而羽謂之禽(四足而毛謂之獸) …birds
  「周礼[庖人]」 掌共六畜 六獸 六禽 辨其名物
  「說文解字」走獸緫名 …beast@原義
      鳥:長尾禽緫名 ≒猛禽@原義
      𣧻:禽獸所食餘 ≒肉食類
「說文解字」からすれば、禽=禽獣で獣=禽獣だが、世間一般では、「爾雅」に従って、禽=鳥とすることになっている。
「說文解字」では羽蟲グループの文字と禽は根本的に異なる。






├┬┬┬┬┐
奞雈瞿雔雥鳥
│    │
𦫳    




├┐
禸(・・・禽・・・)
││




付け加えておくと、甲骨文字研究が進み、「說文解字」の間違いがわかる様になったというのは、一面正しいが、正確性を欠いている。字義推定の方法として、字形を用いる方法論を採用する以上、均質で規格化されている文字群を使うのは当たり前だからだ。
さらに、考えておくべきは、甲骨文字とは官僚層通用ではなく、天帝との交信に用いられる、呪系特殊集団用である点。(常識的には、真似などご法度で、秘匿される筈。公開使用化の説得力ある仮説が必要となる。)
従って、「說文解字」の文字概念からすれば、甲骨文字で用いられた意味(元義)と、王朝公式文字に於ける字義が同じであるとは限らない。文字の原義はあくまでもこの官僚が公定して当該王朝で通行したものだから、その推定は、官僚制定文字の字体から推定するしかない。最悪の推定方法は、検討対象の文字の母集団を設定せずに、でたとこ勝負で文脈で字義を決めること。しかし、ほとんどがこの方法。(「說文解字」で異体字による2種の引用記載があると、原本2種とするのは、その様な発想であることを示している。母集団を設定しているなら、この異体字使用にはメッセージ性があることになる。それに、引用とは語義であって、字義では無いが、区別しないで検討するのも大きな特徴である。)

「和爾雅」は【禽鳥】。現代人にはわかり易い分類。
 鳳凰 孔雀 鸚鵡 秦吉了 鷯歌烏鳳
 鷹 兄鷹 弟鷹 黃鷹 鴘鷹 鶬鷹 隼 鷂 兄鷂 小隼 雀鷂 {小+隹}𪀚 鵰 皂鵰 鶙鵳 鶚 䲭
 鶴 玄鶴 白鶴 鶬鷄 鸛
 鴈 鴻 白鴈 鵞 鵠
 鳬 冠鳬 鴨 刀鴨 鸊鷉 䳉 鷗 江鷗 海鷗 方目
 鴛鴦 鸂 鶒 水札
 鷺 𪅖𪆷 朱鷺 蒼鷺 旋目 鵁鶄
 鸕鷀 蜀水花 魚狗
 鶏 丹雞 黃鶏 長鳴雞 𮎰鶏 矮鶏 烏鶏 鶤鷄 烏骨雞
 雉 白鷴 錦鶏 吐綬鷄 火雞 山鷄 鷮雞 秧鷄
 鶉 鷃 鳼 鸋
 鷸 竹鷄
 鳩 斑鳩 䳕鳩 鴿 青䳡 鳲鳩
 雀 黃雀 䨁 白丁香 蒿雀 繡眼兒
 鶯 報春鳥
 杜䳌 買䤥
 燕 胡燕
 告天子 噪天 翠鳥 練雀
 桑鳸 晝眉鳥
 𮭠鵒 啄木鳥
 烏 鵲 山鵲
 鴟鵂 鴞
 𪂹鴒 巧婦鳥
 姑獲鳥 治鳥 比翼鳥 𪈿 蚊母鳥 信天翁
 雛 卵 𪇯 {卵+叚} 嘴 喙 翼 羽 臎 毛 尾 翮 翈 (
㕸) (䐊)胵 肫 膆 蹼 距 毳 飛 頡頏 翔 鳴 嘲 囀 啄㕞 翥 雌雄 毛冠 毛角 𠷏 巢 窠 塒 尾 栖

≪釋鳥 第十七≫
隹其 鳺鴀
鶌鳩 鶻鵃
鳲鳩 鴶鵴
鷑鳩 鵧鷑
鷑鳩 王鷑
鵅 鵋䳢
鶅 鵵軌
鴗 天狗
鷚 天J
鵱鷜 鵝
鶬 糜鴰
鶬 烏𪈚
舒鴈 鵝
舒鳧 鶩
鳽 鵁鶄
輿 鵛鷋
鵜 鴮鸅
鶾 天鷄
鷽 山鵲
鷣 負雀
齧齒 艾
鶨 䳢
老鳸 鴳
桑鳸 竊脂
鳭鷯 剖葦
桃蟲 鷦 其雌 鴱
鶠 鳳 其雌 皇
𪃹鴒 雝渠
鷽斯 鵯鶋
燕 白脰烏
鴽 鴾母
密肌 繫英
巂周 燕 燕 鳦
鴟鴞 鸋鴃
狂 茅鴟 怪鴟 梟 鴟
鶛 劉疾
生哺 鷇 生噣 雛
爰居 雜縣
春鳸 鳻鶞 夏鳸 竊玄 秋鳸 竊藍 冬鳸 竊黃 桑鳸 竊脂 棘鳸 竊丹 行鳸 唶唶 宵鳸 嘖嘖
鵖鴔 戴鵀
鶭 澤虞
鶿 鷧
鷯 鶉 其雄 鶛 牝 痺
鸍 沈鳧
鴢 頭鵁
鵽鳩 寇雉
萑 老鵵
鶟鶦 鳥
狂 㝱鳥
皇 黃鳥
翠 鷸
鸀 山鳥
蝙蝠 服翼
晨風 鸇
鸉 白鷢
寇雉 泆泆
鷏 蟁母
鷉 須臝
鼯鼠 夷由
倉庚 商庚
鴩 餔敊
鷹 鶆鳩
鶼鶼 比翼
鵹黃 楚雀
鴷 斲木
鸄 鶶鷵
鸕 諸雉
鷺 舂鉏
鷂雉 鷮雉 鳪雉 鷩雉 秩秩 海雉 鸐 山雉 雗雉 H雉 雉絶有力 奮 伊洛而南 素質 五采皆備成章曰鷂 江淮而南 質 五采皆備成章曰鷂 南方曰𤾊 東方曰鶅 北方曰鵗 西方曰鷷
鳥鼠同穴 其鳥爲鵌 其鼠爲鼵
鸛鷒 鶝鶔 如鵲 短尾 射之 銜矢射人
鵲鵙醜 其飛也翪 鳶烏醜 其飛也翔 鷹隼醜 其飛也翬 鳧鴈醜 其足蹼 其踵企 烏鵲醜 其掌縮
亢 鳥嚨 其粻 嗉
鶉子 鳼 鴽子 鸋 雉之暮子爲鷚
鳥之雌雄不可別者 以翼右掩左 雄 左掩右 雌
鳥少美長醜爲鶹鷅
二足而羽謂之禽 四足而毛謂之獸
鵙…【伯勞】
倉庚…【黧黃】
  

     

 (C) 2025 RandDManagement.com  →HOME