■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[19aa釋畜]■■■
馬の話で今文派の<"長"="馬+人">解釈について触れたが、現代の漢字語源解説も多かれ少なかれそんなモノ。

文字を覚えるのに、暗記し易く便利ならそれで十分どころか、識字率向上に寄与できるのだからお勧めとも言える。言葉とはそういうもの。(と言っても、人口0.1%未満での官登用話である。)
例えば、ネコにしても、漢字は<犭[犬] or 豸>+<苗>の合字であり、旁は意符兼音符[ミョウ ビョウ]なので、渡来時からの用語だとすれば"寢仔"だった訳がない。しかし、新しい名称を覚えるには重宝極まりなく、こちらが通用して当然。

・・・学者は別だが、ここらの常識を大切にして、漢字の流れを見た方がよいと思う。

漢代は今文派によって儒教国家の道を驀進することになった。
たとえ、小篆の存在を知っていようが、筆書に不向きな文字は邪魔と考えるのは時代の流れ。問題は、伝承儒学を文字起こしした隷書版とは異なる内容の、異文字の経典原書が発見されたこと。国教経典の異書が併存できる訳がなく、本格的政治抗争化は避けようが無い。
それに最終的結着をつけたのが「說文解字」と見てよいと思う。

"長"の例でわかるように、小篆の字形を見れば、灬(連火)では無い文字とすぐわかるが、規格化された文字だとすべて同じに映る。
  ⇒馬[象馬頭髦尾四足之形]
  ⇒𤉯/𮫬/魚[象形 魚尾與燕尾相似]
  𤉡[象形 與禽 离頭同]
  能[肉+㠯]-熊[能+炎省]
  鳥[象形 鳥之足似匕]
  燕[象形]
  爲[爪+母猴female macaque 象]
  (無[亡+無]聲)
・・・とんでもないことが発生していることになる。

このことは、これらすべてを灬とみなして、字義を上手く説明できる語源を推定しても構わないということでもある。漢字は多義であるから、それほど難しい作業ではなく、ピッタリ当て嵌まる見方が生まれることもあろう。それはそれで致し方あるまいと決断したことになる。
当該文字の元義とは全くことなるものの、その時代の雰囲気に合致するということでは、それを原義として、他の字義を派生、あるいは、例外的な知的遊びとしての適用と見なすことがあってもかまわない訳だ。
(漢字は必然的に多義化するから、新王朝は言語標準化にあたって、時代に合わせた字義の定義を行わざるを得ないのは、当たり前では。)

「說文解字」の記載する字義とは、小篆創作時の官僚の意向を、その字体を眺め、「爾雅」記載の字義と、継承現行文字の様々な字義を勘案して、推定したもの。
始皇帝期の官僚が、どう字義を定めたのか、字体から推定したものであって、それ以上ではない。
甲骨とは字義が違う場合があって当然のこと。"誤謬"との見方は間違っていると思う。(但し、始皇帝期の風土のとらえ方が異なれば、白川説の様に誤謬と見なすことになる。呪術・生贄時代の字義を脱していない可能性もある訳で。)
  

     

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