■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[19da釋畜]■■■
六畜を順に眺めた後で突然だし、再掲的でもあるものの、「美と善」を取り上げることにした。

西洋では、ソクラテスの時代からこの概念が確立しており、"美にして善"なる完全性テーゼが語られて来た。素人からすれば、前者は感性的認識に係るし、後者は道徳倫理性が色濃い語彙なので、同一とされてもすぐに理解し難いところがある。(高校の発表授業で担当したので偶々知っているだけ。哲学に興味がある訳ではない。)
・・・と形而上論議を始める様な文章を書いているのは、「說文解字」では、わざわざ{美與善同意}と記載しているから。もちろんのことだが、その"美"とは{羊+大}とされている。こう書かれていると、そこらを議論しておく必要がありそうということ。

老子や墨子ならいざ知らず、儒教でこの様な議論が立ち上がることはなさそうなので、かなり違和感を覚えたが、「爾雅」での"美"の書きっぷりを見れば、だいたいの検討はつく。

おそらく<美>の元義は女性の魅力。
当然ながら、付随的に、それは男性の魅力でもある。しかし、そう解釈する訳にはいくまい。人々の本性に基づいた感性表現の言葉であるため、下手に発展すれば自由恋愛観が広がりかねないからだ。そうなれば、宗族社会を揺るがす引き金にもなりかねず、そこらに"美"の原義を与えることは考えにくい。
 暀暀 皇皇 藐藐 穆穆 休 嘉 珍 褘 懿 鑠…【美】@釋詁
 美女爲媛  美士爲彦@釋訓
 蔌金謂之璗 其美者謂之鏐
   白金謂之銀 其美者謂之鐐@釋器
 鳥少美長醜爲鶹鷅@釋鳥

「說文解字」では美={羊+大}。
  𦫳[羊角]{象頭角足尾之形}
  羊[祥]
  羔[羊子]
  羍/𦍒[小羊]
   達[行不相遇]e.g. 誕彌厥月 先生如達[「詩經」大雅 生民之什 生民]
  美[甘]{羊+大}
美の記載だけ見ていれば、全く気にならないが、≪羊≫部には上記のほかに仔や幼時を意味する文字が並んでいるし、羍と美は上下入れ替え字体であることを勘案すると、字形読みから原義推定として"甘"を当てるのは、相当な無理筋とは言えまいか。
思うに、羊が犧牲となる祭祀状況"祥"から、その意義は福 善/譱 吉にありということでは。
 祥:福 or 善
 善:n.a.  ⇒譱:吉 吉:善
 犧:宗廟之牲  義:己之威儀 牲:牛完全

「說文解字」は、<祭祀には美味な羊>と見ていることになる。・・・
【味覚@五感】
美:甘 羊在六畜 主給膳 {美與善同意}
甘:美
甛:美
旨:美
【良好(観念的評価) 】e.g.美徳
嘉:美
【讚美】
𢤧:美
【視覚-美貌女子】
 好:美
 𢤧:美
   𡛝:三女爲𡛝 𡛝…美
   媛:美女 人所援
   姼:美女
   妭:婦人美
媄:色好
   盼:“美目盼兮”…眉装飾の巫女だろう。(媚:說)
【視覚-美姿男子】
彥:美士有文 人所言
甫:男子美稱
【-】
藹:臣盡力之美
   昌:美言
𪅳:鳥少美長醜爲𪅳離
懿:專久而美
【視覚-肥沃地】
在右扶風美陽
   暀:光美
【視覚-外観美】
玉之美者 美玉
石之美者 美石
金之美者
菜之美者
  

     

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