■■■ 小篆文字検討@「說文解字」「爾雅」[㯻囗]■■■
楷書の"囗"は、外包囲の<国構>と、嘴の<mouth偏/冠>の区別は簡単そうだが、実態としては、えらくわかり難い。

しかし、小篆創成官僚はそうは感じなかったようだ。
と言うより、直線的な四角形の文字ではなかったから、形が似ていても、直"感"的に違いを感じ取れたと見た方がよいのかも。

そう考えると、「說文解字」は、<国構>という考え方で眺めるナ、とのご注意が記載されているようにも思えてくる。
それに気付かされるのは、<囗-員-邑>という文字グループの設定。
と言っても、現代人からすれば≪国構≫系か≪mouth偏/冠≫系のどちらかという眼鏡を通して眺める、カント的習慣にどっぷり嵌っているとそう感じることはないだろうが。

共通鼎を利用する<mouth>達ということで、人々の一体感醸成という目論見は、現代にも綿々と引き継がれる共食の宴の体裁を描いていると言えなくもなく、<mouth>こそがメンバーの標章という見方も成り立つ。
しかし、「說文解字」の主張はそうではない。

誰が見ても、甲骨は{鼎+囗}の合字。一方、小篆は{貝+囗}。これほど違っていても、同一字義なのだから、同一文字と見なすこと自体はおかしなことではない。
甲骨のデリバティブが小篆と考えるなら、<shell-fish>が使われる道理など無く、「說文解字」が"貝"としているのは、滅茶苦茶な比定となるだろう。正当な評価である。

しかし、同時に、この手の見方に異義を差し挟むこともできる。現代人からすれば、"口"は≪国構≫もありうるが、ここは意味からすれば<mouth>と判定する方がよさそうに映るからだ。
共通の鼎を用いるという情景は、人々という集団感覚と繋がるものの、数的な意味を持つメンバーという個々概念を生むことは考えにくいからだ。コミュニティ一体化とは属する個体を分別しないことにこそ意義がある訳で。そうなると、"員"には数として認識する意味を包含しているので、≪国構≫的に扱うと矛盾してしまう。
それを考えれば、貝貨的な概念が必要との認識は正当ということに。
しかしながら、食材の<shell-fish>と社会的存在の<money>は全くの別概念で、後者が<mouth>と繋がる必然性は無い。従って、<mouth>との主張は、あくまでも、"員"とは、memberという意味との点を突いているだけと見た方がよさそう。

・・・つまり、{鼎+囗}とは宗廟祭祀に於ける、所属確定を意味しているのであって、王権的な⿴というテリトリー確立観念と似てはいるものの、異なるということ。

要するに、非<mouth>の"囗"系とは、個々が纏まって縛られるイメージの文字群ということになろうか。

束  #224≪束≫【束】:縛
├┐ 
㯻│ #225≪㯻≫【㯻】:橐🅱🆂 bind
 囗 #226≪囗≫【囗】🅱🆂:回[象回之形]
 │    #022≪口≫【回/囬】㊎🆂:轉[中象回轉形]
 ├┐
 員│#227≪員≫【員】🅱🆂:物數
 貝│#228≪貝≫【貝】🅱🆂:海介蟲   
📖
  │       居陸名猋 在水名蜬[象形]
  邑#229≪邑≫【邑】:國[囗…先王之制 尊卑有大小 卪] 📖
  𨛜#230≪𨛜≫【𨛜】:鄰道[邑+𨙨]今隷變作𨙵
  ・・・"邑" v.s. "𨙨"という左右反転が戯れとは思えず、鏡像にすることで、恨念を籠めるとか、影が薄い存在という意味にしている可能性がありそうだが、なんらの傍証も無い。
ただ、甲骨では、反転異体字化はしばしば見られる現象であるから、呪術での発声で強調していたことを表記していた可能性はあろう。小篆は卜占用ではないから、踏襲の必要性はなく、重畳化なら同文字でよい筈だが、単なる多数ではなく、双子集落的な分裂的発展を指す言葉かも。
例えば、小篆の"目"や"耳"は、甲骨では絵画的な表記で左右の違いが分るデザイン。異体字では無いかも。描き方によっては1つでも両方を指すとか、抽象としてのeyeは横型にしないとか、ルールがありそうな気もするが、情報は無い。

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