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2009.5.13
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油の知識…

  7月10日は 「植物油ゆかりの日」 だという。(1)
  なんとも評し難いが。


 先日、たまたま、食用油の小売商を長く続けておられる方が書いた料理本に出くわした。チラと眺めただけだが、「綿実油(キャノーラ油)」と記載されていたのでたまげた。(一箇所だけでないから、誤植ではない。)“Canola”は、その名前でもわかるが、カナダで産まれた世界的に有名な菜種油の一種。勘違いするようなものではない。
 油の薀蓄を傾けている専門家がこの程度の知識。と言うより、マスコミ受けを狙い、場当たり的に、適当な発言を繰り返している可能性がかなり高い。

 ということで、急遽、油を取上げてみることにした。と言っても、素人話。拙宅で、どんな感じで油を使っているのか、考えてみただけ。

 先ず、【動物性油脂】からいこう。
 動物性油脂が適しているとされる料理に使えば確実に美味しい。健康上の理由で動物性油脂を嫌う人は多いが、拙宅では美味しさを重視する。それに、それほどの量を食べる訳ではないから、気にしていない。それに、脂は体に必要なものだし。
 動物性油脂の代表は「豚脂(ラード)」だが、これは必要時に小さなチューブ入を購入することにしている。「牛脂(ヘット)」は使う時に、お肉屋さんから、無料でもらうだけ。尚、拙宅には、瓶入り「馬油」もあるが、食用ではない。(安物かと思ったら、高価なので仰天。)
 もちろん「鳥油」もある。中華では「鶏油」は味付け用の定番品。販売されているのは葱/生姜で風味がついたもの。購入しなくても、家庭で簡単に作れる。尚、「鴨油」もあるが、こちらは滅多に見かけない。
 「魚油」類の商品があるのかは知らないが、たとえ売っていても、買うことはない。魚油はすぐに劣化するからだ。
 まあ、動物性油脂で一番使うのは、「乳脂」のバターだろう。味付け、炒め物、菓子、等々、使い方は様々。(代替品の植物油原料のマーガリンやショートニング類は柔らかくて便利なのだが、香りが今一歩なので、滅多に使わない。)
 乳脂で有名なのは、バターの他に、インドのギーがある。こちらは自宅ではまだ使ったことがないが、売っているところを見ると、インド料理には欠かせないということだろう。
   -豚脂(ラード)
   -牛脂(ヘット)
   -バター
   -ギー
   -鶏油/鴨油:

 次は、極く普通の【汎用植物油】
 この範疇に含まれるのは、大規模農業で生産するもので、以下の4種だが、まあ中心は、菜種と大豆だろう。所謂、サラダ油とか揚油とされているもの。
 店屋で使っている業務用の一斗缶を時々見かけるが、ラード、白絞油、サラダ油と記載されているものが多い。白絞油とは菜種油かとばかり思っていたが、ブレンドものである。大量に使うから、消泡剤のシリコーンが入っているものが多い。
   -菜種油[Rapeseed、その一品種がCanola]
   -大豆油[Soy]
   -トウモロコシ油[Corn]
   -綿実油[Cotton]
 拙宅では、滅多に揚げ物をしないので、揚げ油としての違いに感心は薄いのだが、さっぱり感という観点では違いがありそうだ。と言っても、違いを薄めるために、ブレンドしたものが多そうだが。
 成分の違いにしても、品種改良が進んでいると思われ、時代の要請に合わせた成分比になっているようだ。

 ついでに【準汎用植物油】の2種もあげておこう。
 トウモロコシや綿と同程度に使われているが、多少の高級感が醸し出されると言ったらよいだろうか。小生には、ソフィアローレン主演のヒマワリのシーンや、紅花染めイメージ以上のものは無いため、使ったことはあるが、使い続ける気分にならなかった。
   -向日葵油[Sunflower]
   -紅花[Sufflower]

 ここで、忘れてならないのが【南方油】である。
 家庭では滅多に直接使わないが、外食や揚げ菓子で食べている油があるからだ。
 業務用としては、動物性油脂が使われることも少なくないが、「パーム油(油椰子)[Palm]」が多いと言われている。パームは、農地面積当たりの生産効率が高いから圧倒的に廉価。多用されているのは間違いないのである。特に、パーム実からとった油は牛脂に似ているから使い易いこともあろう。一方、パームの核の油は、ココ椰子油(コブラ)[Coconut]に似ていると言われている。スーパーでは、こうした油は見かけないが、たまに、原料から考えると結構なお値段の商品が置いてあることがある。
   -ココナッツオイル
   -レッドパームオイル
 海外で覚えた味がなつかしい人のための商品なのだろうか。小生は、ココナッツ風味の料理は敬遠しがちなので購入したことはないが、コブラ油分の風味が好きな人は嬉しいに違いない。気温が高い地域にもかかわらず、この油は劣化しにくいようだからお勧めかも。

 スーパーでは、こうした油以外にも、加工した【健康油】が並んでいる。
 人気があるようだ。
 拙宅では、特別な好みは無いので、健康油も含めて、色々と試している。違いを知りたいとの熱意からではなく、単なる好奇心。
 その程度の関心なので、差はよくわからないが、個人的にはキャノール油のさっぱり感が合っている。
 しかし、それが主かといえば、そんなことはない。
 スーパーの棚に並ばないことが多い【日本の油】を使ったりすることもある。
 現在使用中は「椿油」。もともと化粧用油だ。昔、食用にできないと聞いた覚えがあるが、椿油店で食用が販売されていたので使用している。どんな処理をしているのか分からないが、まあ、お店を信用して。産地名は記載されていないが、伊豆の大島かと思ったら、どうも五島列島らしい。
 尚、この手の製品としては以下のようなものか。ただ、日本産なのかはよくわからぬが。
   -椿油
   -米/胚芽/糠油
   -榧油[カヤ]
 米油はスーパーで販売されているが、胚芽米を食べているので、使わないだけ。
 「カヤ油」は胡麻油を使っている天麩羅屋で、胡麻油よりよいのではないかと聞かされたにすぎない。入手できるのか定かではない。一度も、そんな商品を見かけたことはないし。榧と言えば碁盤の木だが、どんな実か想像もつかない。もしかすると、中国からの輸入品(「香榧油」)かも。

 ついでに、同様な【海外の油】も加えておこう。
   -葡萄種油[Grape seed]: 欧州
   -南瓜種油[Pumpukin seed]: ウイーン辺り
   -アボガド油: 中米
   -アルガン[Argan]: モロッコ
 グレープシードオイルは確か3瓶/缶、パンプキンオイルは1瓶使ったことがある。他は売っているのを見かけたことがあるから記載しただけ。もしかしたら、香りが強いものかもしれない。
 異国文化に触れたいのなら、お試しになるとよいのでは。

 ここまでの油は、差はあるとはいえ、大きなものではない。まあ、高温長時間の揚げ油、それほどでもない炒め油、生も使うサラダ油の3種類を決める程度だろう。揚げ物が多いお宅なら、揚げ物によって油を変えることになりそうだし、サラダ好きなら、野菜によって変えることもありそうだ。と言うより、それぞれの家庭の定番があるのかも。

 拙宅では、ここまでの油は「汎用」と考えている。食を楽しみたいなら、慎重に選択すべきは、ココではなく、以下の独特な風味を持つ油だ。
 わかっているようで、結構難しいのが、【胡麻油】
 よく知られているように、3種類ある。黒胡麻は香りが強すぎるし、太白は風味が薄い感じがする。両者とも、調理のスキルが無いと使いづらい。そこで、香ばしい焙煎タイプを選ぶことになる。ところが、製品によって、相当な差があるので注意した方がよい。古典的な製法だと良い香りがするような気もするが、よくわからない。
   -黒胡麻油
   -[焙煎]胡麻油
   -太白胡麻油

 そう言えば、最近は、【荏胡麻(じゅうねん)/紫蘇油】もスーパーの棚に並んでいる。
 エゴマ和えは食べるが、絞った油は購入したことがない。食べる頻度が低すぎ、保管しているうちに油が劣化しかねないからだ。
  → 「荏胡麻の話」 (2008年2月26日)

 他に、香りを楽しむ油としては、【ナッツ系オイル】がある。
 常時使っている訳ではないが、美味しいものである。
   -落花生油: 中華風刺身には必須である。
   -胡桃油: フレンチらしさを出すには不可欠である。
   -ヘーゼルナッツ: なんとなく東欧的。
   -マカダミアナッツ: ナッツ売り場の人によれば、油でリラックスできるとか。
   -アーモンドオイル: 買ったことはないが、菓子用以外でも使うようだ。

 最後に、忘れてならないのが、地中海を中心とする【オリーブオイル[Olive]】
 実に美味しい油なので、汎用としても使っているが、採りたての新鮮な香りや、付香(茸、ハーブ等の漬け込み)で愉しむのが最高。拙宅では適宜購入するが、この“適宜”が結構難しい。昔は、時期になると、イタリアンレストランが詰めた採り立ての超小瓶が登場し、これを早速購入したものだが、今や、超小瓶など見かけない。専門売り場には、様々な商品がこれでもかという位に並んでいる。しかもピンキリ。どのような味かは記載されていないから、選択はかなり難しい。当たるも八卦。
 もともと、青臭い新鮮なものから、熟した感じでおだやかな味まで色々ある商品である。舌にピリリというか、ツンとするものもあれば、結構辛さを感じさせるものさえある。特に、嬉しいのは新しい油の、果物同様に香りが立つもの。そんな油は、バケットにつけて食べると止められなくなる。トーストにつければ“Bruschetta”だ。
 パスタ等に使うのは、熟したおだやかなものが合うと思う。ドライトマトのオリーブオイル漬けもこちら。まあ、好みだが。

 それなら、様々なオリーブオイルを並べる店が増えて、楽しくなったと思われがちだが、逆かも。商品の産地とその土地の一般的な特徴だけは詳しいが、肝心の、味については何の情報も無いからである。
 果実なのだから、南と北なら、甘いのはどちらかなど、教えてもらわなくても自明。知りたいのは、購入する瓶のオイルがピリリとするかどうかといったこと。ところが、質問しても、何も答えられなかったりする。要するに、ただ並べているだけ。それぞれの商品の特徴など調べずに売っているのだ。だいたい、緑色(葉緑素)の油は光で変質するに決まっていると思うが、綺麗な透明なガラス瓶に入れて飾りもの商品に仕立てる店まである。期待する方が間違っているのだ。
 おそらく、安物を高く売る美味しい商売なのだろう。まあ、そんなお店を囃す人が多いのだから、いかんともし難い。

 ながながと書いてしまったが、油は、頭で考えるのではなく、試して官能で判断するしかなさそうだ。

 さて肝心の料理だが、折角だから、オリーブオイルで試すのは如何。
 となれば、“アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ[Aglio Olio e Peperoncino]”。
  → 「パスタは家庭料理だ」 (2005年2月15日)

 あるいは、“もやしの落花生油炒”めはどうか。
   ・もやしを洗い、よく水をきっておく。
   ・鶏出汁を暖めておく。
   ・フライパンに落花生油を薄く引き、刻んだ大蒜を炒める。
   ・もやしをいれ炒め、しんなりしたら、鶏出汁を入れる。
   ・塩/胡椒/砂糖/醤油で味をつける。
   ・溶き片栗粉液をかけ、刻んだワケギを加え混ぜる。

 ・・・和食は、できる限り油を感じさせない配慮がなされている感じがする。油本来の美味しさを知るならイタリアンと中華がお勧め。

 --- 参照 ---
(1) 日本植物油協会 http://www.oil.or.jp/index.html


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