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2002.7.2
 
 


燃料電池車発売開始発表の意義…

 トヨタが、当初計画を前倒し、「燃料電池ハイブリッド乗用車を2002年末から限定販売開始」と発表した。(http://www.toyota.co.jp/News/2002/Jul/nt02_7002.html)

 といっても、向こう1年間で20台程度である。仕様も特別なものはない。しかも、「本格的な市場導入時期は早くとも 2010年以降になるものと予測」とのコメント付きだ。
 バスのような公共性の高いものではなく、乗用車(クルーガーV )から始めた点が注目を浴びるだろうが、驚く程の発表内容でない。この動き自体が自動車市場に与える直接的インパクトは大きいとは言い難い。

 しかし、燃料電池車市場を自ら切り拓いていく姿勢を示した点で、画期的なものといえる。日本企業が避けつづけてきた「挑戦」である。

 この発表によれば、「限定販売」は「将来の燃料電池車普及に向けたテストマーケティング 」との位置付けだ。普通の新商品なら当然の動きだが、燃料電池の場合、簡単ではない。
 規格はゼロから作成することになるし、燃料供給を始めとするインフラ準備も大仕事だ。さらに、社会の受容性醸成も行う必要がある。1社だけですぐに販売可能な新商品ではない。
 通例なら、まずは業界の足並みを揃え、関連業界や政府を巻き込み、市場における実証試験を行い、徐々にインフラ整備を進める。
 
 こうした体制は、調整に時間がかかる上、本音では消極的な企業も乗り遅れまいと参加するから、実効が薄い。実証試験など止めた方がよいと語る人も多いのだが、日本は、官民あげた全員参加型の取り組みを常に最優先させてきた。この枠組みを守らないと、ネガティブ・インパクトがあるため、この習慣を守り続けてきた。いわゆる護送船団行政だが、企業側が望んでいた面が強い。

 今回の発表は、日本企業のリーダーが、こうした体制で進めるつもりが無い、と宣言したと同義である。全員で粛々と進める従来型から、新産業創出に賭ける先進組織と一緒に大胆に進む挑戦型への転換が始まる。
 この動きに触発されて、インフラつくりでも挑戦者が登場すれば、巨大な新産業構造を短時間で構築できる可能性さえある。

 新産業のつくり方が変わったのである。イノベーションの時代の幕開けといえよう。


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