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2003.1.5
 
 


イラク問題とは何か…

 2002年1月4日のブルームバーム・エネルギーニュースによれば、世界第5位の輸出国、ベネズエラでストライキが続いているため、原油は2年ぶりの高値レベルに到達したという。
(http://quote.bloomberg.com/fgcgi.cgi?ptitle=Energy%20News&s1=blk&tp=ad_topright_energy&refer=topsum&T=markets_box.ht&s2
=ad_right1_all&bt=ad_position1_energy&box=ad_box_all2&tag=energy&middle=ad_frame2_energy&s=APhZssBXTQ3J1ZGUg)

 しかし、ベネズエラで騒乱が発生した訳ではないから、早晩常態に復帰すると見る専門家が多いようだ。
 CERA(「石油の世紀」の著者Daniel Yerginが代表)の2003年見通しでも、イラクとベネズエラ問題が平穏に解決すれば、春には20ドル台前半で落ち着くとしている。(http://www.cera.com/news/highlights/)

 極めて不安定な状況にもかかわらず、高値は続くまいという見通しが多いようだ。ということは、原油取引が、政治抗争の世界から離れることを意味するのではあるまいか。

 もともと、利益が保証されるのなら、生産量コントロールによる価格維持より、投下資本を早く現金化できる生産量極大化の方が資本効率が高い。しかも、世界はデフレ化しており、現金化を遅らせる政策は損失に繋がりかねない。コスト競争力があるなら、政治抗争と見なされがちな価格維持より、自由競争の方がメリットが大きい筈だ。

 ロシアは急激に輸出大国化しており、中国は輸入国化が進んでいる。こうなると、両大国とも、政治取引より、自国の利潤拡大が図れる取引形態を望むだろう。
 国家統制がなくなったロシアでは、エネルギー企業は生産増大に走る。しかも、自国通貨ルーブルで見れば、ドルでの石油価格下落の影響はほとんどないから、安心して、現行設備での生産量極大化を進める筈だ。
 輸入国に転じた中国も、慣例化したアジアのプレミアム価格是正に動かざるを得まい。海外での油田開発競争にも参入しているから、生産量極大化を目指すのは間違いない。

 こうした状況を考えれば、もしもイラクの石油が統制経済から外れれば、OPECの生産調整機能は一挙に破綻する可能性が高い。[イラクへの制裁があったにもかかわらず、1992-2001年の長期に渡って、OPECは生産シェア40%(40.1-42.2%)を維持してきた。](http://www.opec.org/Publications/AB/AB.asp)

 従って、イラク問題とは「原油を武器にした政治的覇権を認めない」動き、と解釈することもできよう。


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