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2003.3.23
 
 


隠れた水素エネルギー反対派…

 トヨタ自動車製「トヨタFCHV」、本田技研製「FCX」のリースが始まり、2003年後半には、ダイムラー・クライスラー日本が「F-Cell」の有償提供を開始する。 (http://www.toyota.co.jp/News/2002/Nov/nt02_1104.html http://www.honda.co.jp/news/2002/4021122-fcx.html http://www.daimlerchrysler.co.jp/index_j.html?/news/2003/030311_j.html)
 燃料電池車で日本が先頭を走っているから、政権幹部は大喜びだ。

 無責任な人達である。政府のお蔭で中途半端な車が走り始めているのに、まるで自分達が積極支援しているように振舞っている。メーカーは表立って何の批判もできないようだ。

 どの車も、最高充填圧力350気圧の高圧水素タンクを搭載している。この程度では、航続距離は、よくてガソリン車の6割だろう。頻繁な充填が必要で、実用性には疑問がある。
 にもかかわらず、全社横並び仕様である。・・・製品仕様に不自然さを感じたら、その原因は、大抵は政府だ。

 この場合にも当てはまる。規制値が350気圧なのである。
 車載タンクは、鋼製では重すぎるから、繊維強化プラスチックとの複合材料を使う。ところが、こうした材質は、法律上、一般複合容器として規制を受ける。一般複合容器の最高圧力は350気圧なのだ。
 この結果、全社横並びのタンク仕様になる。
 この法律とは「高圧ガス保安法」だ。もともと、高圧タンクの自動車搭載など考慮していないから、 燃料電池車受け入れのためには、この法律の改定が不可欠だったが、ようやく改定できたのは2001年に入ってからだ。もし遅れていれば、2002年に燃料電池車は走れなかったのである。・・・こうした状態を見る限り、政府が語る燃料電池車支援とは、一般受けを狙うリップサービスとしか思えない。

 そもそも、目的が異なる「高圧ガス保安法」が、燃料電池車に適合する訳がない。(補足:具体的な保安基準は政令/省令/告示で決まる。)
 本気に水素エネルギー産業を立ち上げるつもりなら、まずは、燃料電池車向けの新法をつくるべきだ。ところが、政府には、その気はない。本音は、水素エネルギーを普及させたくないからだ。新産業が勃興してしまうと、旧産業の対策が大変になるからである。

 研究開発方針を見ると、その体質がよくわかる。
 水素貯蔵合金の吸収や、液体水素利用は、基礎研究レベルの課題である。前者は重すぎるから、実用化には相当ハイレベルの材料が開発できない限り商用化は無理である。一方、後者は沸騰に対処するだけでも大事である。新しいアイデアでもない限り、使おうと考えるメーカーはいないだろう。
 従って、燃料電池車を早く商業化せたいなら、高圧タンクと高効率ガス圧縮機器の開発が不可欠なのはわかりきった話しだ。ところが、水素貯蔵合金には注力するが、肝心の現実的な分野には注力してこなかった。
 もちろん、海外で認可されているタンクやバルブも、日本では使わせない。海外の高圧タンクを使うためには、規制を変える必要があり、そのためにはとてつもない労力を要求される。そんな努力をする企業はいない。
 政府は、支援どころか、足を引っ張っているといえよう。

 要するに、水素エネルギー登場を遅らせたい人が多いのだ。


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