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2003.6.2
 
 


2つの北欧先生論…

 アイスランドの脱炭素政策の話しをしたら、「北欧諸国はまさに先生。日本は、原発廃棄を推進し、水素化へと進むべきだ。」との発言が返ってきたので驚いた。しかも、発言者は知的エリートである。

 当方は、勃興する新産業での競争力確保を狙う政策例として取り上げただけで、原発廃棄論とはなんの関係もない。ところが、勝手に原発廃棄論と結びつけ、論点を環境問題にすり変えようとする。
 素人との論議なら、わからないでもないが、どこか、おかしい。
 エネルギー分野で議論を始めると、必ずこのようなことがおきるようだ。

 エネルギー分野は、昔から、陰謀と抗争の世界である。綺麗事では済まない。内輪の議論でも、同じことが言えそうだ。
 東電の原発検査記録改竄問題にしても、不可思議な動き、と指摘する人もいる。何があっても、おかしくない分野なのである。

 イラク戦争の報道解説を読めば、エネルギーの世界では、どのような動きが「常識」なのかがすぐ分かる。イラクに対する経済制裁を進めている一方で、仏、ロ、中の3国はフセインとの採掘権の取引交渉に明け暮れていたのである。呆れたことに、戦争間近になっても、まだ利権漁りをしていたようだ。
 米国の姿勢ももたいして変わらない。昔は、タリバンを支援していた。どう見ても、パイプライン敷設外交である。

 そもそも、エネルギーを巡って必ず血みどろの抗争が発生する、というのが歴史の教訓と言える。
 石油を断たれて無謀な戦争に引き込まれた国もあった。欧州にしても、歴史をひもとけば、共同体の発祥母体は石炭を巡る紛争解決組織だ。中国にしろ、インドにしろ、必死に軍事力強化を図る最大の理由は、エネルギーの確保と思われる。

 エネルギーは安全保障の肝なのだ。

 アイスランドの方針も、先ずは、その観点から見るべきだ。小国なら、エネルギー自給を目指すのが自然だ。脱石油はその点でも意味がある。
 しかし、国家の規模が大きくなれば同じような対応はできない。実際、北欧でも、フィンランドは、2002年に原子力発電所建設を決定した。(http://virtual.finland.fi/news/showarticle.asp?intNWSAID=7319&intNWSCategoryID=3)
 そもそも、フィンランドは国中に核シェルターを建設してきた国だ。戦争の火種であるエネルギー争奪戦を避け、独立を守るために何をすべきか冷徹に考えた結果、原発推進を選択したといえよう。

 エネルギー問題では、あくまでも最優先は、安全保障問題である。技術問題や経済性は、その前提を満たした上での話しである。その観点からいえば、確かに北欧は先生である。


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